6-1 運は使うても減らんのや、使えば使うほどより強大な運がよってくんのやで
五月祭の効果もあってか音和のネット再生回数は少しずつ実績を積みあげている。
伝説のバント『ピテトロ』の『大将』のコネもあり、ライブハウスに呼ばれることも増えた。
夏休みを迎え、浩太の就職活動も本格化してきたそんなある日だった。
「なあ、浩太。メッチャしつこい書き込みがあってな。消してもいいやろか」
「どれどれ、下手に消すと炎上するかもしれないから俺が見てやる」
浩太は音和の頭にくっつくくらいの距離でパソコン画面をのぞき込む。
「くっ。ただの英語なだけやろ」
へへへと笑う音和。内容を確認する前に浩太の頭にはとある疑問が浮かんだ。
「あのー、音和。音和の曲に英語のサビとか見たことないんだけど、音和はシンガーソングライターでロッカーであらせますよね」
途端に正座して「くうっ」なんて可愛らしい声を上げて瞳をウルウルさせる音和。騙されるもんか。
「音和さん。どうなんですか。恥ずかしいとは思わないんですか」
突き放すような丁寧語で詰め寄る浩太。デデデと奇妙な擬音を発して後ずさる音和。
「だって、中学も高校もろくに行っとらんかったから」
頭の中で音和の経歴に『英語がダメな残念シンガーソングライター』と黒歴史をタイピングする浩太。
「こんど英語の作詞に英語を加えたくなったら頼ってくれ」
「はい!教官殿」
二十四歳、星野音和。そんなんで良いのかと思ったが久しぶりにマウントをとった浩太はまんざらでもなかった。
「メール送ったって、何度も書いてあるな。どれどれ」
浩太は慣れた手つきで英語のメールを開封する。
「で、どれどれ。んん?嘘!はあ?はえぇーー」
尻もちをついてデデデと奇妙な擬音を発して後ずさる浩太。
「どったんや、浩太」
「海外大手配信サイトから、ドラマ挿入歌の作成依頼が来てるぞ」
「そーなん、それで消して良いんか……。んん?嘘!はあ?はえぇーー」
尻もちをついてデデデと奇妙な擬音を発して後ずさる音和。
ポンコツ夫婦の夫婦漫才みたいなコンビだった。
「ど、ど、ど、どうすっぺ」
どこの方言だよ!と突っ込みを入れたくなるが、話が進まないのでグッと飲み込む。
「ネット限定みたいだし、ギャラは千ドル、日本円で十五万円ってとこだ。正直、ショボいが日本語ドラマらしい。どうする?」
「やるっ!チャンスはなんでも食らいつくんが運を引きよせるんやで」
でた、科学的根拠ゼロの音和理論。
「運は使うても減らんのや、使えば使うほどより強大な運がよってくんのやで」
どや顔で腕を腰に当て、赤いジャージ姿で仁王立ちする音和。
まったくもって意味不明だが、浩太は頭の中の音和名言集に書き足した。最近はこの作業が浩太のライフワークになっている。
「英語で打ち合わせだったらどうする」
再び尻もちをついてデデデと奇妙な擬音を発して後ずさる音和。
「いいよ。おそらくテレビ会議だから俺も参加してやるから」
お金と納期の絡む最初だけアメリカ人のプロデューサーだったが、二回目以降は全員が日本人スタッフだったので和気あいあいと話が進む。
音和の人たらし力が爆裂し、それを楽しむ浩太だった。
曲名は『洗濯機に放り込む恋の記憶』、ドラマの脚本にも完全マッチした内容だった。
『ピテトロ』全面協力の元、僅か三日でしあがった。
コミカルでシニカル、それでいてセンチメンタル。音和節もしっかり効いていて、なにより声がいい。
デモを聞きながら音和の才能にあらためて驚愕するとともに、質とスピードが武器になると感じた浩太だった。
【歌詞公開】『洗濯機に放り込む恋の記憶』
ブクブクしてさ、ジャブジャブしてさ…
結局クルクル回って、勝手に消えてくモンやしな…
君との思い出の服、まとめてぜんぶ
洗濯機にポイって放り込んだったわ
出会った日のドキドキも
ちょい伸びた時間も、別れの空気もさ
まぁもう全部セットでええやんって
染料がじわっと滲んで ぐるんぐるんして
気づいたらなんか灰色になってくし
白い泡がわーって弾けて
あ、私もついでに生まれ変わられへんかなって思ってさ
どうでもいいよ 悲しいとか今さら言わへんし
逆立ちしてテレビつけたら
世界も私もついでに逆さになってて
涙なんて場所なくして 迷子になってもうたわ
君とお揃いやったあのシャツもさ
物干し竿でしょんぼり垂れてて ちょっと笑った
土砂降りの雨がドンドン叩いてて
もう二度と袖 通すこともないやろなーって思ったわ
新しいシャツをネットで探しとったら
色あせた記憶まで勝手に出てきてさ
胸んとこに残った深いシワなんて
アイロンでも無理なやつやん、って腹括った
洗剤でも消えへん匂いだけ
あの時のまんま ちゃんと残ってる
もう気にせえへんよ 大丈夫
ただアホみたいな夢やっただけやし
どうでもいいよ 泣くほどじゃないんやし
逆立ちのままテレビつけっぱでぼーっとしてたら
世界も私もひっくり返ったままで
涙なんて場所なくして 迷子になってもうたわ
ブクブクして ジャブジャブして
クルクル回って消えてくんやろ、どうせ
洗濯機に放り込んだ恋の記憶も
ハチャメチャすぎて 笑えてきたわ、もう
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<次回予告>
6-2 ピンチヒッターはホームラン打つんが基本やで
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<YouTubeで音和生歌を公開>
音和だよ!ついに来たで。あと三曲でしまいや。噛み締め取ってやー。
音和のプライベート写真も使っとるで。楽しんどってな。ほな!
YouTubeアドレス:https://youtu.be/0iDu7xBnYXY
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作者より:
新しい創作の形として、自作の歌詞をAIで曲にしてみました。
苦手な方はスルーしていただいても、小説本編には全く影響ありません。
作品の奥行きを感じたい方は、ぜひ聴いてみてください。
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音和セカンドアルバム『SOU 蒼・颯・創』収録予定曲から本日の「おまけ」です。
音和(TOWA) - 平凡って笑うんじゃねえよ
YouTubeアドレス:https://youtu.be/JDhcE_2KYAY




