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目標  作者: 風速健二
目標 第2部
16/31

二人で決めた事

折角、お袋が気を聴かせて外泊してくれたのだが、新婚初夜の晩は二人共疲れて、イザ一緒のベッドに入ったはいいが、そのまま寝てしまった。

式と披露宴は日月の連休の月曜にやったので、翌日は休みなので、ゆっくりとさせて貰った。


昼近くなって、真理ちゃんが朝ごはんの支度をしてくれる。

「手伝おうか?」

と言ったら「駄目です!」と言われてしまった。

「何かあって私が出来ない時はお願いするかも知れないけれど、普段は私が作るから」

そう言って俺に手出しをさせてくれなかった。

なので、大人しくテーブルで待っていた。


夫婦になって最初の御飯は、和布とじゃがいもの味噌汁、塩鮭、納豆、卵、白菜のお新香と完全な和食だった。

そう真理ちゃんは和食党なのだ。

俺は板前なんかしているが、朝はパンでも蕎麦でもうどんでも何でも良いという節操の無さなのだが、さすが農家の娘「朝はしっかりごはんですよねえ~」

と言って、ニコニコしながらヨソってくれた。

味噌汁も旨かったし、真理ちゃんは俺の好みを判ったみたいだ。

もしかして、俺が真理ちゃんの味に馴れたのかも知れないが……


御飯を食べた後は、二人で色々と足りない小物を買いに行く事にした。

自分の店のモールでも良かったが、ここはライバル店が入っているモールに行く事にした。

小物を売ってる店はどちらも同じだからだ。

ついでに偵察をしてくるつもりだ。


真理ちゃんはこのモールにも良く来るらしく、店の場所も良く知っていて、俺をどんどん案内してくれる。

「ここのお店は、オムライスの専門店で、ここはケーキが有名なお店なの」

歩きながら真理ちゃんはその知識を俺に教えてくれる。

やがて、ウチの店のメニューをまねたという店の前に着いた。


店の前にはメニューが立て看板と一緒に広げて置いてあり、俺はそれを間近でしっかりと確認したのだ。

確かにウチの店のコンセプトを真似てはいるが、底が浅いというか、料理を若者向けのファッションの一部として捉えて居るのが良く判った。

まあ、正直こういう売り方もあると思うが、似ている様でウチはあくまでも本物志向で若者向きというコンセプトなので、完全には被らないと思ったのだ。

だが、こちらの方が人気が出ないとは限らない。

ウチの店が負け無いためには、俺を初め従業員の皆がしっかりとせねば、と思うのだった。


家に帰ったら留守電にお袋から「友達と温泉に来ているので、もう一泊してから帰る」と連絡が入っていた。気を使ったのだと思う。感謝せねば……

その晩俺達は本当の初夜を過ごしたのだった。


次の日、店に出ると、いろいろな人がやって来てお祝いの言葉を掛けてくれた。

本当にありがたい。

俺達の式の模様はモールで出しているチラシのニュース欄に乗せて宣伝するそうだ。

早くも何件か問い合わせが来ていると、事務局の人が言っていた。

櫻井店長によると、チャペルだけじゃ無くて、神前でも出来る様にしたほうが良いという案も出ているので、空いているスペースに神前の祭壇を作って何処からか神様を召喚しようと言う事になるそうだ。

このモールには本格的フランス料理を出す店や、ドイツ料理を食べさすビヤホールもある。

更には中華だって何軒もあるし、イタリヤ料理屋も揃っている。

披露宴は好きな店で行えば良いと思うのだ。


仕事は、俺は一応煮方という言う事になっているので、煮物を作るのは勿論だが、

煮物の大半は仕込みの段階で終わっているのだ。

まあ、注文で新たに煮る場合もあるが、それは煮魚だったり、早く煮る物だったりして

本来の煮物とは若干違うし、そう注文も多くはないので、俺は揚げ物もやっている。

いわゆる、「天麩羅」や「しんじょ」などを注文に応じて揚げているのだ。

刺し身の方が忙しければ刺し身もやるし、結構何でも屋なのだ。

だが、これが俺の板前としての技能を磨く事に繋がるのだ。

今まで、自分でも勉強してきたり、先輩の仕事を見ていたりしていたのが、ここに来て役に立っている。

それに、世帯を持った事で、将来の事も真剣に考えなくてはならない。


家に帰って、真理ちゃんに自分の思いを打ち明けて見る。

「あのさぁ、すぐという訳では無いのだけれども、ゆくゆくはこの店を改装して、俺の店としてやって行きたいと思っているんだ。勿論今は、お金も実力も不足してるけど、将来は真理ちゃんと一緒にできたら良いと思っているんだ」

俺は自分の想いを正直に真理ちゃんにぶつけた。そうしたら真理ちゃんは

「うん、私もそう思っているの。だからお母さんのお仕事手伝おうと思って。馴れておこうかなと……」

真理ちゃんは、ちょっと恥ずかしげな感じながら、俺に言ってくれた。

そうか、真理ちゃんも同じ想いだったのか。

そう思うと俺は嬉しさと責任感が増して来るのだった。

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