表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁鬼 -アカツキ-  作者: 三城谷
6/15

【聖なる夜Ⅱ】

――十二月二十五日。

世間ではクリスマス、というか冬休みという期間に入ってる所だろう。

だが俺の学園、浜ヶ丘学園はその期間は存在しない。

学園の理事長が変って、去年から急に無くなってしまったのだ。

当然、学生はブーイングの嵐もあったり反感はあったのだが……


「それにしても、冬休みの期間に登校は勘弁して欲しいな……」

「愚痴を零さないでよー。アタシだって、嫌だけど……もう決まっちゃった事だし」

「その代わり、春休みと夏休みが以上に長いからなぁ。去年はそれで、苦労したけどな」

「何で月野が苦労するのよ。部活入ってないのに……」

「俺の場合は、ほら。部活の助っ人っていうのがあったから」

「……ああ、そういえば。そんな事してたね」


――部活の助っ人。

冬休みが無いこの学園で、長期間での休日は運動部の熱が入る期間だ。

特に浜ヶうちは、運動部には力が入っている。

だから運動神経のある者は、たまに問答無用で借り出されるという。

なんとも理不尽な扱いを受けるのだ。


「……月野、提案なんだけど。今日も、さ。一緒に帰らない?」

「お前と帰る時、寄り道しかしないからパスで」


普段なら断らないのだけど、今日はちょっとすぐに帰りたい。

何を隠そう、家に吸血鬼を放置しているのだ。

色々と心配にもなるだろう。それに……


「……またあいつが来るかもしれないしな……」

「ん?どうしたの?月野」

「ああ、いや、なんでもない」

「そ。余所見してると電柱に顔ぶつけるよ~」

「誰がぶつけるかよ!」


呟いた言葉を聞かれなくて良かった。正直、恵美には平和に過ごしてもらいたい。

一人暮らしで、かなり世話になってるしな。……ん?


通学路が十字路になった時、こっちを見てた人影の気配がした。

気のせいか?……一応、確認してみるか。


「恵美。先に学園に行っててくれないか?」

「――え?なんでよ?」

「良いから、後でちゃんと行くから」

「う、うん。サボらないでよ?あとさっきの放課後の話、まだ考えといてよ?」

「はいはい。分かったから……それじゃな」


恵美の背中が見えなくなった時、意を決して俺は路地へと近付く。

緊張か恐怖なのか、曖昧あいまいな鼓動が身体を走る。


「(誰もいないなら、すぐ帰れば良いだけだ)」


そう思って、路地をゆっくりと覗いてみる。

けどそこには、行き止まりという事を示す。

……壁という壁しか無かった。


「はは……やっぱり気のせいか。時間は大丈夫だし、一度あいつに確認取るか」


一度出した携帯をしまい、その場から無意識のはや歩きで離れる。

そのまま俺は、放課後にすぐに帰ろうと決意して学園へ向かった。


・・・・・


『おやおや?彼が、姫君を匿っているで正解のようですね。どう思いますか?レギル』

『どうでもいいよ。早くあいつを捕まえて、彼女の居場所を聞き出せばいい。それから記憶を狩り取れば、任務は完了でしょ?』


電柱の上で、二人の白装束が風に触れる。

一人は鎌をそしてもう一人、腰に銃をぶら下げて。彼の姿をただ、観察していた。


『レギル。アナタはもう少し、手順を踏んでから仕事をした方がいいですよ?』

『手順通りに行かない時はどうする?それで失敗したら、お前の所為にするぞ。メガネ』

『メガネはしていますが、名前のように呼ぶのはやめて下さい。私には、シェイドという名前があるのですよ?レギル、アナタはもう少し顔を出すべきです。表情の変化が確認出来ませんので、アナタの冷たい言葉が私の心を抉ります』


シェイドは眼鏡を直し、レギルに視線を流す。

レギルは立ち上がり、口を動かす。


『そのまま、お前の魂を狩り取るか?……それより、視察対象が移動した。追うぞ』


レギルはさっさと行ってしまい、シェイドを取り残す。

その様子を見て、口角を上げて呟く。


『やれやれ。もう少し、様子見ですか……』


彼らは移動しながら姿を消し、その場には何も残らなかった。


・・・・・


レギルとシェイド。彼らは一体何者か?

月野はまだ、知る由もなかった。

彼らの存在が、彼女。フレドリカの存在を左右する事も――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