表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶への旅   作者: gOver
45/55

第45話 青空を飛んで

 私はホテルの部屋で一夜を明かしました。ケビンさんのこと、レイラさんのこと、ロックさんのこと、そして、夢で見たあの都……。

 気にかかることがたくさんありましたが、その日の疲れがどっと押し寄せいつの間にか眠っていました。

 翌日。

 ほのかに香る甘い香りと淡い光の中、私は眠りから覚めました。夢を見ることもなく深く眠っていた私は、とてもすがすがしい気分で朝を迎えました。白いレースのカーテンから朝の光が降りそそいでいます。お祭り最後の日の今日も、天気は良いみたいです。

 私は身を起こし、大きく伸びをしました。今日は、初めて箒乗りの大道芸に参加出来ます。上手く飛べるかどうか少し不安ですが、それよりも皆と箒の曲芸が出来ると思うと、嬉しくて胸がワクワクしてきます。

「あ、あの花は……」

 ふと、ベッドの横のテーブルに目を向けた私は、白い花が花瓶に活けられているのに気付きました。甘い香りの正体は、マリエの花でした。

 きっと、レイラさんが活けてくれたのでしょう。私がマリエの花に見入っていると、部屋を勢いよくノックする音がしました。

「はい!」

 私はベッドから飛び起きて、ドアを少し開きます。

「おはよう! スー! 気分はどう?」

 ドアの向こうに、元気なノールとサーラが立っていました。

「お兄ちゃん、スーはまだ着替えてないのよ。入っちゃダメ!」

 おませなサーラは、部屋に入ろうとするノールの腕を掴んでそう言いました。

「おはよう、ノール、サーラ」

 私はクスリと笑い、二人の顔を交互に見ました。

「わたし達、スーを迎えに来たの。今日はスーも一緒に曲芸が出来るのよね!」

「ええ、ちょっと不安だけど頑張るわ」

「スーなら大丈夫だよ!」

 ドアの後の方から、ノールが大きな声で言いました。

「ロビーで待ってるから、着替えたら下りてきてね」

「分かった。なるべく早く行くわ」

 明るい兄妹の顔を見て、私は元気が出てきました。今はお祭りと箒乗りのことだけを考えよう、私は自分に言い聞かせました。



 着替えを済ませ、軽い食事を摂った後、私はノールとサーラと箒に乗り、お祭りの行われている広場へ飛んでいきました。

 今日も広場は人々で賑わっています。お祭り最終日の今日は、特に人出が多いかもしれません。広場で他の皆と合流しました。ユフィさんも来ていました。

「スー、昨日みたいに飛べば良いわ。今日は風もないから、絶好の飛行日よりね」

 ユフィさんは私に笑顔を向けて言いました。

「肩の力を抜いて、リラックスして飛びなさいね」

「はい!」

 本番時間が近づき、緊張気味の私にユフィさんはそう言ってくれました。いつもどおり、箒に乗ることを楽しめばいいんだわ。私は自分に言い聞かせます。

「スー、行くわよ」

 突然、リノさんが現れ、ボソッと私に言いました。

「え?」

「最初はノールとサーラが同時に飛んで、その後私とあなたが同時に飛ぶのよ」

 キョトンとしていた私に、リノさんが無表情な顔で言いました。

「あ、そうでしたね。ごめんなさい」

 リノさんはもう私の方を見ないで、先を歩いて行きます。

「リノさん」

 私は慌ててリノさんの後について行きました。



 いよいよ、箒乗りの曲芸の始まりです。人々の声援を受け、ノールとサーラが二人並んで、元気に飛行してきました。

 私とリノさんは無言で顔を見合わせ、同時に箒に乗って空に飛び立ちます。観衆の声援は、もっと大きくなっていきます。私はドキドキしながらも、リノさんと平行に箒に乗って空を飛びます。雲一つない真っ青な空。高度を上げるごとに、小さくなっていく人々の姿。私は風を切り、スピードを上げて空を駆けめぐります。何て気持ちいいんでしょう! 自然と笑みがこぼれてきます。

と、その時、広場の遥か向こう側。街を抜けた草原の隅に、何かが近づいて来るのが見えました。ひとかたまりになった何かが、次第に近づいてきます。

「あっ!」

 目を凝らして見ると、それは自転車乗りの集団でした。自転車に乗った人々が、ゆっくりと広場の方へ向かっています。

 

 

今回執筆させていただきました、春野天使です。

なかなか謎が解けません。(^^;)さらなる謎が深まってきそうです。自転車乗りの人達は悪人か善人かどちらでしょう!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