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名前つけちゃったよ……

 さて、宿屋のオッサンとはひと悶着あった。


 どうやら奴隷にベッドは貸せないらしい。更に堕天者ってのが分かったらしくて凄く嫌そうに「本来なら泊めたくもないんだがな」と渋っていたけど、倍額払うってことで手を打ってもらえた。まあ、無理強いしてんのはこっちだし、追い出されて宿無しとか嫌だし、しょうがない。


 ついでに後でキッチン借りたい旨も伝えておいた。……大したもん作らないんだけどね。


 今は宿の部屋に少年エルフ君と私が2人きりだ。距離は20mも部屋広くないからそこまで離れてないけど、部屋の端と端で向かい合ってる状態。


 だって私が部屋の端に行かないと少年エルフのやつ、部屋にすら入ろうとしてこなかったからね。おいでおいでのジェスチャーし過ぎで腕が腱鞘炎になるんじゃないかと思ったくらいだ。


 反応薄いけど奴はかなりの強情とみた。

 そして、他人に呪いを感染させないよう、細心の注意を払っているようにも受け取れる。


 ……うん。


 少年エルフがのろのろと部屋の扉を締めるのを見守りながら考える。


 何から手をつけよう。あたり1面に散らかった部屋を掃除する気分なんですけど。


 いや、部屋は綺麗だよ。あー、やっぱり綺麗ではないけど片付いてるってとこかな。こざっぱりとしたベッドと、小さな机と椅子のある1人用の部屋だ。


 ま、とりあえず自己紹介かな。


 私は自分を指さして、


「カナメ」


 と言った。


 少年エルフは無表情なまま首を少しだけ傾げる。

 もっかい言うかな。


「カナメ」


 よし、頷いた。

 で、少年エルフを指さす。


「名前は?」


 きっと大概の人類はこれで名乗ってくれるだろう。事実東南アジアの現地民とはこんな感じて自己紹介しあっていた。


 でも少年エルフは首を横に降った。


 えー。名乗ってよ。


 ん?待てよ?

 この子、他人に触って呪いを移さないよう注意払ってる。そんでもって、ここまで1回も発言しなかった所を見るに、もしかして声聴いただけで呪いがかかるのか?


 私はジェスチャーで、君が、喋ると、私、「ダーク?」と聴いた。


 少年エルフはこくこく頷いた。


 ダークで、意味通じるのかよ!(笑)


 とか思ったが、とりあえず話を進めよう。


 私は呪い無効だよ、てジェスチャーをする。


 結果、通じなかった。

 険しい顔で首を横に振られる。


 きっと危ない橋渡ろうとする馬鹿に見られたんだろうな、ちょっとイラッとした。けど、少年エルフは呪いをうつしたくない気持ちが大きいから、きっと根が優しいんだよね、うんうん、と思って何とか苛付きを思い過ごす。


 うーん、当面は一緒に過ごすことになるし、名前無いと呼ぶ時不便だ。


 あ!先に呪い無効が効くかどうか試してみたらいいんじゃね?そしたら名前分かるし。


 てわけで、近づく。


 逃げられる。


 近づく。


 逃げられる。


 近づ……


 繰り返すこと1時間。


 くそ!すばしっこいやつめ!!

 全然捕まえられない!


 ビックリするぐらい逃げ足が早いというか……こいつホントに回避力1なんだよな?


 少年エルフのステータスをもう1度見ると、スキル作動中と点滅してる。


 クリック。


 《ユニークスキル『拒絶LVmax』:取得者が指定したすべての対象を拒絶する。拒絶された対象はステータスの差異に依らず、取得者に一定距離以上近づくと、あらゆる速さが緩やかになる。拒絶の心が強いほど対象の速度は減速する》


 なんてこった。スキルかよ。

 ということは、私拒絶指定されてんのか。


 何か、文字で読むと思ったより傷つくぞ。


 深いため息が出た。


 もういいや、別に。

 名前とか本人がちゃんと自分の名前知ってりゃ後でどうにでもなるし、ステータスに表示されるのは私が呼ぶ用のあだ名みたいなもんだろ。実際私のステータス画面も漢字じゃないしさ。


 何か拘るのもバカバカしい気がしてきた。そして逃げ回るコイツに若干イラついてるのも相まって投げやりになる。


「じゃ、もうあんたの名前、ダークな」


 それを聞いた少年エルフは特に嫌な顔も見せず、コクリと頷いた。


 《隷属者の名前が決定されました。以降、変更は出来ません》


 …………。



 …………え。

 ちょま、え?


 ええぇぇええ??

 変更出来ないの?!嘘ぉ?!


 《変更を希望する場合、再度隷属化し直す必要があります》


 マジかよ。


「ごめん、本当にごめん。適当で、しかも悪口な名前つけちゃったよ」


 私の言葉を聞いてもダークは大きなオレンジの瞳をぱちくりさせるだけだった。



 さて。切り替えよう。


 申し訳ないことしちゃったけど、もはや後戻りは出来ないらしい。何だかんだ30分くらいステータス調べ回ってみたけどどうしようもなかった。なら、言葉が通じた時に謝って許して貰うしかない。うん、この子のためにもう1億pr貯めておこう。流石に一生ダークは可哀想だ。


 てなわけで、今、私は宿屋のキッチンでお鍋を借りて砂糖粥を作っている。

 はっきり言って砂糖粥は大嫌いだ。だってドロっとした米に砂糖とか、マジ不味い。日本人なら米には塩をかけるはずだ。でも塩は売ってなかったのだよ。


 そんな大嫌いな物を作ってるわけだけど、何故かって言われると、ダークのためだ。


 飢餓状態でいきなり固形物は身体に毒だとじいちゃんに聞かされたから。


 じいちゃんは戦後の時代に生まれたので、飢えたホームレスを見て家の餅を大量にあげたらしい。後日、その人の死体を見て知ったらしいのだが、飢餓状態で1度に多くの固形物を食べた要因によるショック死らしい。


 この話はじいちゃんのショック話だけど、私にとってもトラウマレベルのショックな話だった。


 てわけで、ダークをショック死させないためにドロドロに溶けた米粥をコップ一杯分ついでダークに渡す。手ずから受け取ろうとはしないから、テーブルに置いて、ジェスチャーする。


 ダークはおずおずとコップを持ち上げると口に含んで……そのまま吐いた。


 うん、不味いよね。


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