第15話 別れ、そして
馬車の中にはテックスさんとシーラさんが並んで、そしてリノさんがその向かいに座っていました。馬車の手綱はロックさんとシュールさんが握っています。
「いいのかい?」
声はシュールさんのものです。
「はい、お別れは昨日しましたから」
「そうか」
私がリノさんの横に座ると、
「じゃあ行こうか」
ロックさんの掛け声と共に、馬車はゆっくりと動き出しました。
「スー!」
寝ていたはずのフィオナが、そこにいました。
「フィオナ、行ってきます! 必ず帰って来るから!」
馬車から体を半分乗り出して、私はできる限り大きな声をあげました。
「スー! 待ってるから、いつでも帰っておいで!」
フィオナ。大切な、私にとって大切な友達で、大切な姉妹。いつでも優しくて明るい、お姉ちゃんのような存在。
「うん! 絶対帰ってくるから、また会おうね! 元気でね!!」
私達の声は澄み切った空に吸い込まれ、やがて消えました。それでもみんなを忘れないように、ずっと遠くで小さくなったフィオナに、見えなくなってもずっとずっと手を振っていました。
「大丈夫かい?」
シュールさんが馬車の中を覗きながら、心配そうに声をかけてくれました。
「……はい」
「心配しなくても、ちゃんと戻って来るよ。たまには顔を出すようにジーナおばあさんからも言われてるしね」
私の返事を聞くと、シュールさんは笑顔を見せて、私に背を向けました。
「さて、これからのことだけども」
しばらくして、テックスさんが口を開きました。
「まずはここから二日ほど南に行った街に向かおうと思う。そこで情報を集めてから今後の行き先を決めよう」
「南の街、ですか?」
南の街。村から一度も出たことのない私にとっては、本当に未知の世界です。
「……ラウェス」
「えっ?」
「水の都、ラウェス。これから行く街の名前よ」
呟くように言うリノさん。
「とりあえずラウェスに行く、ってことでいいか?」
「はい!」
馬車はさらに速度をあげて、南の街・ラウェスへと向かいました。
今回が二度目の執筆になるハギです。久しぶりにシュールさんが登場しましたが、覚えていますでしょうか?
ついに旅が始まりましたが、いきなり目的地を決めてしまいましたf^_^; ラウェスの意味、わかりますかね?私が作った造語なので、わかる人はいないかもしれないですね(^_^;)これからどうなるのか、書いている側もわかりません(笑)ぜひスー達の旅と同行していただけると嬉しいです。