【暁の空Ⅰ】
……十二月二十五日、クリスマス。
その日の真夜中、俺は自分を失った。
「――主、起きるのじゃ。我に飯を作れ」
「……自分で作ってくれ」
「何を我に作らせる気じゃ?我が作れば、お主の台所は殺伐としたモノになるぞ?」
「具体的には、どれくらいだ?」
「ふむ……ハンバーグとやらが、一般人の内臓に見えるぐらいかのう?」
「普通に焼いてねぇだけじゃねぇか!!(完全に生だろ、それ)」
「ふむ。なら主、台所を全体的にゲノム状態にしてやろう。我ならば、それは一瞬で出来るぞ」
「何その、無駄な自信は……」
どれだけ自信満々なんだよ。コイツの料理音痴って手遅れ過ぎる。まぁコイツの場合は、仕方ないか……。
俺の名前は、『葛城月野』
訳あって今、彼女と二人暮らしをしているのだ。
まぁ俺の場合は、ただの罪滅ぼしでもある。
俺が関わってしまって、コイツ達の世界に土足で踏み込んでしまったのだ。
「おい、月野よ」
「何だよ、改まって」
「……はよ、飯を作れ。ぶち殺すぞ?」
「……(はぁ)……」
――前言撤回、コイツがこの街に来たのが悪い。
俺達の住んでいる街、『浜ヶ丘島』
本土から若干離れていて、半分海に囲まれたフロート島である。
半分というのは、本土とこの島は一応繋がっている。
その半隔離されたその島には、コイツのような特異な存在がいるのだ。
彼女、『フレドリカ・ブラックブレイド・グラン』
――通称、コード『B・B』
彼女の存在が出現した事により、この島は全て変わったのだ。
――彼女は……吸血鬼だ――