冒険者ギルドにて
「ようこそ冒険者ギルドへ。会員証のご提示をお願いします」
ドアを開けると小奇麗なお姉さんがカウンターから声をかけてくれた。
カウンターにはガラスのような区切りがあって、プールとか遊園地の窓口そのものだね。
「えっと、まだ会員証とか持ってなくて。冒険者ギルドって魔物からドロップしたアイテムとか売れると思ってきたのですが、大丈夫ですか?」
「はい、会員の方でしたら基本的なドロップアイテムを買い取ることが可能です。ただし、安定して買い取る保証をする代わりに市場の価格より低いことはご注意下さい」
「なるほど、分かりました。じゃあ会員登録お願いします」
「かしこまりました。それではこちらの用紙に御記入お願いします」
小窓から1枚の紙とペンが差し出された。
えっと、書く項目は、名前と出身地……名前はカタカナのカナメ、出身は王都にしちゃえ。
「王都のどちら出身ですか?」
「えっと、あんまり覚えてなくて……詳しく書かなきゃダメですか?」
「そうですか、それならば仕方がありませんね。まあ、変わったお名前ですからダブらないでしょうし」
あー、ダブり対策なのか。
「じゃ、これでお願いします」
「承りました。それでは会員証に登録するステータスチェックをさせていただきます左側の水晶に手をかざしてください」
指示された方を見ると手のひらサイズの透明な球体が半分机に埋められている。
言われた通り左手をかざしてみた。
「え、勇者?!」
受付のお姉さんがビックリしたような声を上げる。
あ、ステータスって、称号とかも出るのか。
「あ、正確には勇者見習いなんですけど。勇者でも冒険者になれますか?」
「え、ええ。一応在籍は可能ですが……」
「良かった。なら、このことは秘密にしていただけますか?あんまり広めたくないので」
「会員の個人情報は守秘義務がございますので他言致しません」
あ、そうなんだ。
「しかし驚きました。それならば確かに出身地は王都が妥当ですよね。つい1ヵ月ほど前に勇者召喚が成功したと伺いましたが、もうここまで来られたのですね」
「え?いやぁまあね」
何か話しぶりちょっと変だけど、最初の勇者召喚から最後の召喚まで出来たんだねって解釈でいいのかな?
で、その後会員証を渡されて冒険者ギルドの規約とか利用方法を教えられた。
だいたい私の想像してたギルド像と変わんないね。
ざっと言うと回復薬とかドロップアイテムの売買、地域や国といった大小様々な規模の依頼の受付。またその達成報酬の仲介ってところかな。
「続いて冒険者にはEランクからSランクまでのランク付がございます。依頼数の達成率に応じましてランクが上昇します。また、1つ上のランクの方までならパーティを組むことが可能です」
まあ、物の売り買い出来ればそれでいいし、ランクは上げないだろうな。
受け取った会員証の大きなEの文字にはちょっとイラッとたけど。だってなんか、ダメ人間ぽいレッテル貼られた感じするじゃん。
で、早速、持ってるブラウンウルフの爪とビー玉改め闇鉱石を渡した。
「これは……闇鉱石?!こんなにたくさん……」
お姉さんが青い顔しながらビー玉の数を数える。
「あの、これ全部売却でお間違えありませんか?」
「え?はい。お願いします」
と、お姉さんがサラサラと紙に記載していく。
渡された紙にはこう記されていた。
『ブラウンウルフの爪20個:500pr』
『闇鉱石51個:510000pr』
「は?」
思わず声が出た。
このビー玉そんな値段で買い取ってくれるのか!?
「ホントに510000prなんですか?」
私は思わず確認してしまった。
「いえ、実はこちらで買取となりますと、この値段になってしまいます。市場のおよそ3~5割減ですので……」
え、もっと高く売れるの?!マジかよ!
お姉さんは凄く申し訳なさそうに答えてるから、きっと私が少なすぎでしょって抗議したと思ってるんだろうな。
「あ、別に良いです。確認しただけなので、それで買取りお願いします」
「え、いいのですか?」
「今すぐ現金が欲しかったので」
というわけで、所持金が510510prになった。
いやー、売れるもんだねぇ。今度からあのスライム重点的に倒そう。
「ところで、ブラウンウルフの革と牙ってどのくらいで売れます?」
「量によりますので現物の確認次第ですけれど、およそ革が1体分で200pr、牙が1対で50prですね」
なるほどねぇ。
あのお婆ちゃん、なかなかにぼったくってくれたね。別にいいんだけどさ。
コンビニでビニール傘買ったもんだと思うことにしよう。
で、冒険者ギルドには預金口座サービスもあるらしい。とりあえず口座を作って500000prは入金しておく。これでオッサンどもに恐喝にあっても大丈夫だな。
さて、お金は得たし、行くところは決まってるよね。