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ヒヤリハットには常に死亡フラグへの直通ルートがある

 真っ暗な世界を見渡してみる。

 見渡すとは言っても、本当に自分の目があるのか怪しくなるほどに身体の感覚が曖昧だ。


 なんか、ユシララの時と似たような……でも、あの時はまだ壁を触ってる感覚があったけど、今はその感触すらない。


 こうなってしまった原因は、なんとなくわかる。

 呪い無効スキルをオフにしたからだろうねぇ。てか、他に心当たりがない。


 と、考えているとステータス画面が認識出来た。パッと画面が付くように、いつものステータス画面のみが目の前に現れる。


 することもないし、ひとまず呪い無効スキルをオンにするか。

 これで目が覚めたら良いんだけど……。


「全く!!君はアホなのか?バカなのか?それとも両方か?」

「おわ?!」


 いきなり罵声を投げかけられた。けっこうくっきりと頭の中で直接聞いてるような感覚。

 それに反応して私もびっくりした声が出た。


 声が出て初めて自分も話せることに気づく。変な感覚。


「しこたま精神負荷かけて体内魔力枯渇させといてさ。そんな状況で自分を守る盾を自らかなぐり捨てるなんて、頭が悪すぎるだろう!しかも穢れのすぐ近くで!正気の沙汰じゃないよ、全く!!」


 どこか聞き覚えのあるこの声の子、めっちゃ怒ってる。いや、貶してきてるのか。


「何の話?」

「君の話だよ!」


 やっぱ私のことか。

 でも、正直、何のことなのかがよく分からない。

 恐らく責めているのは、私が呪い無効スキルをオフにしたことなんだろうが。


「精神負荷とか体内魔力枯渇ってよく分かんないんだけど」

「あれだけスキルを常時発動させといてよく言うよ。知らないからあんなバカなことができるんだと思うけどね。スキルの重ねがけには限界があるのに」


 え。


「ずっとスキル使用してたらダメだったの?」

「周りの人が常に使ってたと思う?」

「え……えーと、サンは?常に心読んでたよ?オフにできないって言ってたし」

「……君の記憶を見るに、その時は目を閉じて回避してたよね?人混みに行くと精神負荷が激しくて倒れたのを覚えてるじゃないか」

「あー、確かに」


 よく考えるとダークでも長時間魔法使うのキツそうだったな。


「あいつは少し違うけどな……次元が」


 次元が違うのか。

 まあ、魔法同時発動させてたし、確かにちょっと次元が違うかもしれない。


 てか、何気にこの声の主は私の思考とも会話してくるのね。

 それでも、少しでも意識を保つために声で発話する方がいいかな、なんとなく。黙ってると真っ暗なこの世界に溶けてしまいそうで少し怖い。


「でもさ、私は今までスキル使ってない時間の方がないくらいだったけど、特に何ともなかったよ?」

「それが呪い無効スキルの特性だよ。呪いを無効化する力は、副産物として魂の汚染、精神汚染、あらゆる事象の穢れから保有者を保護するからね」

「へー。よう分からんけど、とにかく、常時スキル発動状態は良くないってこと?」

「君の場合は大丈夫だったんだよ、呪い無効スキルさえ発動させとけばね。それを君は……しかもスタミナ使い過ぎで体内魔力が枯渇して……盾も鎧も捨てて丸裸で炎の中に飛び込むみたいなものだ。本当に愚かだよ」


 なるほど、だから初っ端から罵倒されたってこと。


「……そこまで罵らなくてもいーじゃん」

「このくらい言わせてもらわなきゃ気が収まらないね。真面目に、俺がいなきゃ穢れを魂が直で吸い取ってたからね?異世界人なんだから、そもそもこの世界には耐性ないって言うのに」

