第54話 甦る記憶
思い出しました、何もかも……。背中の刻印の鈍い痛みを感じながら、私は過去の記憶を徐々に取り戻していきました。
私の名前はレティシア。ジーザス王とフローラ王妃の間に産まれた姫。私には確か、双子の弟がいたはず……そう、名前はエリウス。私とエリウスとリノさんは、よく箒に乗って遊んでいました。
平和な日々。あの楽しい日々が永遠に続くものと思っていました。空の魔物の襲撃があるまでは……。
ニュアージュの国は、魔物の襲撃で滅ぼされました。生き残ったのは、私とエリウスと、そしてリノさん?
私はリノさんの顔を見つめます。私は混乱のさなか、エリウスやリノさんとはぐれてしまいました。エリウスはリノさんと一緒だったはず。
「リノさん、エリウスは? 私には双子の弟がいたはずです」
私の瞳をじっと見つめ返していたリノさんは、視線を外し俯きました。
「リノさん……?」
「……私は」
しばらく黙ったまま俯いていたリノさんは、ようやく重い口を開きました。
「ジーザス王にあなたとエリウス王子を頼まれたの……。ニュアージュが湖の底に沈みゆく直前に、傷つき気を失っているあなた達を王と王妃からたくされた……」
リノさんの瞳に涙が浮かび、細い肩が震えていました。
「私は命がけであなた達を守ろうとした……けれど、魔物は容赦なく襲いかかってきて、いつしか三人ともはぐれてしまったわ……」
「リノさん、エリウスは? 彼はどこに行ってしまったの?」
リノさんは辛そうに首を横に振りました。リノさんにも分からないはず、私の記憶は奪われリノさんも命からがら逃げ延びたのでしょう。でも、私はエリウスがどうなったのか知りたいのです。私のたった一人の家族。
「エリウス王子は深い傷を負っていたから、私も気がかりで……。しばらくあなたとエリウス王子を探し回ったけれど、結局見付からなかった……」
「……」
背中の刻印がズキンと痛みました。リノさんにもある刻印。ニュアージュの者には、きっとみんな刻印があるのでしょう。エリウスにもあるはずです。生きているのか死んでしまったのかも分からない双子の弟。彼は一体どこにいるのでしょう? もし叶うのなら、彼に会いたい。私は心の中で強く願いました。
今回執筆致しました、春野天使です。
スーの記憶もようやく戻ってきましたね! 物語もいよいよクライマックスへ突入〜。一時はどうなるかと思いましたが、なんとか完結出来そうで良かったです。(^^)




