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記憶への旅   作者: gOver
26/55

第26話 繋がる過去と想い

「リノさん……それは」

「そう、『空の刻印』。あなたにあるそれと同じもの。厳密に言えば違うものだけど」

 私にはまったく同じものにしか見えません。不気味な彩色を放つ刻印は、私のものより少し大きいようにも見えます。

「いつかは話さないといけないことだから、今のうちに話しておくわ。あの島にいた人たちは皆、この刻印を体に刻んでいるの。生まれた時から、ね」

「じゃあ、リノさんも……」

「ええ。私はかつて、あの島にいたわ」

 リノさんもニュアージュにいた?

「古い話よ」

 少しだけ目を細め、リノさんは淡々と話を続けました。

「さっき……見たのね」

「えっ?」

「ニュアージュの景色が見えたの。あの時の、空の魔物に襲われているときのものね」

 もう一度、私はその映像を思い出してみました。生き物なのかもわからない程の大きさが空を覆い、街にあるものすべてを破壊していきます。こちら側の攻撃はなにも効果を得ず、ただ自分たちが満足するためにそうしているようでした。

「私……もしかしたら」

 ここで、生まれた?

「それは違うわ」

 私の思考をリノさんの言葉が遮りました。

「あなたが考えていることは、ここではないの」

 ここではない。リノさんがそう断言することに、疑問は尽きません。

 それ以上に、どうしてリノさんは私の思ったことがわかったのでしょうか。口にも出していないことが、どうして彼女に伝わったのでしょうか。

「リノさん……」

「あなた、わかりやすいのよ」

 そう言うと、彼女は馬車から離れていきました。

 いくらわかりやすくても、あまりに的を射ていたリノさんの言葉はまるでそう、私の心がリノさんに見られているような気がしました。いえ、“見られている”よりも“繋がっている”ような感覚です。

「リノさん!」

 私の声でリノさんの歩みが止まりました。

 それは聞いてはいけないことなのかもしれません。けれどここで聞かないと、もう二度と聞けないように思えたのです。

「リノさんは、ニュアージュ出身なんですか?」

 それが面白かったのか、リノさんは小さく表情を変えました。まだ一度も見たことのない、穏やかな表情です。

「忘れたわ」

 それ以上聞くことを拒むかのように、彼女は私から離れていきました。




26話を執筆したハギです。

しばらく順番はまわってこないだろうと思っていましたが、予想以上に回転が早く驚いています(^^; 物語はひとつの転機に差し掛かったと思いますので、ぜひ続きを楽しみに待ってて下さい。


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