第25話 空の刻印
ズキン、突然私の背中が痛みました。
あの『空の刻印』がある辺りです。それは、何かで刺されたような鋭い痛みでした。今まで何度か『空の刻印』が疼いたことはありますが、こんな激しい痛みは初めてです。
ズキ、ズキッ!私の顔は苦痛で歪みました。箒のバランスが崩れ、箒が大きく傾きました。
「……スー?」
チラリと私の方を見たリノさんと目が合いました。深く澄んだ青い瞳。あの青い瞳を私はどこかで見た記憶があります。どこだったでしょうか? 私が記憶をたどり思い出そうとした時、また刻印が激しく痛みました。あまりの痛みに意識を失いかけた時、私の頭の中に恐ろしく不気味な『空の魔物』の姿が現れたのです。
『空の魔物』なんて今まで見たこともありません。『ニュアージュ』という幻の都のことも知らないはずです。それなのに、私の頭には鮮明に『空の魔物』の姿が浮かんできたのです。巨大で恐ろしい『空の魔物』……私はその姿を見たことがある……薄れゆく記憶の中で、私は確信しました。逃げまどう人々、倒壊する建物、悲鳴、混乱、……確かな記憶があります。私はかつて『ニュアージュ』にいた……
「スー!!」
リノさんの声。誰かに受けとめられる感触を遠く感じながら、私は意識を失っていきました。
目覚めた時、私は馬車の中で横になっていました。
「気がついた?……」
私の側にはリノさんがいました。背中の痛みはもうなくなっています。私はゆっくりと身を起こしました。
「『空の刻印』が痛んだのでしょう?」
リノさんは私を見つめ表情を変えないまま静かに口を開きました。
「?……何故分かるのですか?」
リノさんは何も言わないで自分の左手首を見せ、金色のブレスレッドを静かに外しました。
「あっ?!……」
私は思わず叫びました。ブレスレッドを外したリノさんの左手首には、私と同じ『空の刻印』の小さな印があったのです。
今回執筆させていただいた春野天使です。
様々な都合により、現在執筆メンバーが減って順番が早く回ってきますが…(^^;)完結にむけて頑張っていきましょう。徐々に謎がとけかけてきましたね!