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壮太⑦

「ーーだから、もしブルーフィッシュが3体以上ならこういうフォーメーション。ここに俺が動いて行って、チェリンがバフをかける。君たち2人は後方でなるべくモンスターから距離を取ること。でも下がり過ぎたら別のモンスターと遭遇するかもしれないし、気をつけてね。入り口の方は最高で3体くらいしか出ないはずだから、さっき言ったこのフォーメーションを維持しておこう。ブルースライムは素早い癖にドロップも少ないから、無視する。でも、フォーメーション確認のために初回だけは戦闘したほうがいいと思う。あとエルフ君の魔法の威力を確認して、5体以上の対策は伝えるね。基本的にはブルーフィッシュ相手でも、2体しか居ないなら速さ重視で俺が遠くに吹き飛ばすから、戦闘回避しよう」


 地下道に入る前に水道橋入り口で、恒例の作戦会議だ。何事も情報共有と共通認識が大切だ。特にこういう命が関わる戦闘なら尚更。もう少し時間があったら、フォーメーションのリハーサルもしておきたいところだけど。


 しかし、こうしてみるとやっぱりキーマが居ないのは痛いな。スピード重視の強行突破がどう考えても難しい。あの子の槍技の一つ、雷撃なら掠っただけでも対象が麻痺状態になるから、特に戦闘回避に最適なのに。


 この会議の間、一番の懸念相手(足手まとい)エルフ君は、入り口の方を見ながらソワソワしていて、心ここに在らずだ。明らかに俺の説明に集中していない。


「ねえ、エルフ君、聞いてくれてた?」

「一応聞いてました。でも、まだ行かないんですか。時間がないんですよね?」


 橙色の瞳は少しキツめの印象を与える。一刻も早く仲間のもとに行きたいんだろう。体力ない癖に。


「時間は、システムメールを見るにあと1時間半あるから、ギリギリ。でもね、こういうフォーメーションは決めておかないと危ないからね。これから行くとこは命に関わるんだよ」

「はぁ。じゃあ早く終わらせてください」


 うわ、この子面倒臭そうにため息ついた。隠す気もなく剣呑な雰囲気を漂わせてくる。


 走ると倒れる貧弱さなくせに態度は傲慢で、これがエルフか!って感じ。


「……やっぱり全然似てない。真逆だ」

「似てる?何が?」


 ボソリと一言発したエルフ君は、一体誰と比べているのか分からない。


 それからカオス一味の戦闘スタイルの特徴を一通り説明も終えて、実際に地下道へのアクセスに入る。エルフ君を背負って。


 この子、入った瞬間水流に流されてたのだ。流れるプールより弱い水流なんだけど?!マジで貧弱。正直、足手まといを連れてきてしまったのかもしれない。


 と、考えている間にブルースライムが2匹現れた。

 最初は倒すと言ったけど、2匹なら戦闘回避した方が良い気もする。もう少し多数敵相手の戦闘じゃないとフォーメーションチェックという目的に合わないんだよね。


 ただ戦うと言った手前、聖剣を抜いて戦闘に入ろうとしたちょうどその時、徐ろに俺の首元を持っていたエルフ君の片手が前に向かって伸ばされる。


 ブワァッ!


 突風が吹いてスライムが吹き飛ばされていった。


「え。今のって……」


 聖剣を抜こうとした体勢で固まってしまった。

 エルフ君の翳した手のひらから突風が出現した様に見えたんだけど。


「エルフ君、今もしかして魔法使った?気のせいかな、詠唱が聞こえなかったんだけど」

「……あ。いや、僕じゃない、です」


 どこか間の抜けた反応だ。

 何かを隠そうとする様な……。


 でも、違うのか。


 確かに耳元で何か言ってたらすぐに気づくだろうに、この子は一言も詠唱していない。魔法が発動するはずないか。


 それにしても突風が吹くとかいうエフェクト、この通路にあったっけ?しかも戦闘時に。


 何か、納得がいかないけど。


「あの、ひとまず早く行きませんか」

「あ、うん。そうだね」


 エルフ君は、よほど居なくなった仲間が心配なんだろう。寧ろエルフ君の方が貧弱過ぎて心配だから、いなくなった仲間の方に同情するけど。


 《宙をゆき……なんだっけ、めい……もういいや、風を出せ。ストーム》


 ブワッと風魔法が巻き起こり、行手を阻んでいたブルースライム達が吹き飛ばされた。


「……え。いやいや、は?」


 思わず口に出してしまった。

 聞き間違いじゃないよね?