「……耐性なくて、穢れを吸い取ったらどうなるのさ?」

「即死だよ」

「わー、あっぶな!」

「本当に危ないよ、君は聖剣すらも持ってないし。はぁー、今回はなんとかなったけどさ、禁忌の穢れだったら手遅れだったからね?こんな馬鹿なこと、二度としないでくれよ」


 ため息をこれみよがしに吐く声の調子は、呆れを隠そうともしていない。

 姿が見えたら両手を広げてやれやれのポーズでもしてそうだ。


「……ほんとさぁ、色々と、君には言いたいことはたくさんある。でも塩の湖の水を飲みこんだことだけは褒めてあげるよ。時間はかかったけど、それを伝手にこうやって君の魂まで辿り着けたからね。ギリギリ間に合ってよかったよ、ほんと」

「あ、やっぱ君、マルローンか」


 なんか、ユシララの時より感情豊かな声音になってて違うかなと内心迷ってた。スッキリする。


「俺以外、他に誰がいるんだよ。ちゃんと塩の湖の中まで入ってくれてたら、その場でたどり着けたんだけどな。全然見当違いなことしだすから、困ったよ。それに、やむを得ないとはいえ弟には初血なのに大量の血を飲ませただろ!?あれ、規定量の倍飲んでたからな?弟が中毒になったらどうしてくれるんだよ」


 こやつ、文句言わなきゃ生きられない人種か?ダークみたい……いや、ズケズケ言う分それ以上じゃねーか。


 チェスナットの吸血に関しては私のが被害者じゃね?あれをどうやって止めさせろというのか。


「……でも、まぁ、結果的には良かったんだろうな。君の魂へすぐたどり着けなかったけど、貧血で君が寝込んだ分のロスがあったし、ギリギリとはいえ今回の君の愚かな行為による致命的な損失を防ぐことができたからね」

「お、おう」

「それに、早かったら早かったで、身体に戻されて魔族の村に残ったはず。カケラが1つ2つじゃ、今みたいに良いように使われることに変わりないからな。そうならなくて良かった」

「う、うん?」


 確かに、魔族の村に滞在中で私の中にマルローンのカケラが辿り着いてたら、マルローンの身体に返してただろうね。自分の中に他人がいるとか、なんか変だし。


「良いように使われてるってどう言うこと?」

「……いずれ分かるよ。どうせ彼らは俺の魂のカケラを集めるつもりだろうからね」

「彼ら?」

「言及してしまったら嗅ぎつけてくるから言えない。君自身には危険はないから気にしないでくれ」


 これ、掘り下げた方がいい気もするけど。

 言えないなら突っ込みようがないな。


 それに、今はそれより気になることもある。


「ねー、あのさ、私、ちゃんと元に戻れる?」

「ああ。目覚めるよ。意識が戻っても汚染されかけたせいで少しは眩暈や頭痛がするけど、死ぬよりはマシだろ」

「うん、まあ、死ぬよりはマシだね」


 ちゃんと起きれるなら良かった。

 途中のマルローンの口振りからある程度予想してたけど、ちゃんとそう言ってもらえると安堵する。


「なんかよく分からないけど、助けてくれたんだよね?ありがとうね。今度から呪い無効スキルは消さないようにする」

「ああ。そうしてくれ……清浄化の力が尽きてしまった。俺は君が起きると君の魂の意識に押されて眠るしかない。もし禁忌の呪い以外の穢れを払うなら、新しいカケラを見つけるんだよ。魂のカケラはこの近くだとドワーフの聖窟ハレの湖にある。弟は平気だろうけど、強い魔物の気配もあるから、君はくれぐれも気をつけて」

「お、おう。分かった。なんか、その、ありがとう」


 若干早口で色々言われて情報処理に困る。

 ドワーフの国の聖窟ハレか。ドワーフの国には行く予定だったし、寄り道してみよう。


「君にはまず、弟を助けて成人させてくれた礼を言うつもりだったのに。辿り着いた途端に致命的なことして死にかけてるんだから、本当に焦るよ。これで貸し借りゼロだからね?」

「あ、うん。ん?でも、サンを助けてくれたのもあるから、まだ私のが借りがあるよ」

「あれは俺の義務」

「へー」


 そんな義務があるのか。よく分からない。


「元々は違うんだけどね。俺は耐えられなかったから」


 少し声のトーンが暗くなる。


「でも、代わりに弟にやってもらったらさ、俺がやるより断然上手くやってんだよ。本当に俺の弟、凄くないか?神の子と同等以上の精神力がなきゃいけないのに、俺以上の成果を毎回安定して叩き出すんだ。それも記憶を持ち越さないから汚染が全然浸透せずに!神の子が霞むレベルの偉業だろう?」


