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記憶への旅   作者: gOver
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第7話 箒乗り一座

 『空の刻印』……私は今まで自分の体にそんな印があることに、全く気づきませんでした。背中にあるらしいその刻印、私は好奇心から確かめてみようと思いました。刻印の場所は、さっき微かにうずいた背中の感触で、だいたい検討はつきます。

 満月の月明かりの中、私は鏡に背を向けてそっとネグリジェをはだけて見ました。小さな刻印はパッと見ただけではどこにあるのか分かりませんでした。今までずっと気づかなかったのも無理はありません。私は背中の隅々を見渡し、肩を回して見ました。

「あっ……」

 右側の肩胛骨の下。そこに何か小さな痣のようなものがありました。もっとよく目を凝らして見ると、アルファベットの「W」を90度横に傾けたような、ちょうど空に浮かぶカシオペア座のような形の刻印がありました。青がかった黒色の、ほんの小さな刻印ですが、ちゃんと背中に刻まれていました。

「……」

 私はまた恐ろしさがこみ上げてきました。青黒い『空の刻印』に支配されているような、呪われているような気持ちになったからです。

「あなたは、私が誰なのかどこから来たか知っているの?……」

 私は思わず『空の刻印』に向かって呟いていました。もちろん、刻印が答えてくれるはずはありません。私は深くため息をつくと、ネグリジェを羽織りました。ジーナおばあちゃんは、安心して早く寝なさいと言いましたが、今夜は眠れそうもありません。私は、月明かりだけの薄暗い部屋のベッドの中で、夜明け近くまで起きていました。


 翌日の朝早く。寝不足のぼんやりとした頭で、私は箒乗り一座の元に1人で出かけました。ジーナおばあちゃんもママもフィオナもまだ眠っています。

 『空の刻印』のこと、私の記憶のことは、箒乗り一座の人達の方が詳しいのではないかと思ったからです。フィオナ達に心配させたくなかったし、私が誰であるか知られるのが、少し恐かったのです。もしかしたら、私は呪われた者、恐ろしい存在なのかもしれないのです。

 箒乗り一座が泊まっている、村でただ一つの旅の宿に私は行ってみました。

 早すぎて、まだ彼らは起きてないんじゃないかと思いましたが、旅の宿の前まで来るとその心配は消えました。箒乗りの一座の人達はもう起きて、宿の前を箒に乗ってグルグル飛んでいたからです。

 飛んでいるのは、昨日いなかった人達でした。男の人と女の人、それに小さな男の子と女の子がいます。

「あっ、スーだ!おはよう、スー!」

 小さな男の子が私に手を振って、地上に降りてきました。その後から、他の皆も降りてきます。

「……おはよう」

 私は初めて出会う人達に、ちょっと気後れしてしまいました。

「ああ、君がスーだね。話には聞いているよ」

 がっしりとした体格ですが、ニコニコ笑って優しそうな男の人が言いました。

「私はこの箒一座の団長である、テックスだよ」

 テックスさんは私に手を差し出し、私はそっとその手を握りました。大きくて柔らかな温かい手でした。

「それから、妻のシーラと、息子のノールと娘のサーラ」

「あなたがスーね、初めまして。綺麗な娘さんだわ」

 次はシーラさんと握手を交わします。シーラさんは、髪をアップにまとめた美人で、声が大きく快活そうな人です。

「僕はノール!箒のキャッチすごかったね!」

 ノールという男の子とも軽く握手しました。シーラさんによく似た元気な子です。そして、もう1人小さな女の子に私は手を差し伸べました。栗色の長い髪を垂らした可愛い女の子です。

「お兄ちゃま、いきなり慣れ慣れしいわよ。わたしたちまだ会って間もないんだから。わたしはサーラです。よろしくお願いします」

 丁寧にお辞儀をして、私と握手をするサーラを見て、私は微笑みました。

 昨日会った、ロックとシュールとリノはまだ起きていないようです。

「私達一家とロック、シュール、リノが、この箒乗り一座のメンバーだよ」

 テックスさんがそう言った時、旅の宿屋のドアがすっと開いて、中から誰かが出てきました。

 リノさんです。彼女が現れると、突然周りの雰囲気が変わったかのような感じを受けました。動から静に変わったような、決して暗い雰囲気ではないのですが、冷たさと静かさがリノさんからは溢れています。それでいて、凛とした力強さも感じます。

 リノさんは私たちを一瞥すると、そのままさっさと歩いていきます。

「リノ、どこへ行くの?」

 シーラさんが声をかけると、リノさんは立ち止まりました。

「……朝の光を浴びに……」

 振り返らず小さく呟くと、リノさんはまた歩き始めました。私は何となくリノさんのことが気になります。触れるのが恐いような神秘的なリノさん、けれど何か私の心の奥の方で懐かしさがこみ上げてきます。 会ったばかりのような気がしないリノさん。

 私はそっとリノさんの後について行きました。

第7話を執筆させていただいた、春野天使です。

今回で箒一座の人々も全員登場して、主な登場人物は出そろったと思います。これからの旅で、また新たな登場人物が現れるかもしれませんね。楽しみです。リレー小説は自分では考えつかないような展開になったりするので、とても面白いです。

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