 背中を見遣るけれど、エルフ君の顔までは見えない。


「エルフ君、今の適当な詠唱は一体……」

「……久しぶりだから、忘れてました」


 マジで大丈夫か、このエルフ。

 大森林を守護する魔法使いの種族だよね?!詠唱忘れるとかあるの?!


 それでも適当だったのに発動しちゃってるよ。良いのか、今ので。大森林に愛された種族半端ないな。


 威力としては、ギリギリスライム3個が吹き飛ぶ程度。可もなく不可もなく、ある意味ちょうど良い風量だった。


 魔法の威力の調整は魔力操作レベルがかなり高くないと出来ないから、今の魔法の出力がエルフ君の魔法の力量と等しいはず。


 今はちょうど3体しか居なかったので戦闘回避をしたかったところだ。この子が吹き飛ばしをしてくれるなら先に進みやすい。


 そうして、しばらく戦闘を繰り返すうちにだいたいエルフ君の力量が掴めてきた。

 今回はひとまず居ないよりはマシって程度。まとまった敵との戦闘では、作戦通り僕の背中から降りてクレマさんを守ってくれているし。


 そして、肝心の能力値は、見知っているゲーム上のエルフの能力値の半分くらい。ちょっと落ちこぼれ臭してたけど、正真正銘の落ちこぼれだったみたいだ。


 まぁ、まだレベルが低いなら、パーティに加えて育成したら勇者の成長補正で足りない能力値を取り戻せなくもないか?


 彼の風魔法は威力こそ小さいけど、水属性の敵に有効だし。それに、やはりディレイタイムもないみたいだ。この点、相変わらずエルフはチートだなとつくづく思う。


 通常、魔法ひとつ発動する度にディレイタイムが必要になるのに、エルフ君にはその素ぶりがない。明らかに大森林の加護付きだ。


 勇者の能力補正がチート称号なら、エルフ達の大森林の加護がチート加護である。ばかばかと多様な大魔法を詠唱時間のみで発動できるようになる。エルフをパーティに加えたら勝ち組と言われる所以だ。まったく羨ましい限りだ。


 おや。システムメールが届いている。


 戦闘もひと段落したので、エルフ君を背負いながらメールを開く。


 《条件を満たしました。パーティメンバー交換イベントが実行されます》


「交換イベントだって!」


 明らかにエルフ君とキーマが交換されたはずだ。


 すかさずステータス画面を開いた。キーマの文字は暗くなり、代わりにエルフ君のものらしき名前から表示されている。


 名前:打ーwg

 種族:Elllf宇

 LV:#s#

 称号:?????

 加護:?????

 ユニークスキル:???????

 スキル:??????

 HP:????

 スタミナ:????

 MP:????

 物理攻撃力:????

 物理防御力:????

 魔法攻撃力:????

 魔法防御力:????

 回避力:????

 テクニカルポイント:?


 まあ予想はしてたけど、ステータスが見れない。


 でも、名前やレベルまで見れなくなっているなんて、何か変だ。

 いくらパーティ加入条件を満たしてないとは言え、存在している相手を現す表記が文字化けするなんて今までゲームでは見たことがない。


「だー…ぅぐ?だぅぐ君?」


 俺が何とか名前部分を読んでみると、背中の少年がピクッと反応した。


「君の名前?」

「…………」


 無言。

 そんなに呼ばれたくないのかな。まあ、嫌がることを強要するつもりはないけどさ。


 ちょっと不穏な雰囲気なのは気のせいかな?ひとまず弁明してみるか。


「今さ、交換イベントが発生してて、君の仲間と俺の仲間が組んでるみたいなんだよ。だから君と俺で今、システム的にはパーティ組めてるんだ。ちょっと君の名前とかステータスは条件が満たせてなくて、ほとんど読めないけどね」