 ただいま、唐突な弟自慢、もといブラコン発言をいただいております。早口だからほとんどついていけておりません。


「でもその分、たくさん苦しんで無理をさせてしまったんだ。だから、俺の代わりにたくさん甘やかしてやって欲しい」

「いや、それは私に頼まんで自分でやれや」

「ふっ、確かに。でも、今は君に頼むことしかできないからね。だから、頼むよ」


 だからと言って、甘やかせと人に頼むのは変だと思うが。


「俺の弟、口は悪いけど良いやつだろ?俺なら目の中に入れても痛くないな」

「うん。ま、私は痛いから。嫌だからね?」


 チェスナットはあんな性格だし、私が甘やかしてると調子に乗るか、気持ち悪がられるかの2択だ。


 てか、年頃の男子をそもそも甘やかすってどうすんのが正解?

 よしよしって頭撫でるだけなら、やってるっちゃやってるけど、基本嫌がるよね?あれで良いのか?


 それに、ダークもいるからなぁ。あの子はチェスナットばかりに構ってるとヤキモチ妬くみたいだし、怒るとめんどくさいんだよなぁ。

 今朝は調子悪そうだったけども。


「……オズは、よく耐えてるよ。君のおかげで、……が少し見え始めた気もする」


 急に霞んで聞こえにくくなる。


 どことなく引っかかる言い回しだな。

 限りなく希望のないことに対して、淡い期待をのせるかのような。急に出てきたけど、オズって誰だ?


「ーー!!………!!」


 マルローンの違和感のある言い回しについて考えてるうちに、意識の奥底から声が聞こえてくる。


 あれ、そう言えば、この感覚のほうが「聞く」ってやつな気がしてくる。


「そ……そろかな。力も底つい……俺はす……休むよ」

「うん」

「く……ぐれも、呪い……スキル……き……ない……ように」

「はいはい。呪い無効スキルは消しません。気をつけまーす」

「……とは、とけ……るとおも……から……すぐ無効化して……れ」

「ーーーーん、ーーーい!」


 徐々に現実の方で聞こえる声の方が強く感じてくる。ダークの声だ。必死な呼びかけの方に意識が持っていかれてしまう。

 それと被って、マルローンの声がどんどん聞こえづらくなっていく。


「……とと、し……うを頼ん……よ」

「え、なんて?」

「ご主人起きてください。お願いします、何でもします。お願いします!貴女のために……お願いです」


 ダークのすがるような泣き声に、意識が完全に現実に戻された。


 華やかな秋の花の匂いと、頬には濡れた皮膚の感触、そしてぐすぐすと言葉の間に放つ嗚咽が耳をくすぐる。


 ふーーー。

 深く長い息が出た。


 マルローンの言った通り、少し、目の奥と頭が痛い。このまますぐ起き上がると眩暈がしそうだ。


「……ごめん。心配かけたね」


 そっと私の顔の近くにある彼の頭に手を乗せて撫でる。


 ハッと身体を持ち上げて私の顔を覗くダークのオレンジの眼は充血していて、目の周りが赤い。


 それでも、私が目覚めていることを確認すると困り笑いのような心底安堵した顔を見せた。目元を綻ばせたことでぽとぽとと大粒の雫が降ってくる。


 ほんと、ダークは天使顔だよなぁ。この瞬間のこの顔を、私は一生忘れたくない。綺麗で、尊くて、必死で、儚い。


「貴女は……いったい何でいつも、勝手に倒れるんですか。ぐす、もうちょっと、こう、何とか出来ないん、ですか」


 ダークが自分の目元を拭いながら悪態をついてくる。


 確かに私、ぶっ倒れすぎだな。


「ごめんて。今回は呪い無効スキルをオフにしたのがダメだったらしい」

「ぐす……何で、そんなことを?ぐす」

「ヴェロニクさんの声がさ、聞こえなくてね」


 ダークの拭い方はちょっと雑だから目が傷つきそうで心配だ。瞼が腫れないように、私の服の袖をそっと押さえやてると、ダークも大人しく拭われるまま静止して目を伏せる。さらにポタポタと涙が垂れてきた。


