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対人戦とか勘弁して欲しい

 次の日、宿で寝てたら家の外で怒声が響いてきた。


 なんだなんだ、まだ8時だぞ……て、8時かよ!

 確かチェックアウト10時だったはず。


 くそー、モーニングコール言ってたのにな、あのオヤジ忘れてんだろうな。

 早いとこ次の街に行かなきゃ……。


 昨日はあの後酒場に行って次の街までの行き方やモンスターの情報収集をしてきた。


 いやー、こっちの酒ってアルコール度数濃いから、すぐ酔えていいねぇ。私なかなか酔えないから周りの方が先に潰れちゃって楽しんだことがない。大概は潰れた奴らの介抱だからだ。吐くまで飲んでみたいなー。

 吐きたくはないけどさ。やっぱり酒は味より、気持ち良く酔えるかどうかだな。そんでもって、絡まれる割にここのオッサンらとは気が合うらしい。酒場では大いに盛り上がった。


 で、話を戻すと、次の街までは歩いて10時間くらいかかるらしいのだ。だから今すぐ出ても18時到着だからギリギリだな。そして大森林ってのは更に遠い。その街を抜けた先にある村のもう一つ向こうの村から、大森林、所謂エルフの守護している地域に入るらしい。しかも大森林て、かなり広いみたいだ。


 剣探すの難易度高くね?と思ったけど、それが手に入らないと話にならんだろうしね。やるしかない……のかな。

 何か先に壮太に会った方がいい気もするけど、アイツが潜ってるダンジョンがどこか分からないしなぁ……近いんだろうけど、行ってから足でまといってのもちょっと、いやかなり嫌だ。


 というわけで、前と同じ思考を繰り返した結果、道を進めるしかないという結論になったわけだ。


 急いで支度して宿屋の一階に降りる。喧騒が一気にでかくなった。


 そういやこれで目覚めたんだった。何が起きてんのかな。宿屋のドアを開けて覗くと目の前には意味不明な光景が広がっていた。


 簡単に言うと、オッサンがたくさん倒れてて、立ってるオッサンは喧嘩してる。まるで最後の一人になるまで倒し尽くすとかいうデスゲームみたいだ。


 なんだこりゃ。

 ま、無関係だしね、早いとここの街出て行こう。


 そう思って北に向かってると、途中で傷の沢山入ったスキンヘッドのオッサンが目に入る。


 フィントだ……。


 て、今にもやられそう。助けるか?


 お、やり返した。

 そうだ、そこいけ!

 よし!そこ!

 おー!勝った!やるじゃんフィント!


 やっぱり知ってる人居ると応援しちゃうよね。無関係だし、大丈夫そうだからこのまま去ろう。


「ようカナメ」


 後ろから声がかけられた。

 ちっ、やっぱりいたか。


「おはようございます、ノズさん」


 内心毒づいたけど、なるべく笑顔を作って挨拶。

 でもノズは苦い顔つきだ。


「なかなかおもしれぇことしてくれんじゃねぇか」

「ん?何のことでしょう?」


 実際なんのことか分からん。

 フィントの観戦してたことかな?


「しらばっくれやがって。まあいい、良いキッカケになったから、なぁ」


 そう行ってる間にも豚さんマークの男を一人ねじり上げた。


 わー、ノズさんつよーい。

 お願いだからその力、私に向けないでね?

 ね、その目、ちょっと怖いよ?


 何かノズの顔に若干悪相というか、威圧感というか(まあそれは常時でてるとも言えるんだけどより一層)そういうのが出ている。


「これって、2つの勢力争いですか?」

「そうだ。当然お前さんも参加だろ」

「え。何で?!」


 思わず素で聞き返す。


「知ってんだぜ?昨日ダフォファミリーの幹部やったんだろ。お前さんの望み通り、大戦争だ」

「…………」


 あのジャイアン、幹部だったのかよ。


 私の望みって、何?ダフォファミリーに恨みがある的な?曲解されてるんですけど?!


「私、旅路を急ぎたいんですけど……」

「あ?なんだって?」

「や、なんでもないっす!何したらいいです?」


 こぇぇえ!

