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STEP
家に帰りたくなかった。
帰ってもどうせ誰もいないだろう。
いたとしても、また灰皿や皿や花瓶が飛んでくるだけだ。
気づけば冷たいしずくが山下優衣の頬を濡らす。
それに合わせて歩く速度も速くなる。
こんなはずじゃなかった。
普通に学校へ行って、授業受けて、友達と放課後にカラオケ行って。
それで十分だった。
幸せだった。
何度殴られても、
蹴られても、
痛みも感じなかった。
昔に比べれば。
テスト期間中に何度もケンカのうるさい声を聞いた。
でも我慢できた。
机に向かって勉強できているということが嬉しくて。
でも、悪魔はその日常のささやかな幸せを奪っていく。
なんで。
なんで・・・?
なんで、
殺したの・・・・?
_お父さん_・・・