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隣に住む女の子の壁越しの生歌に泣けて郵便受けに「リアル投げ銭」してしまいました。  作者: 坂井ひいろ


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5-4 最初のキスは血の味に染まる

浩太は街をさ迷い気が付けば結局、早苗さんのアパートにたどり着いていた。


日はとっくに落ち、早苗さんの部屋には、ピンクの花柄のカーテン越しに明かりが灯っている。


玄関前で男女の言い争う声が聞こえる。


陽斗はると、お願いだから帰って。しばらく一人でいたいの」


早苗さんが泣きながら訴えている。


「帰らない。絶対に帰らない。早苗が許してくれるまでは絶対に」


浩太と同じような背格好、ちょっと痩せ気味で頼りない感じの男。


男は感情に任せて早苗さん腕をつかみ力を込める。


「痛い!離して」


その声を聴いた浩太の中で何かがプツンと切れた。


気が付いたら男の頬をこぶしで殴っていた。


「浩太!」


早苗さんが名前を叫ぶ。


よろけかけた男は頬を押さえて浩太と対峙する。


「山本浩太……。お前だけには絶対に早苗は渡さない」


「……」


「東大なんだってな。いい気なもんだよ。たったそれだけで早苗の心に居座り続けやがって」


「……」


「最初はな、俺だって理解したつもりだったんだ。全部飲み込んだ上で早苗と付き合えている自分に誇りを持ったよ」


「……」


「だけど、時間が経てば経つほど許せなくなんだよ。あの、色の落ちたカーテンを見るたびに……、この苦しみが……」


目に涙を貯めながら男が浩太を殴り返す。浩太は避けるでもなく、はらいもせずボーっと立ったままそのこぶしを頬に受ける。


男は浩太の両腕を掴んだまま泣き崩れた。膝をついて、その腕を解いたのは早苗さんだった。


陽斗はるとごめん、私、陽斗のこと追い詰めてたんだ。ごめん」


「……」


「浩太、帰って。お願いだから音和さんのところに。きっと待っているはずだから」


「早苗……」


浩太が『早苗さん』を『早苗』と呼んだ最初で最後の瞬間だった。


初めて人を殴ったニブイ感覚、こぶしに残る燃えるような痛み。


初めて人に殴られた頬の刺すような痛み、口の中に広がる血の苦み。


それを抱えながら自分のアパートに帰ると浩太の部屋の明かりは点いてなかった。


代わりに音和さんの聞いたことのない曲がドア越しに漏れ聞こえている。


悲しく、切なく、今までで一番の激しい感情の爆発。


部屋の鍵差し込む手がもどかしい。ドアを閉める行為も靴を脱ぐことも忘れて中へと飛び込む。


音和さんが一人、パソコンの青い明かりに照らされてうなだれていた。


「浩太、戻って来たんか。そうか、聞かれちまったんやな。私、こんな女なんや。幻滅したやろ」


浩太は震える音和さんの後ろに覆いかぶさるかのように抱きついて座り、再生ボタンを静かに押した。


曲が終わると、音和さんの小さな体をきゅっと抱きしめて、黒髪にそっとキスを落とした。


「音和、大丈夫だよ。全部、ちゃんと受け取ったから」


そういって音和の向きを変え、唇を重ねた。


浩太の鉄の味が、音和の口へと伝わっていく。


むせび泣く音和の声だけが暗闇の部屋の中を満たしていく。



【歌詞公開】『手首の横に歯型つけたった』


薄明かりのキッチン きしむ床

足音消しても 気配だけは隠されへん


知らん女と遊んでたん わかってんねん

帰ってきたキミの その安もんの香りで全部や

「仕事やってん」て言い訳する顔

毛布にくるまって シラけたフリ

逆に 腹の奥がじわっと熱くなったんよ


首筋くんくん嗅いで じっと見つめて

「ほんまに後ろめたさ ないん?」

安っぽい香水だけ ふわり残ってて

ほんなら私が 上書きしたるわ


手首の横に 思いきり歯型つけたった

二度と隠されへん印を

悪さする手ぇには お仕置きや

うめく声さえ ちょっと可愛く見えてもうた


消えた小指の指輪 残る赤いくぼみ

あれは二人で揃えて買った 最初の誓いや

「同棲するし、これでええよな」って

ちょっと照れくさそうに笑った君

あの時の胸の跳ね方 まだ覚えてんのに


なのに今じゃ その小指すら隠して

私の目 まっすぐ見られへんのやな

せやけどもう隠されへんで 歯型やし

その痛みこそが 私のもんやねん


手首の横に 思いきり歯型つけたった

「なにすんねん!」て怒るキミに そのまま抱きついて

「私の胸の痛み、分けたったんや」

耳もとに息かけて にやりとほほ笑んだ


かじった跡に じんわり血滲んで

君の鼓動と一緒に脈打ってる

その震えごと 全部ほしいから

あかんって思っても やめられへんねん


手首の横に 思いきり歯型つけたった

これでしばらくは 右手で悪さできへんやろ

ほんまのキスは もうちょい後でええ

残った香りなんて 私が消したるわ


手首押さえて うめくキミに言うたんよ

「似合わん匂い つけて帰ってこんといて」

その歯型治るころに また噛むかもしれへん

君のハートにも そろそろ歯型つけさせてや



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<次回予告>

5-5 夢みたいなおぼろげな時間が曲となって流れていく

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<YouTubeで音和生歌を公開>

音和だよ!これもう黒歴史こえてデジタルタトゥーやで。でもええねん、これで。


YouTubeアドレス:https://youtu.be/ssLn1dkf2Rk


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作者より:

新しい創作の形として、自作の歌詞をAIで曲にしてみました。

苦手な方はスルーしていただいても、小説本編には全く影響ありません。

作品の奥行きを感じたい方は、ぜひ聴いてみてください。

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音和セカンドアルバム『SOU 蒼・颯・創』収録予定曲から本日の「おまけ」です。

音和(TOWA) - ほら、おいで

YouTubeアドレス:https://youtu.be/-ZwMFxmlmIQ


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