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無知性の凱歌: オリジナル  作者: 宮沢弘
第四章: 幸せ
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結婚式

 式には、従兄弟も再従兄弟も、おじ、おばも集まってくれた。

 そこそこ近い親族の中の私の世代で、やっと最後に私が片付いたからとも言っていた。

 あるいは、おじ、おばもいい年だし、これから親族で目出度い席で集ることもなかろうということでもあるらしい。まぁ、目出度くない席は、これから当然あるわけだが、必ずしも集まるとは限らない。

 集まるなら目出度い方が気分もいい。それに言うなら、目出度くない方だと、何やら仕事を割り振られもするだろう。

 そういうわけで、私の方は親族だけだった。彼女の方は、親族と友人だった。

 小さいホールでの人前式。その後に立食形式のパーティーになった。

 パーティーでは、私の方は親族が4人、軽いスピーチをした。従兄弟の一人は、ベルを持って来ており、5分でそれをリンリンと鳴らした。彼女の方は最初驚く人もいたが、私の方にとっては、それはジョークだった。ベルが鳴るたびに笑い声が挙がり、そのたびに笑い声は大きくなった。

「発表は続けて二件ということで」

 そういったおじもいた。

 彼女の方も4人がスピーチをし、それからホールの司会者が祝電を読み上げた。こちらでは、従兄弟もベルを鳴らすという馬鹿はやらなかった。

 もっとも、パーティーの最中でのスピーチだったから、それらを誰が実際に聞いていたのかとは思う。

 私と彼女が、互いの親族や友人を紹介しあった。


 式が終り、私たちはホテルの部屋に戻った。

 何やら、いまさらではあるが、落ち着かない感じで、楽な服に着替えていると、上着のポケットからカード入れが落ちた。

 隣の部屋で着替え終え、こちらに来ていた彼女がそれを拾った。

「これに職員カードとかが入っているの?」

「そうだよ」

 私は彼女から受け取り、上着に戻そうかと思った。

「そうだ。引越す時に、本をどうしたのかって聞いたよね」

 カード入れを摘み、揺らした。

 それを見て彼女はうなずいた。

「面白いところに寄贈したんだ」

 カード入れを開き、一枚のカードを取り出した。それを彼女に渡した。

「図書館?」

「あぁ。その図書館の無期限、無制限パス」

 彼女はそのカードをゆっくりと見た。

「図書館なんて」

「そうだけどね。くれるって言うから貰っておいた」

 彼女からパスを受け取り、カード入れに納め、そして上着に戻した。

 その時、端末が鳴った。

 私は端末を取り出し、着信を確認した。


   From: アキ, M=0

   おめでとう。

   そして、さようなら。


 誰だろうと思った。しばらく端末を眺めていた。

 マップス=0。その言葉が転がり出て来た。

 目覚めていたんだ。読んでいたんだ。そして、受け取ってくれたんだ。

「誰から?」

 彼女の声で、私は顔を上げた。

「元友人…… かな」

 私は端末をしまった。

 彼女の肩に手を回し、ソファーに座り、そして思った。

 幸せとは、こういうことだと。


〔初出 Dec 07, 2015 〕


scifi.skoba.org (medium.com) と重複。

https://scifi.skoba.org/%E7%84%A1%E7%9F%A5%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%87%B1%E6%AD%8C-%E7%9B%AE%E6%AC%A1-dc4c668a0ab1#.hmo5hokp8


設定資料:

 作中に出てくる、電子ペーパーを綴じたメモ帳について。そのものではありませんが、元型のようなものとして、「京セラ Refalo」で検索をしてみてください。

 これはディスプレイは一つの面に固定されていますが、システム手帳のようなリングを用い、そこにキーボードなどの、特定の昨日を持ったカードのようなものを、本当にシステム手帳のように綴じて使えるようになっていました。

 作中では、一枚一枚の電子ペーパーがそれなりの機能を持っていることを想定していますが、Refaloのように、ある程度は基礎となる機能を持ったものが、一枚あるいはメモ帳の背のところにあたる場所にあるようなものを想像しています。



第111日:


   「チャーリー、君も恐ろしかったんだろう?」


 これは言うまでもなく、ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」です。



第172日:


   「おはよう! そして会えなかったときのために、こんにちはとこんば

   んはも!」


 これは言うまでもなく、「トゥルーマン・ショー」(ジム・キャリー主演, パラマウント映画,1998年)からのものです。



第221日:


    どこかで、そういう話を読んだことがあるように思った。机の上に残っ

   ていた本を何冊かめくり、その本を見付けた。

    だが、この図書館には、司書も修道士もいない。


 これは言うまでもなくウォルター・M・ミラー・ジュニア(Walter M. Miller, Jr)の「黙示録3174年(A Canticle for Leibowitz)」です。


 こういうのをマナー違反的に思われるかたもいるかもしれません。私の他作でもやってますが、これは意図的なものです。テクストの海へのアクセス口を抉じ開けるためのものです。


 あとは細かいことですが、主人公の言葉も時期を追って少し変えるようにしています。



 設定資料はこちらからどうぞ。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1I5t-COC8lFuPwcYmRgjCxRluexo1PuFc36LfzLqvKvM/edit?usp=sharing



〔初出 Dec 07, 2015 〕

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