 この子、まつ毛長いよなー。


「呪い無効のせいで聞こえないみたいだったからさ。でも、スキルに精神負荷から保護する役目?てのがあったらしくてね、それでブッツリと意識が飛んじゃって」


 穢れの話をすると余計な心配をさせてしまうから黙っておこう。


「…………精神負荷って、スキル多用時の?」

「うん、そうそう」

「ぐす、貴女はそれが効かないの?」

「呪い無効スキルさえ発動してたら効かないらしいよ」

「え……完全に遮断されるの?」

「そうらしい」


 ダークが愕然とした表情で目を開く。ただでさえ大きいのに、ポロッと落ちてきそうだ。涙は完全に止まってくれたようだけど、そんなびっくりすることか?


「貴女は…………どこまで規格外なんですか」

「規格外て。なんか言葉のチョイス酷くない?」

「だからあの時あいつの……効かなかったのか……」


 ダークは驚きの表情のまま、独り言のように小声でぶつぶつと呟いた。


「おい……カナメ、目覚めたんなら、早く俺様の呪いを解除しろ……」


 チェスナットの苦しそうな声が傍から聞こえてくる。


 身を起こして声のした方を見ると、私の寝かされていたベッドの下にびろーんと腐り落ちて広がっている黒い塊がある。


 手を伸ばして触れてやると徐々に元の姿に戻っていくチェスナット。

 今更だけどチェスナットの服って、ちゃんとチェスナットの体型に合わせて変化するの面白いよね。今回も裸にならず、自然と服を着た状態で復元されてるし。


「私ってどのくらいの間、意識失ってたの?」

「半日くらいです」


 ダークが返事しながら私の身体にピッタリと抱きついてくる。


「……そっか」


 ツッコミしようかと思ったけど、思い止まる。不安にさせたし、このくらいくっつくのはしょうがないか。


「ふー。ったく、大変だったんだぜ?ただでさえ俺様は貧血気味なのに、お前に触ってても呪いが発動しちまってよぉ。ダークにもフリッジにも俺様の声が聞こえてねーし」


 チェスナットがムッと頬を膨らませながら不機嫌な顔で不服を唱えながら、ガシッと私の手首を片手で掴んでもう片方の手を開いたり閉じたりと調子確認をしている。


「ダークのやろーにスキル共有してもらってなきゃ死んでたじゃねーか」

「そっか、そうだね。ごめんごめん」


 なんだかんだ、ダークがスキル共有してくれてたんだな。ダーク優しいじゃん。

 そう思ってダークを見ると、これも膨れツラになっている。


「……貴女が嫌がると思ったからやっただけ……それに、魔族の能力はまだ利用価値がありそうですし。じゃなきゃ、誰がこんなやつ」


 おいおい、利用価値て。


「俺様はこんなやつじゃねー!チェスナット様と呼べって!」


 利用価値はスルーでいいのか。


「ふん。お前なんか、利用価値がなくなればいつでも見殺しにしてやる」

「なんだと、この……んぐ」

「……はい、ストップ。ダーク、今のはダメだろ」


 どこぞの悪役みたいなセリフを言うでない。


 売り言葉に買い言葉へ発展しそうだったので、早々に私はチェスナットの口を塞いでストップをかける。


「ダーク、友達にはそんなこと言っちゃダメだよ」

「……でも」

「ダーク、あのさ、そういう思ってもないこと言って傷つくのは相手だけじゃないからね。私もそんなこと言うダークに傷つくし、ダーク自身も傷ついてるはずだよ。優しい言葉を使おう」