「……そうなんですね」


 少し不穏な空気が和らいだ気がする。


 引き換えに、とてつもなく不快そうだ。

 声音が低いというか、真っ暗な中こんな声が聞こえたら恐怖に震えそうになるんだけど。


 てか、後ろにいて表情わかんないはずなのに、声音だけで機嫌が悪いの分かるって。

 どんなけ分かりやすいのさ、このエルフ。


「交換イベントはね、一定時間パーティメンバーを入れ替えると預かった子の経験値が2倍になるんだよ。解除するには経験値数をそろえるか、相当の対価を払う必要があるから、後で2人と合流したら調節しよう。彼らもパーティ組んでないと何かと不便だろうしね」


 背中越しにエルフ君が頷いた気配を感じる。

 少し機嫌が治ったかな。


「大丈夫だよ、うちのキーマは結構頼りがいがあるし強いんだ。ちゃんとシュージンさんを守ってくれると思うよ」


 今は丸裸になってるだろうけどさ……それは不安を煽るから言わない方がいいか。

 シュージンさんがまともな人なら、何か装備を分けてくれるはず。


「守るのは当たり前だし。どうでもいいから、早く進んでください」


 言葉と一緒にエルフ君が俺の太ももを軽く蹴った。


 もう、馬にする動作じゃん、それ。

 一体どんな育ち方したらこんな太々しい子になるんだよ。


 どうでもよさそうな態度じゃないから言ったんだよ?言い争うつもりはないけどさ?


「ソウタ様に、なんて態度を取るんですか!」


 温厚なチェリンが我慢できないとばかりに割り込んできた。


「いや、良いよ。大丈夫だから」

「私が大丈夫ではありません!こんなエルフ、置いていきましょう!」

「いやいや、流石にそれは酷いから。俺は構わないし、この子が急ぎたい気持ちも分かるし……ね?」

「でも……!!」


 チェリンの大きな瞳に大粒の涙が浮かんでいる。


「怒ってくれてありがとう、チェリン。でもさ、今は先を急ごう、ね?」


 彼女の目元を軽く指でなぞって涙をはじいてあげる。

 チェリンも、そっと目を閉じて……あぁ、なんて可愛いんだろう。


 本当ならここでキスの一つもして安心させてあげたいところだけど、状況的に難しいのがもどかしい。


 あと、俺の首元のエルフ君の腕が軽く締め付けてきて苦しい……う、ギブギブ。


「わかったわかった。もう行くから!ねぇ、もうちょい、腕の力緩めて!!」

「青春だねぇ、わっちにも淡い恋を抱く時があったんじゃが……」

「あー、あー、ほら、いいから、エルフ君の言う通り行こう。そろそろ本当に時間やばいし」


 クレマさんの昔話はゲーム内でも長文だった。適当に読み飛ばしてたけど、悲恋ものだったはず。好きな子を追いかけて隣村まで行ったけど、怖くなって逃げ帰ったとか何とか……。


 正直チェリンといい感じの今、あまり聞きたくないし、あれが今語られるとなると本気で時間がなくなる。


「接敵です!人間3人、カオスの一味かと!」


 チェリンが索敵展開をしてくれていた。敵がモンスターから変わった。地下通路が近い証拠だ。


「フォーメーションをやや近めに変更!エルフ君、風魔法以外は使える?黒魔法は風と相性悪いんだけど」


 《土よ、我の命に従い動け。ドール》


 なんかさ、あの子の詠唱やっぱ変じゃない?

