第22話 空の魔物の沈む湖
リノさんは、悲しそうな、そうでもないような、感情の読み取れない目をしていま
し た。
――リノさんが残した……、なに?
私がシュールさんの言った事を考えているうちに、リノさんは言いました。
「……戻りましょう」
「あ、はい……」
まだまだ煮え切らない気持ちだったのですが、私は立ち上がりました。完璧に目の
覚めていない二人を、緑色の洋館まで運ばなければなりません。目が覚めるまで待っ
ていてもいいのですが、皆が心配していたし……。
「行こうよ、スー」
気付けば、ノールもサーラもリノさんも、皆少し先へ行ってしまっていたのです。
「あ、うん……っ」
帰ってみると、他の人たちが浮かない顔で待っていました。難しい顔で皆何かを話
しています。多分、リノさんたちの事です。
私たちが歩いていくと、それにテックスさんが気付きました。
「リノ……」
なぜか呟くように、リノさんの名前を呼びました。当のリノさんはと言うと、何も
答えませんでした。
「まぁ、サーラ! ノール!」
続いてシーラさんが叫ぶように子供たちの名前を呼びます。
それに皆も振り向きました。
「良かった、皆無事だったんだな……」
テックスさんが言います。
「全く、リノもノールもサーラも、どこへ行っていたの。それに、3人とも何とも無
い? 怪我とかしてない?」
「ちょっと眠いかな……」
と、ロックさんが言います。その言葉に、テックスさんが少し眉をひそめた気がし
たのですが、気のせいだったかもしれません。
「さあ、3人とも見つかったし、皆中へ入ろう。オトーヌさん、どうもご迷惑
を……」
「いいえ。皆無事でよかったわ」
ぞろぞろと中へ入ります。最後の方に、私。全員入るまでテックスさんは外にいま
した。
そのとき、テックスさんはこう呟いていました。
「そうか……空の魔物の沈む湖か……」
だけど、私は気付かなかったのです。気付いたのは、多分私の隣のリノさんだけだ
ったのでしょう。
中へ入ってから、私たちは部屋へ戻りました。
私が部屋で少し考え事をしていると、サーラが部屋へやってきました。
「あと30分くらいしたら、出発だって。準備が出来たら、玄関に来てね」
「分かったわ。……ねえ、サーラ」
「ん? なあに、スー」
「聞きたい事があるんだけど、いいかな」
「いいわよー。知ってる事なら、答えてあげる」
そう言ってサーラは私が座っているベッドの前に、ちょこんと正座しました。
私はこんな無邪気な子供に、聞いていいのか少し迷ってしまいました。
「あのね……さっき、森でなにをしていたの? その……リノさんと一緒にって事な
んだけど」
さすがにこの問いにはサーラも、表情を変えました。
「ん、とね……」
それでも彼女は答えてくれそうでした。だけど、その答えを聞くことは出来ません
でした。
「サーラ、用がすんだらおいで」
リノさんでした。
「あ、うん……今行く」
そう言ってサーラは立ち上がりました。
一度振り向いて、私に言いました。
「……ごめんね、スー。また、いつかね」
「うん……」
辛うじて笑顔を取り繕いましたが、私の中ではもやもやが残っていました。
それに、何となく分かっていました。
サーラの言っていた、「いつか」が来ないかもしれない事……。
22話執筆を担当しました、菫です。
もう20話超え!!びっくりです。この物語、謎が増えるばかりで、一体どうなるのや
ら。
この話でも全然解消されていない……。
大変っす。空の魔物とか、ワケ分からん^^;
と、とりあえず……これからもよろしくお付き合いお願いします。