 今のノズ、巨神兵な上に超好戦的な顔してるから、断れないよー。


「とりあえず、手当り次第にダフォファミリーどもを殴り倒そうぜ」

「イエッサー」


 私はノズから離れてダッシュする。豚さんマークのオッサンの方に向かう振りして裏通りに入って行った。


 だって、私巻き込まれる云われないもんね。逃げるが勝ちですわ。今日はもう、一段落するまで隠れてよう。


「ー!!」

「ぐぁあがあ!」


 げ。ここでも戦闘してんのかよ。

 勘弁してくれ。

 道の先で少数の人だかりが見える。


 来た道を戻ろう……て、ん?やられてんのタダンじゃね?


 近づいてみるとやっぱりタダンだった。肩から血を流しながら複数人に壁に押さえつけられている。

 そして豚さんマークの奴が剣をもって振りかぶる。


 え!やば!!

 私はダッシュで駆け寄って棍棒を構えてタダンを庇った。


 ガキッ


 ふぅ、間に合った。

 てか案外このオッサンてブラウンウルフより力無いのな。軽々と受け止められた。


「誰だお前は……て、てめぇは!!」

「あっジャイアン」


 目の前のオッサンは昨日のジャイアンなオッサンだった。思わず声に出る。


「あ?だれだそりゃ!俺はジャスだ!昨日はよくもやってくれたな!オメェら、そいつは暫く動けねぇからいい。コイツを先に叩きのめすぞ」

「おう!」


 いやいやいや、何それ。


「1人相手に多人数とか恥ずかしくないの?しかも、私、女なのに」

「お前の力は昨日体験済みだからな!女だろうと関係ねぇ、手は抜かねぇぜ」

「抜けよ、そのくらい」


 思わず突っ込む。


 えっと?

 これ最悪じゃね?


 タダンは後ろで伸びてる。よく見たら全身ボコボコだわ、こりゃ暫くっていうか回復薬飲まなきゃ復帰は無理かな。白目向いとるし。


 で、敵さんはジャイアン含めて1,2,3,……6人か。


 えー、多人数戦とか、小学生以来やってないんだけど。

 私は小学生の頃は割とヤンチャしていた。身体も周りに比べて発育早かったしね、結構お山の大将してたのだ。


 しかたなく、殴打スキルを全解放して、棍棒を握りしめた。

 おっさん達の方から仕掛けてくる。剣だからかするだけでもやばそうだな。しかも巨体だからか大振り。


 と、いうことは、だ。剣戟の範囲から味方は外れる。


 多人数だとしても後ろさえ取られなければ実際は2人相手にしてる程度だ。タダンと壁を後ろにして目の前の攻撃を受け流し続ける。


 危機感知も手伝ってるからか、何となくでも回避出来る。てか、ブラウンウルフよりスピード自体が遅いな。


 アレ?でもこれ、私攻撃出来なくない?

 ジリジリと後退してしまう。

 このままじゃ後ろの壁かタダンにつまづいてジ・エンドだ。


 ジリ貧はしょうにあわないんだよねー。

 私は暫く2人相手に剣戟を受けるけど、パターン読みを開始した。やっぱりコンボというか、このオッサン達にも一定のリズムがある。こういうコンボ技みたいなスキルがあるのかな、寸分違わないリズムがそれぞれあるみたい。


 そんな中、一瞬だけ2人の剣戟が止む時を見つけた。

 そうとなれば、攻撃は最大の防御。肉を切らせて骨を断ちましょう。


 私は『不屈LV2』を発動させて1人目のオッサンに特攻する。棍棒で思いっきり腹へフルスイングした。


 ドゴンッ


「げふぅ!」


 おお、効いてる。

 良かったー。

 で、すかさず次のオッサンにアタック。


 ドカッドカン!


 幸いなことに1発でも殴ったオッサンは起き上がってこないみたいだ。


 ドゴォッ


 これで4人倒したから、あとは……。

 と、ここで物凄く嫌な予感が走った。

 思いっきり飛び退いて間合いをとる。


 ズバッ!!


 げっ。

 マントが切れた。


 さっきまで私が立っていたあたりに剣戟が走っている。


「っぶね!」


 セーフ!!マジヤバかった!!