 妙に短いし、精霊を示す言葉ないじゃん。エルフは精霊を信仰してたはずだよね?本人に突っ込む余裕はないけどさ。


 で、ドールという聞きなれない土魔法は、文字通り土人形だった。大人の人型等身大2体が地面からニョキニョキと生えてくる。


「え、その魔法初めて見た。それ、しっかり動くの?」

「……一応」


 警戒感を露わにしつつも、エルフ君は返事をしてくれる。


 ゴーレム的に単一の動きしか出来ないのかと思ったけど、2体とも人の動きと遜色なくスムーズに動いている。しかも別々に。


「器用だねぇ」


 どうやって操るんだろ。

 ゲームで見たことない魔法だから興味深い。後でじっくり見せてもらいたいところだ。


 で、俺はあることに気づいた。

 この子、倒れるくらい体力貧弱なら自分の土魔法の人形に乗って移動したらいいんじゃ……?

 でも……うーん、後でいいか。勝手にパーティ離脱されても困るし。


 てか、そんな変わった魔法使えるのに、その有用性に気づいてないの、ちょっと可愛いな。


 カオスとの戦闘はこの土人形のおかげもあって、かなりスムーズに地下通路を進められた。

 ただ、最初に接敵したカオスの一味が他の連中へ知らせたみたいで、アリの巣を突いたようにワラワラと次から次に人間が集まってくる。


 今はやっとその団体との戦闘もひと段落したところだ。予想してたけどさ、やっぱり疲れる。鍛えててよかった。


「ふぅー疲れたね。これでこの先の講堂まで敵は来ないはずだよ。みんな、怪我してない?」


 ざっと見たところ、大丈夫そうだ。チェリンはもちろん、クレマさんも元気そう。


 で、エルフ君は俺に運んでもらおうと、おんぶしての格好をしている。

 いや、そろそろ土人形で移動したら良いよって言おうかと思ってたけど、この動作が可愛くてね。もうしばらく言わずにおこう。


 で、あとはたまにくるカオスの数人を軽く相手にしながら足を進めている。

 目算でいくと、あと10分くらいで講堂に辿り着ける。魔王誕生までの時間はあと15分。だいたい聖遺物の暴走はその後にあるから余裕だ。


 スタミナ消費を抑えるためにも歩いて進んでいく。


「ーーそれでねぇ、姉貴姉貴ってついて回るあの子がわっちも可愛くてね、つい、やってはいけない約束までしちまったのさ」

「結局歩きながら話すのか」


 思わず小声で突っ込んでしまった。

 結構内容聞き流してたけど、クレマさんのあの昔話が結局挿入されてしまったのだ。


 まあ、歩いてる間することないから良いけどね?エルフ君も、スタミナとかどうでも良いから早く行けとか急かさないで、聞き入ってるみたいだし、ちょうどいい。


「約束って何ですか?」


 本当にエルフ君はクレマさんの話に興味津々だ。俺の背から身を乗り出してクレマさんの方を向いている。


「ふふ、わっちは猫が好きなんじゃ」

「んん?」


 思わずハテナが頭に浮かぶ。そんな話だっけ。


「それを言ったら、あの子、自分がわっちの猫になるから、いつまでも一緒にいて欲しいってねぇ。あの子がもうすぐ隣の村へ行くって知ってたのに、わっちは頷いちまったのさ」


 つまり、子供のごっこ遊びってことかな?

 初めてしっかり聴いたけど、悲恋ものというより、本当に小さな子供同士の淡い思い出だ。


「そんな無責任な約束、何でしたんですか」


 怒気をはらんだエルフ君の声が、クレマさんに噛みついた。


「え、そんな怒ること?」

「貴方のその無責任な言葉が、その子の大きな支えになってしまったはず。禁忌を喰らうくらいに」


 ???

