第16話 新鮮な一日
私にとって、馬車での旅はもちろん、テックスさんたち一団との旅は、新鮮そのもの
でした。
水の都・ラウェスへ向けて出発した日。
しばらく走ると海が見えてきました。私が住んでいたところから、こんなに海が近い
なんて、大発見。でも、朝早くに出発したのにも関わらず、もうすでに日が暮れ始め
ていました。
「お、いたいた」
手綱を握っていたシュールさんが何かを見つけて言いました。顔を出して見てみる
と、シュールさんの目線の先ではサーラとノールが箒を片手に手を振っていました。
二人は私を見つけると、嬉しそうにこちらへ駆けてきました。
「スー!」
「わーい、スーだ!」
私と二人が楽しくおしゃべりしていると、テックスさんが馬車から降りてきて言いま
した。
「サーラ、ノール。宿は見つかったか?」
「ばっちり!」
ノールが右腕を突き出し、親指を立てて誇らしげにいいました。
「あっちよ!」
サーラが子供らしいすばしっこい動作で箒に飛び乗り、馬車を先導しはじめました。
「宿って?」
私は馬車のすぐ横を箒に乗ってついてくるノールに訪ねました。
「近い街なら一日でいけるけど、ここからラウェスまではもう一日か半日かかるか
ら、一度泊まらなくちゃいけないんだ。先回りして宿を探すのが、僕とサーラの仕事
だよ。まぁ、無い時は仕方ないけど」
「宿が無い時もあるの? そのときはどうするの?」
「そりゃあ……野宿だね」
「へぇ……」
私は、野宿を怖がるどころか、楽しみになってしまいました。私って変かな?
「あ、あそこだよ」
ノールが指で指した先には、つたが絡まって緑色になった洋館がありました。
「あれって……民家じゃないの?」
「そうだよ。一人暮らしのおばあさんがいて、部屋が一杯あるからどうぞだって」
そのノールの言葉は、私だけじゃなくて他のロックさんや、テックスさん、シーラさ
んも聞いているようでした。でも、やっぱりリノさんは分かりません。いつも同じ場
所を見つめているように見えます。
「へー。気前のいい人じゃないか」
「僕らだけじゃないらしいよ。もう一団体泊まりにきてるみたい。自転車が一杯あっ
たし」
(自転車で旅してる人たちもいるのね……)
2度目の新しい出会いと、初体験ばかりの一日の締めくくりに、私の胸は自然と躍っ
ていました。
第16話の執筆を担当させていただきました、菫ですっ。
気がつけばもうすでに10話突破しているのですねー♪嬉しい限りです。
大地震の起きたパキスタンでは、現在も救出活動が行われているようです。
彼らのためにできる事って、ないのでしょうか。私はただただ、少しでも早い復興を祈るばかりです。
では、雑談入ってすみません^^;失礼します。
これからも「記憶への旅」にお付き合いくださいませvv