 割と真剣に、そう思ってるからちゃんと相手の目を見て言う。

 ダークは何か言いたそうに口元を動かすけど、諦めたのか、目を伏せ長い耳を垂らしてしゅんとする。


「……はい。ごめんなさい」


 うん、素直でよろしい。あとはチェスナットにも謝らせておくか……。


「ふん!俺様は強いからな!そんな言葉にゃ傷付かねーから気にすんな!それより名前をちゃんと言え!」


 うん。どう見ても私に対してしか謝ってなかったけど、突っ込むのは野暮なのでここはスルーしよう。

 チェスナットのこの無駄な度量の広さは天然なんだろうな。


「そう言えばさ、チェスは何でさっきヴェロニクさんを復活させる時に、可哀想なことしやがってって言ったの?」


 結構気になってたんだよね、あれ。


 チェスナットは私の質問を聞くと眉間に皺を作って渋い顔をした。翠の瞳が下を向く。


「……魂留(たまどめ)っつーのは、死んだ時のまま魂が無理矢理身体(うつわ)に押し込まれた状態なんだぜ?押し込められてる限り、終わらねー死ぬ瞬間の苦痛がずっと続く」


 おう……ディープな話だ。聞くからに痛そう。


「自然状態からかけ離れた苦痛状態が長引くと、魂がその圧に耐えられなくなって穢れていくだろ?一回穢れちまうと、魂留(たまどめ)が解けても、穢れた魂に魔素が集まって魔物化しちまうんだ」

「へぇ、穢れで魔物化……」

「魔物でも化け物でもねぇんだよ、人間は人間だ」


 ギリッと歯を食いしばりながら、表情を暗くする。


「元になった魂はいくら穢れてようが、存在し続けちまう。魔物化しても、他人の声が聞こえなくなるわけじゃねぇ。自分が何だったのか思い出せねーで、死んだ時の苦しみが消えずに彷徨い続ける……そんなの、耐えられねぇだろ。化け物なんかにゃなりたくねーよ、誰でも」

「なるほどね。チェスはヴェロニクさんのために今回は引き受けてあげたんだね?偉いじゃん」

「…………」


 ちゃっかりベッドの上に乗って片膝立てて座っているチェスナットは、私の声かけに何故か不満そうな顔で立膝に片頬をつけてそっぽを向いた。


 何でだよ。

 まあいいや。思春期のガキ相手に話が通じるとは思ってないし。


 でも、今のチェスナットの応答で、やっとチェスナットの謎行動&謎言動に納得した。


 フリッジ()の所行を赦しているわけじゃないけれど、ヴェロニクさんの状態予測がついていて、同情したってところか。どうせ魔物になるんだったら、せめて理性のある不死者(アンデッド)にしてやる。だから今回は特別、と。


 それにしても、ユシララの時に出てきたあの黒いモヤの穢れも、自然状態にない魂に魔素が集まって出来た魔物ってことになるのか。

 見た目の性質よく似てたし。


 ん?いや、何かおかしくね?

 あの肉塊モンスターの元にされた人間は、半殺し程度であって、死んでたわけじゃないはず。死にかけてたけど、なんとか生きてたサンも然り。


 じゃあ、モヤの発生源である魂は何を元にしてたんだ?サンから滲み出てたけどさ。前世のサンってやつ?それとも、サンではない何か……?


 思考の迷路に入りかけるけど、一旦心に留める程度にしておくか。答えは出なさそうだからね。


「……ご主人」

「ん?」

「早く、この街を出ましょう?あのアンデッドの声が聞こえないってことは、何かしら貴女に害があるから呪い無効スキルが発動することで防げてるってことでしょ?」

「んー、まあ、そういうことなのかな?なんか、そこまでじゃないと思うけど……てか、ここってどこ?」

「領主の屋敷です」


 なるほど、だから豪華なのね。

 このベッドも大人1人、子供2人が乗ってて余裕があるくらい大きいし、ざっと見渡した部屋も広いから、いったいどこのラブホだとツッコミたかったところだ。


 ただ、豪華な家具で手入れはされてそうな割に、若干薄汚れている。

 掃除はされてても砂っぽいというか、カーテンは長年洗ってない感じ。


「ここの街って、ひょっとして水不足なのかな」


 コンコンコン


 そう呟いたと同時に、部屋の扉からノック音が鳴った。


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