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暁鬼 -アカツキ-  作者: 三城谷
11/15

【不幸の手紙:前編】

――冬休みが終わる時期。俺の通っている浜ヶ丘学園は、冬休みという長休期間は無い。

学園の裏で、俺は彼女を抱いている。

その理由は――


「月野。血をくれ、もう我慢が限界じゃ」

「はいはい。了解しましたよ、お嬢様」


――それは吸血衝動。

彼女の要望に、俺はすぐにこたえる。

何故ならその行為は、俺達にとって必要不可欠な行為となってしまった。

彼女――フレドリカは、吸血鬼。魔界の女王にして、俺の主人だ。

彼女は俺より、身長体格共に小さい。

その彼女を俺は抱き、彼女の吸血行動を受け入れる。


「……ふぅ」


首に微かな痛みが走り、そのまま空をあおぐ。


……十二月二十六日。

クリスマスという聖なる夜の二日間は、俺にとっても特別な日になった。

魔界という世界の裏側から来た彼女、フレドリカ・ブラックブレイド・グラン。

吸血鬼の彼女が来て、俺の生活は一変した。


「おい、月野よ。影ながら見ていたが、学校というものは面倒じゃのう」


ヒョコッ、と彼女は影から顔を出す。

影ながらと文字通りの意味で、そんな愚痴ぐちこぼす。


「そんな皮肉を言うなら、お前は家に残れば良かったじゃないか」

「何を言うのじゃ。ぬしと我はいちちぎりを交わした間柄あいだがらじゃぞ?」

「血を吸わせてるだけだろ」

「――むぅ……」


彼女は、俺の反応に不満そうにする。

ほほふくらませ、彼女は口を開く。


ぬし、昨日から我に冷たくないか?」

「……気のせいだ」


俺は彼女から目をらし、そう呟く。

別に冷たくしてる気はない。ただ俺は、昨日の事を考え続けているだけだ。


十二月二十五日の夜、俺は彼女の眷属けんぞくとなった。

吸血鬼の下僕に……。


「……そろそろ帰るか」

『つ、月野?聞かんか、月野!』


移動を開始した途端とたん、彼女は影へと戻る。

だが先程の態度たいどが気になるのか、彼女は話をめようとはしなかった。

口には出さず、テレパシーと呼ばれるもののたぐいで彼女は話す。


『主の身体の中に我の力を入れた為、主は通常の者達より運動能力が向上している。それは分かっておるな?』

「……」

『――反応せんか!!』

「いだっ!?」


周囲の目を気にして、咄嗟とっさに口をふさぐ。

一瞬視線を向けられたが、すぐに視線から解放される。


「(何しやがるんだ、フレドリカ!)」

『主が我の話を聞かんのが悪いのじゃ。自業自得じゃよ』

「(だからって、ちから一杯いっぱいる事無いだろ!)」

『安心せい。ただのすね蹴りじゃ♪』

「――思いっきりてぇ場所だよ!!……あ」


頭の中で会話がエスカレートし、思わず大声を出してしまった。

し、周囲の視線が痛い。俺は、何でもないと周囲に苦笑で表現した。

だが逆効果の様子で、ひそひそと何かを話して皆去っていった。


「……まぁ、こうなるよな」

『それも自業自得じゃよ』

「お前が言うなよ」


俺は鞄を肩に掛け、昇降口へと足を進める。

学園の中には部活の者や、勉強してる者は多々残っている。

だが俺は違う。何も部活はやっていないし、勉強は嫌いだ。

俺が残っている理由は、二つある。

一つは、吸血鬼体質になったのが主な理由だ。

もう一つは、これだな。

俺は、朝手にした物を鞄から出した。

それは、一通の想いが込められた手紙。

いわゆる――


『何じゃそれは?果たし状か?』

「――ラブレターって奴だよ。何を果たされるんだよ、俺は」


この吸血鬼は何を言い出すんだ。ちゃんとハートが、張ってあるだろ。

果たし状のイメージは墨汁で、力強く書かれた手紙が脳裏に思いつく。

ラブレターで呼び出され、体育館裏でボコられる。

そんな事があってたまるか。


『おい、月野。ドコに行くんじゃ?』

「この手紙を出した相手に会う」

『主、早速浮気か』


何が浮気だよ。俺とお前は、そういうのじゃないだろ?

昇降口から出て、俺は目的の場所へと向かう。

この手紙を受け取ったのは、後悔するとは思わなかった――


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