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記憶への旅   作者: gOver
28/55

第28話 水の都 ラウェス

 私は馬車に乗り込みました。ロックさんが私の元へ歩み寄り

「スー、具合のほうは大丈夫かい? よかったら馬車の中で次の町に着くまで

寝ているといいよ」

「有難うございます。ロックさん、そうさせていただきます」


 私は横たわりながらずっとリノさんの話してくれたことを考えたり、

湖の上で私の見たことのない空の魔物が何故かくもこうはっきりと私の頭のな

かに浮かんだのか? 私には判らないのです。「空の刻印」、この言葉がまた

私の脳裏をかすめると、鈍い痛みが襲ってきます。


「スー起きて。ラウェスの町が見えるよ」

 サーラのはしゃいだ無邪気な口調で私は目を覚ましました。

そうだ、あれから私は眠っていたんだ、私は起き上がり降りる支度を

しようとしました。


 馬車はラウェスの町に入り、町の中の大きな建物の前で止まりました。


 私が馬車から降りると、シュールさんとロックさんが話していました。


「この町ではここの宿舎に止まることに決定だな。まあ、俺の元いた

同業者のつてでここを紹介してもらい、とにかくここには好きなだけ

泊まっていいよなんて言ってくれたからな。どうだいお言葉に甘えて

っていうのかな、ここに一週間あたり泊まるっていうのはどうかな?」

「助かるよ。シュール」


 建物の中に入ると豪華な広々としたロビーがあり、人々の出入りが

多いのでしょうか、人々の話し声やざわめきが聞こえます。


 ロックさんが私の肩をポンと叩き

「スー、この町は初めてなんだろう?よかったら僕がこの町を案内するよ。

荷物のほうは僕が部屋に運んでおくから、スーはロビーでお茶でも飲んで

待ってなよ。僕はすぐ戻ってくるからね」


 ラウェスの町は広々とした大きな町です。

 ロックさんは最初に町を代表する聖ピエトロ大聖堂を案内してくれました。

 ロックさんが言うには今から400年前に建てられたということです。

 あの大きな荘厳さを持った大きなゴシック建築の建物には目を見張るばかりで

す。

 中へ入るときらめくステンドグラスが日の光を浴びて輝いている美しさには

息を呑むばかりです。


 大聖堂から外へ出ると

「この町は前にも言ったように水の都と呼ばれているだけあって、水、水路は

この町には大事な役割をしているんだよ。この町の半分は運河でできていて

この町の人はボートで町を行き来したりするんだよ。特に今日みたいな

天気のいい日はね。もちろん石畳でできた道もあるがね。この町の人々は

町を横断するときは水路を使い、メインストリートで買い物をするときは

石畳の道を使うんだよ。言うまでもないけどメインストリートのお店は

石畳の道に並んでいるからね。あと、この町は下水がいち早く発展していて

地下水道っていうのもこの町の下を迷路のように張り巡らされているんだよ」


 ロックさんはいろいろなところを案内してくれました。博物館や美術館、

織物工場まで、初めて見るものの面白さ、そしてロックさんと話しているのが

とても楽しくて、ついさっきまでもやもやしていた自分が嘘のようです。


 夕方、船着場へ着きました。輝かしいオレンジ色の夕日が町と水面を照らし

ています。夕日を見つめ立ち止まり、ふと私は思うのです。

 この広大な夕日を見つめていると、気分が大きくなってしまい、今、自分が

もやもやしているのは何なのかしら、なんて思ってしまいます。

 自分がどこから来たのか、それは大事なことです。それを知るために

 私は旅にでたのだから。でももやもやしても何も解決にはならないし、

こうやって旅をしていくうちにいろんな出会いがあるわけだから、

あせらずとも手がかりがつかめるんじゃないかしら。

 私の思いをさえぎるかのようにロックさんが話しかけてきました。


「スー、君が仲良くしていた女の子、フィオナっていったかな? 

彼女もきっと言ってたんじゃないかな。スーは笑った顔が一番だって」

「えっ?」私はロックさんのほうを向き

「……そうね。私が笑ったりすると『スーは笑顔が一番だよ』って

よく言ってたわ」

「そのとおりだと僕も思うよ。さあ、スーこれから宿舎に帰るけど、

途中メインストリートへよって食料の買出しへいくけど、スーも

運ぶのを手伝ってくれるかな?」

「はい、ロックさん」


 ロックさんは私がふさぎ込んでいたので心配して町を案内してくれたのかし

ら? 

 私はロックさんの優しさが身にしみるほど嬉しくなりました。


 私はロックさんの横を並んで歩き、メインストリートへと向かいました。





今回は、空の魔物や、スーの過去にはふれずに

ロックさんとスーのやり取りをメインに書かせていただきました。

これからも「記憶への旅」をよろしくお願いします。




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