 剣の所有者、ジャイアン……もといジャスが顔を真っ赤にして睨んでいる。


「死ぬ所だったでしょうが!!」

「死ね!」


 え。


「犯罪者になるよ?!」

「うるせぇ!んなこたどうでもいいんだよ」

「マジかよ」


 あ、犯罪都市だから日常茶飯事なのか?

 やめてよー。

 私一応勇者で、世界救わなきゃなんだよ?てか死にたくねーし!


 にしても、剣と棍棒て相性悪くない?棍棒て何だかんだリーチ短いし。向こうは触れただけでズバッといくのに……て、ん?触れる?

 おお!その手があった!


「この棍棒さ、触ると呪いにかかるんだよね。気をつけてね!」

「なに?!」


 私はそう宣言しながら見せびらかして、ジャスに向かって思っきし棍棒を投げた。

 相手は当然ながら、軽々避けた。


 でもこの裏通りは狭い。直ぐに壁があるからね。棍棒はクルクルと回転しながら壁に当たると、カーンと乾いた音を立てて跳ね返った。

 ジャスが棍棒から避けるために後ろを一瞬チラッと見た。


 その隙を、逃さないよ。


 ドズンッ

「ガッハッ!」


 私は一気に懐に入って渾身のどストレートを腹に御見舞した。で、残るオッサン1人はジャスが倒れたのを見ると、仲間を呼ぶためか、戦線離脱していった。


 はーはー。


 一段落した。呼吸を整えようとするけど、どんどん息苦しくなる。心臓が一気にバクバクしだす。さっきまで止まってたんじゃないかってくらい鼓動が耳まで聞こえてきて、頭が真っ白になった。


 え、え、今何やった?


 ガチの殺し合いじゃね?嘘やろ……こっわ。一歩間違えたら、いや半歩間違えても死んでたわ!

 はー、マジ危なかった。

 勘弁して欲しい。


「うぅ……カナメ……か?」


 ここでタダンがやっと意識を取り戻したらしい。


「あ、はい、そうっす。ちょっと通りがかりで見かけたんで……」

「あ、ありがとよ。ドジ踏んじまった」


 そう言いつつタダンはズリズリと身体を起こす。


「ごめんなさい、自分今薬草持ってないんすよね……あ」


 私は周りで呻くオッサン達を見下ろしながら、ふと回復薬のことを思い出す。


 この転がってるオッサンらが飲んでゾンビ化する可能性があるんだった。せっかく倒したのに元の木阿弥とかマジないから。よく見りゃ飲もうとしてる奴いるし!


 まだ殴打LV2と殴打LV3の有効時間内だ。

 ならばやることは一つ。

 棍棒を握りしめてー。


 バキッドコッガッゴッ

「うがぁぁあ」


 ドカッバキッゴッガッ

「あぁああ!!」

「な、何を……うぐぁぁ!」


 オッサンどもの叫び声がうるさい。


「な、何やってんでい」


 タダンも困惑気味だけど、とりあえずやることを先に済ませとこう。


 ドスッバキバキッゴッ


 ちょっと呪いかけて腕折るだけだから。それ以外何もしないし!


「大丈夫大丈夫」

「い、いや、何が大丈夫なんだ」


 タダンの質問をスルーしながら、1人が飲もうとしてた回復薬を拾い上げる。代わりに500prを置いてあげる。


 うん、買い取っただけだよー?奪ったわけじゃないからねー?


「はい、タダンさんこれ飲んで」

「お……おう。お前鬼畜かよ」

「は?何でですか。1人相手に多数でボコろうとする方が鬼畜じゃないすか?」


 タダンが回復薬を飲んで少し傷が癒える。


「いや、ま、……そうか」


 何だその微妙な顔は。

 まあいい。タダンも元気になった。

 これでよし。

 さて逃げよう。

 と、ポーンと効果音。


 《熟練度が一定数を上回りました。スキル『殴打LV4』が解放されました》


 お。


 《熟練度が一定数を上回りました。スキル『不屈LV3』が解放されました》


 おお。

 スキルレベルアップだ!この2強スキルはアップするに越したことはないよね!


 《条件を満たしました。称号『狂戦士』を取得できます》


 ん?何だって?

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