 どういうことだろう。


「……わっちも、約束を守ろうと何度も足を向けたさ。あの子のいる家の前まで、何度も行った。でも、家から聞こえる声が、わっちを引き留めたんじゃ。……あの子の泣き声が、時にはわっちを呼ぶ言葉にも聞こえて、怖くなった」


 何で幼馴染に会うのに怖くなるんだ。

 しかも泣いてるのに。


 うちの要じゃあるまいし……あー、いっぱい泣かされたなー。あんなジャイア◯はなかなかいない。それでも、俺は何度も助けられてきた立場だったし、怖くて家に行けないなんてなかった。


 いや、逆か。俺が家で泣いてたら、(あいつ)はいつも2階の窓からでも上がり込んできた。

 要が泣いてたら……泣いたとこなんか一回くらいしか見たことないけど。でも、もし泣いてたら、俺もあいつのところにやっぱり突撃してたかもしれないし、泣かしたやつは許せそうにない。


 このクレマの長文が読み飛ばしたくなる理由がコレだった。俺には感情移入どころか、意味不明なのだ。


 何で泣いて自分を呼ぶ幼馴染を放置するんだ。

 俺なら絶対にしない。要には結構放置されたけど、隣に座って泣き止むまで待ってくれていた。そんな関係が当たり前だったのに。

 本当に理解できない。


「貴方のせいで、その子……その人は……きっと」


 俺の心の中とは別として、何かに怒っているのか、エルフ君が声を震わせている。


「死を拒んでしまった」


 相手に聞かせるつもりがないのか、俺だけが聞こえる声量でつぶやいた。


 ドゴォォオオン


 地面が大きく揺れるほどの衝撃がきた。


「な、何だ今の?!」


 今の衝撃は聖遺物の暴走?こんなに早く?

 いや、暴走ならもっと違う衝撃波が来る。この通路なんか崩れるはずだ。


「ソウタ様!左の通路奥から1人、こちらに向かっています」

「1人?」


 カオスの一味なら必ず2人以上で行動しているはず。


「ーーぁ!!ーーぁ!!」


 聞きなれた叫び声が反響して聞こえてきた。


「キーマ?キーマ!ここだ!」


 急いで応えながらチェリンの言った通路を左へ曲がる。この道は地下講堂への最短ルートだ。キーマは地下講堂に居たのか?


「ソウター!!!ソウタ!!ソウタ!!」


 曲がると同時にキーマが胸に飛び込んできた。チェリンの索敵から数秒でここまで来るなんて、流石の速さだ。


「あの、あの!あの子!カナ……むぐ」


 キーマが半狂乱に涙を流しながら何かを言おうとした。途中でエルフ君に口を塞がれる。


「ちょ、何してんの。事情を聞かないと」

「この勇者にあの人の名前を言ったら殺す。貴方が、あの人の装備を着てる時点で殺したいところですが」


 ヒヤリとナイフを首に突きつけるかのような冷たい声音だった。思わず俺も固まった。


 キーマが泣きながら静かにコクリと頷いて見せると、包帯の巻かれた手が静かに下げられる。


 トンッと俺の背後が軽くなったかと思うと、キーマの来た方向に降り立った。


「……この先に居るんですか?」

「ああ、ああ!脱出しようとしたら、アイツと白髪の獣人だけ閉じ込められたんだ!俺は誰か助けを呼べって……そしたら、そしたらさっき、後ろから大きな音が!……ひっく、おれ、俺……何もできなくて」


 キーマがこんなに号泣してるのを初めて見た。


「だ、大丈夫だ。今から助けに行こう。きっと壁に攻撃魔法があたっただけだよ」


 言ってみたが、確証がない。こんな展開は今までのイベントで一度もなかった。


「……先に行きます」


 エルフ君は、土人形の犬のような生き物を形成すると流れる様に跨り、クリーム色のローブを靡かせて駆けて行った。


 あの子、土人形使えば移動出来るって気づいたんだ……ということは、今まではクレマさんの守護という役割を守ってくれてたのか。


 あれ?てかあの子、詠唱してなくない?何で土魔法発動したの??


 通路の先は、さっきの衝撃で魔法灯への魔法供給が途絶えたのか、暗闇だ。


 何か、経験したことのないことが起きている。


 魔王誕生のカウントダウンは止まることなく迫り続ける。あと、7分だ。

魔法の優劣は、何となくノリで把握してくださいませ。いずれ、まとまって説明があるかも知れません。

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