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隣に住む女の子の壁越しの生歌に泣けて郵便受けに「リアル投げ銭」してしまいました。  作者: 坂井ひいろ


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5-2 ロックに染みいる涙は岩をも溶かす、って話

夏休み前のテストも無事に突破し、アパートの洗面台に歯ブラシを入れたコップが一つ増えた。


他人が見たら同棲と思うんだろうな。音和さんはすっかりこの部屋の住人と化している。


自分の部屋に帰るときは「ほな、別荘かえって寝るわ」なんていたずらっぽく言って去る始末。どっちが本宅か分からない。


恋人でも何でもない大人の女性。でも、この半端さが愛おしいくもある。


「なぁー、浩太。そろそろ早苗さんとの傷はちゃんと癒えたんか」


脈絡ゼロで唐突に古傷をえぐってくるあたり、忌々しいが、それを含めて音和さんらしい。


『男は最初の女、女は最後の男』音和さんが以前語った言葉が胸を過る。


合鍵を置いてあった場所には、いつのまにかしっかりとフレームに収まった音和さんの寝顔写真が陣取っている。


ほぼ、子猫の写真と変わらない扱いで。早苗さんとの四年の歳月を上書きするかのように。


「忘れた」


浩太は引きつりながら短く答える。音和さんとの無駄に慌ただしい生活に救われているのも事実である。


ちなみに恋人に合鍵を渡すという浩太のロマンは、音和さんのカタツムリのカプセルトイに繋がれ、相棒と呼ばれているギターのケースにぶら下がっている。


「なぁ、音和さん。音和さんにとって俺って何なんだ」


するりと口をついて出た言葉に自分でも驚愕する。


「ワンコ」


即答で帰って来た一言。意味が分からない。まったくもって受け入れられない。人間扱いですらない。


「せやせや。新しい曲できたんやで。聞くやろ、ほれ」


差し出されたCDーRケースに書かれたタイトルは『ペット扱いすんなよ、って話』。


このタイミングでこれ出すか?危険な香りプンプンのはずなのに勝手に手が伸びる。


これはもう心理学のテストに出た『パブロフの犬』。条件反射で聞かずにはいられない。


CDーRを手に取り、パソコンに入れる。


どんな恐ろしい『毒』が鳴り響くかワクワクしている自分が信じられない。


しかし、流れてきた曲は前回の『ズルいわ、それ!』とは異なり、前向きで、今の音和さんが誕生した秘話みたいな物語だった。


くっそー、やられた。完全に期待を裏切ってきやがった。心に染みるだろこれ。


気が付いたら涙がこぼれていた。


泣き顔なんて、音和さんに晒したらマウント取られて言葉の嵐でボコボコにされる。


恐る恐る自然な動作を意識しながら慎重に指で涙を払い、ゆっくりと振り向いた。


いつもなら感想をこれでもかと迫ってくる音和さんが、浩太の安づくりのベッドで静かな寝息を立てている。


無防備すぎるその寝顔は安心しきった猫みたいで、浩太は音和さんの体にそっと毛布を掛けた。


初夏の日差しが窓越しで降り注ぎ、音和さんのフォトフレームをほほんわりと浮かび上がらせている。


【歌詞公開】『ペット扱いすんなよ、って話』


「ごめん、俺が悪かった」って

甘え顔で肩寄せてくるけど

そのペット扱いみたいな距離感に

もう、うんざりしてもうてん

私、髪撫でられるん もうホンマ無理やねん


ドライフードみたいに買い置きされた言葉

もう耳が受け付けへんくらいやし

タバコくさくて ペットですら逃げてくレベル

こぼれそうな涙だけ 袖でそっと拭ったら

「さよなら」って言う最後の準備

ようやく整った気がしたんよ


さよなら言うんは 今度は私からでええやろ

雨の日に出会った時の バスタオルのぬくもりも

じゃれ合った夜も 全部ほんま冷え切ってもうて

長すぎた “一人で待つ時間” だけが

背中押してくれとったんやと思う


冷めた瞳で 君の横顔ただ見てた

最後くらいは綺麗に終わらせたいし

郵便受けに鍵ほりこんだ瞬間

ちょっとだけ 背中に羽生えた気したわ


都合のいい優しさなんて もういらん

ほんまの自分で 生きてみたい

傷ついた日々ごと抱きしめたら

隠してた八重歯が ふっと伸びた気がした


歩道橋を一段飛ばしで登ったら

強さって戻ってくるもんやねんな

誰もおらん欄干に背中あずけたら

気づけば 新しい私がニヤリと笑ってた


さよなら言うんは やっぱり私からでええわ

出会った日々の全部が 無駄やなかったって思えたら

未来へちゃんと歩いていけるねん


弱さの奥に眠っとった自分が

少しずつ 確かさ求めて動き出す

孤独の夜も 越えていけるって

ほんのちょっとだけ信じられた


さよならの言葉が 感謝に変わっていく

心に残った笑顔は 消えたりせえへん

さよならを言うんは私から

自由な未来に向かって

ちゃんと歩き出すんや


ありがとう そしてさよなら

私は私で生きてくから

…なぁ、ほんまにもうペット扱いは卒業やねん



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<次回予告>

5-3 懲りない女の懲りない嘘は見栄張っても治らんのや

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<YouTubeで音和生歌を公開>

音和だよ!聴け。そしてなごめ。いい子いい子したったるで。


YouTubeアドレス:https://youtu.be/xHxEgnZrAy0


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作者より:

新しい創作の形として、自作の歌詞をAIで曲にしてみました。

苦手な方はスルーしていただいても、小説本編には全く影響ありません。

作品の奥行きを感じたい方は、ぜひ聴いてみてください。

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音和セカンドアルバム『SOU 蒼・颯・創』収録予定曲から本日の「おまけ」です。

音和(TOWA) - うろこ雲

YouTubeアドレス:https://youtu.be/lsVzlfmZJ6A



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