魔力が尽きるまであと5分。なのに師匠が老後と換気の話しかしてくれない件2
前回の続き(?)です。コメディを練習したなら、シリアスも練習した方が良いと師匠に言われたので。
こんな愉快老獪な師匠が欲しい人生でした。
「師匠、この結界、なんか揺れてませんか?」
「結界も流行り、廃りが大事じゃからのぉ……。町で流行っとるダンスという奴かのぉ」
「踊る結界なんて流行りませんよ!? っていうか熱ぅ! 穴まで空いてるじゃないですか!」
「換気用の空気穴じゃ」
「いや、この前魔力節約で穴空けてるつってたじゃねぇか! そっから外に居る炎の蛇《パイロスネーク》のブレスが漏れてきてるんですよ! 塞いでください!」
「ダメじゃったかのぉ、ワシの最新作、波打つ空気循環方式の結界は……」
「結界魔法で間違った方向に創意工夫に富まないでください! 命がかかってるんです!」
「で、どうするんですかこれ! 今回は火炎魔法で焼き尽くすとか無理ですよ!?」
「なぜじゃ?」
「相手が炎の蛇だからですよ! こいつらもう燃えてんですよ!」
「既に燃えておる物がこれ以上燃えんというのは、決めつけじゃ。その視野の狭さはお前の成長の幅を狭めてしまうじゃろう……」
「た、確かにその通りです、師匠。ボクには大した欠点という欠点がないのが欠点でしたが、これからは視野の狭さを欠点だと自覚します」
「え、その驕りもだいぶん欠点なんじゃけど……」
「とはいえ師匠、あいつらの火力はボクが最も得意としている火炎魔法を凌駕しています。とてもボクのチカラで燃やせるとは思えないのですが……」
「お主に話しておくべきことがある」
「え、その話いま必要ですか? 炎の蛇のブレスで結界がグワングワンしてる今必要な話ですか!?」
「そうじゃ、いま話しておかねばならん。ワシがなぜお前を毎度窮地においやっておるのか」
「……ワザとやってたんですか」
「若いころ、エルフほどの魔法の才と謳われたワシも、寿命は所詮ひとなみじゃ。成せたことも多かれど、まだやり遂げられんことも多くある」
「きゅ、急になんの話ですか……」
「聞け。老い先短いワシに師事したいとお前が申し出たとき、ワシは決心したんじゃ。この未来ある少年に、ワシの分も託そう、とな」
「……」
「人は偉大な師に師事することで大きく成長出来ることもあろう。じゃが、人にとっての最大の師とは――『時間』じゃ」
「待ってください師匠! 何かあるはずです! まだ何か方法が!」
「タネアカシをしてしまえばこの修行の意味もそこまでじゃ、もうお主が得られる物は何もなかろうて」
「待ってください! そんな……いきなりすぎます! まだ教えてもらいたいことが山ほどあるのに……!」
「よいか? 地上に戻っても、鍛錬を怠るなよ?」
「嫌です師匠! こんなの……あんまりです!」
「約束してくれ……」
「……」
「よいな?」
「……はい。必ず師匠を超える魔法使いとなります」
「よいぞ、その意気じゃ。では、転送を開始する」
「……師匠、ありがとうございました」
「ホッホッホッホッホ、礼には及ばんよ」
*
「地上の光だ……。本当に、戻ってきてしまったんだ……」
「こんな魔法があるなら、もっと早くに教えてくださいよ、師匠……。こんな魔法があると知っていたなら、ボクは……」
「いや、じゃって、これ知っとったらお主すぐに逃げようとするじゃろうて」
「えっ!? 師匠!?」
「え?」
「な……え? どうしてここに!?」
「え、もしかしてお主、一人で地上に戻ろうとしとったの?」
「え、だって、なんか雰囲気的にそんな感じが……」
「えぇ……」
「く、クソボケアホジジイィィィィ!!!」
シリアスってなんだっけ。




