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隣に住む女の子の壁越しの生歌に泣けて郵便受けに「リアル投げ銭」してしまいました。  作者: 坂井ひいろ


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5-5 夢みたいなおぼろげな時間が曲となって流れていく

浩太と音和は二人、音和の部屋がある方の壁に背中を預けて並んでシングルベッドに座っていた。


「じゃ、スイッチ入れるよ」


浩太がパソコンに向けてスイッチを入れると音和の新曲『真夏の深海魚』が流れ始める。


あの日の翌日から一週間丸まる二人は浩太の部屋で過ごした。


どこへも出かけず、二人っきりで、寄り添った。


外はあっという間に真夏の様相を呈し、セミのがせわしなく鳴り響く。


そんな世界から隔離するように、窓を締め、カーテンをきつく閉じた。


石油スドープを押し入れにしまい、エアコンを全開にして一枚の毛布を被って二人でくっ付く。


浩太は昔のアルバムを取り出し、生まれてからの全てのエピソードを隠すことなく音和に語った。


なんとなく音和の過去だけを彼女の曲を通して知るのが不公平に思えたからだ。


退屈な話でも音和は嬉しそうに聞いてくれる。それが愛おしかった。


「浩太。私な、親、おらんのや。小学校最後の年に交通事故であっさり逝ってもうた」


「……」


「それから大阪の親戚んちに預けられて『早よ、大人ンなりたい』って思っとった」


「……」


「だから、中学も高校も荒れとった。最初は大阪の言葉、よう話せんし、友達もおらんし」


「……」


「寄ってくるのは悪い男ばっかやったなー」


音和はどこか遠くを見つ目をした。


「私、自分て言うのもなんだけどメチャ可愛かったからな。あっ早苗ちゃんや。この頃から綺麗やったんやな」


高校のアルバムのページをめくる手を止めて早苗さんの写真を指でなぞる。


「まあ、私の方が数段可愛いいんやけどな」


浩太は音和の手を握ってそれに答える。


「早苗ちゃんの彼氏、悪い男じゃなくて良かったな。浩太に似てたんやってな。早苗ちゃんも相変わらず趣味悪いんちゃうか」


浩太は音和の手をつねってそれに答える。


「痛たたた。なにすんねん。この暴力男」


毛布の中でパシッと右手を叩き返されるが、初めて人を殴った右こぶしの痛みはとっくに癒えていた。


「あんなー、私、荒れてたん、高校卒業するまでやねん。そっから逃げるように東京来て。隣の部屋で六年間引きこもりや」


「……」


「んでな。男の人とはいろいろ付き合ったけど、最後までいったことないねん」


「……」


「ほら、中高生に手を出すと、警察も世間もうるさいし。そんな根性なしの弱い男ばっかやった」


「……」


「なんや、寝ムなって来たな。浩太、あったかいし……ちょっと寝るわ……」


すやすやと眠る音和の寝顔は信じられた。


一週間だらだらと過ごすと音和は前の音和に戻っていた。


今、夢みたいなおぼろげな時間が曲となって流れていく。


【歌詞公開】『真夏の深海魚』


エアコンの冷気 ちょっと冷たく乾いててさ

君の腕 つい勝手に探してしまう

カーテン閉めたら 世界ごと消えたみたいや

外の元気なんて 今日はほっといてええよ


深海魚が赤い理由 知ってんでって言ったら

君が「また急にどうしたん」て笑うやん

光届かへんとこやからやって

この部屋もゆらゆら 深いとこに沈むみたいや


真夏の深淵で だらだら並んで寝転んで

水底の砂に ふたりそっと根を下ろすみたい

ああ、なんか好きやなぁって思ってしまって

そういうの隠すの めっちゃ下手なんよ、わたし


深い潮の流れに しらずに流されそうで

泣きそうになるけど

君の手が先に わたしをすくい上げてくれるから

「大丈夫?」なんて言わんでもええねん

その優しさだけ 胸に置いとくわ


エアコンの冷気 ちょっと冷たく乾いててさ

君の腕 つい勝手に探してしまう

カーテン閉めたら 世界ごと消えたみたいや

外の元気なんて 今日はほっといてええよ


深海魚はさ 光に出会うんを怖がらへんねんて

わたしらも もうちょいだけ勇気あったらええのにな

この静けさが ふたりの宝もんになりますように

真夏の海で もうちょっとだけ君を感じていたいんや


深海魚は光を恐れへんねんって

わたしもいつか そんなふうになれたらええなぁ

君とおった夏の静けさ

それだけで 十分なんやわ



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<次回予告>

6-1 運は使うても減らんのや、使えば使うほどより強大な運がよってくんのやで

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<YouTubeで音和生歌を公開>

音和だよ!聴け。今しか聞けない痛みは静かな力になるんやで。


YouTubeアドレス:https://youtu.be/hodpKwgFwlE


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作者より:

新しい創作の形として、自作の歌詞をAIで曲にしてみました。

苦手な方はスルーしていただいても、小説本編には全く影響ありません。

作品の奥行きを感じたい方は、ぜひ聴いてみてください。

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音和セカンドアルバム『SOU 蒼・颯・創』収録予定曲から本日の「おまけ」です。

音和(TOWA) - 夏の香り

YouTubeアドレス:https://youtu.be/gY3JExPAdIk


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