第21話 積み重なる秘密と謎
「ロックさん! シュールさん!」
これで何度目になるか、私自身も覚えていません。いくら私が揺すっても二人が目覚める気配はありません。
二人の安らかな吐息が、静まり返った森の中に響きます。あんなに高かった太陽も、かなり低い場所にあります。
誰か助けを呼びに行こうかとも考えましたが、この森にどんな生き物がいるかわかりません。二人を置いたままではどこかに行くこともできませんし、二人を箒に乗せて飛ぶことも至難の技だと容易に想像できました。
「あなた、どうしてここに?」
聞き覚えのある声。振り返るとそこには、
「リノさん!」
リノさんだけではありません。
「あっ、スー!」
「スーだスーだ!」
ノールとサーラがその後ろにいました。
「良かった。二人とも無事だったのね」
特に怪我をした様子もなく、二人はいつも通りの元気なノールとサーラでした。
「急にいなくなったりして、みんな心配したんだよ」
「大丈夫です!」
「ずっとリノと一緒だったしねー」
「えっ!?」
ずっと、一緒だった?
「ノール」
「あっ!」
ノールは口を押さえたまま黙ってしまいました。
「森の中で二人に会って、帰ろうとしていたところなの」
「そう、ですか」
みんなが見つかって安心したいのに、心のどこかが不安で仕方ありません。どうして急にいなくなったりして……。
「あれ? ロックさんとシュールさん寝ちゃってるよ」
ノールとサーラがすっかり眠ってしまった二人のそばでしゃがんでいました。
「この湖の水を飲んだ途端に眠ってしまって。どうしたらいいのか、わからないの」
もうすぐ日が暮れようとしていました。このままでは一晩を森ですごさなければいけない、と考えていた時でした。
「みっともない」
私にしか聞こえないくらい、小さく呟くリノさん。リノさんはポケットからなにかを取り出して、二人に飲ませました。
「リノさん、それ……?」
「無理に眠らせるものがあるなら、無理に起こすものもあるの。これはそのひとつ」
膝についた砂や草を払い、彼女は立ち上がりました。
「ん、……リノ、か?」
すぐにロックさんが体をあげて、続いてシュールさんも目を覚ましました。そして、
「君は、どうしてここに?」
「シュールさん?」
「そう、か。君が、残した……必ず、守る」
まだ寝ぼけているのでしょうか、シュールさんはリノさんを見ながらそんなことを言いました。一体シュールさんは何を言いたかったのでしょうか。
はるか遠くでゆっくりと沈む日が、広大な湖に揺れていました。
今回が三度目の執筆になるハギです。
かなり複雑になってきた「記憶への旅」ですが、全てを消化するのは一体いつかと考えると恐ろしくなる今日この頃です。それはそれで楽しそうですが(^-^)
それではこれからも「記憶への旅」をよろしくお願いしますねm(__)m