第38話 ほのかな香り
手に触れると、マリエのほのかに甘い香りが漂ってきました。
「良い香りがするだろう? マリエの花は香水にしたりポプリにしたりするくらいだからね」
私を背負ったロックさんは、マリエの木を見上げて言いました。
「本当に良い香り」
私は手に触れた一つの花びらをそっと摘み取りました。
「ロックさん、重くなかったですか?」
私はマリエの花びらを手にして、ロックさんの背からピョンと飛び降ります。ロックさんは細いから、少しだけ心配でした。
「こう見えても体は鍛えているんだよ。箒乗りの曲芸も体力がいるからね。まぁ、シュールほどではないけどな」
ロックさんはそう言って笑います。シュールさんの筋肉質の逞しい体を思い出して、私もクスッと笑いました。
「そろそろお祭りに行かないとね。スーはユフィと練習するんだったね」
「はい、しっかり練習して私もお祭りの大道芸に参加したいです」
みんなと一緒に大道芸が出来たら楽しいだろうと思います。特にロックさんと一緒に箒で空を飛びたい、マリエの花びらを両手の平の中に包み私はそう願いました。
ロックさんと別れた後、私は箒乗りの練習をしに、町外れの広場に向かいました。私が着いた時にはユフィさんはもう来ていて、箒に乗って飛び回っていました。
「スー、遅かったわね。今日はみっちり練習するから覚悟しておいて」
ユフィさんが空中から声をかけます。
「早く空を飛んでごらんなさい。今日の空も気持ち良いわよ」
ユフィさんは笑いながら私に手を振りました。
「はい、お願いします」
私は自分の箒に飛び乗ると、ユフィさんの元まで飛んでいきました。お祭り二日目の空も澄み渡り気持ちの良い風が吹いてきます。町の方からは打ち上げ花火の音が鳴り響き、お祭りの開始を告げていました。ロックさんや皆も気持ち良く空を飛んでいることでしょう。
今回執筆させていただいた春野天使です。かなり順番が早く回ってきました。
話は短くてあまり先に進んでません。まだまだ終わりは見えてきませんね。今後の展開が楽しみです。