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隣に住む女の子の壁越しの生歌に泣けて郵便受けに「リアル投げ銭」してしまいました。  作者: 坂井ひいろ


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3-4 音和ロック、若者文化の象徴、安田講堂に令和ロックな『熱』を灯すんや



東京大学、安田講堂。銀杏の木々に囲まれた歴史的建造物の横に作られたメインステージ。


アイドルグループのメンバーたちが歌い踊る。


五月祭に訪れた観客を眺めながら浩太は若干の違和感を覚えていた。


「すごい数の人だけど、結構おっさんとかもいるんだな」


学生たちに交じって四十代半ばのオジサンたちが前席に陣取りアイドルの写真が印刷された団扇を掲げたり、グッズを振っている。


なんか、そこだけやけに熱量が高い。


「押し活ってやつやな。貧乏な若者より、独り身のおっさんの方が金が落ちるんや」


守銭奴かこいつ。音和さんに向けた心の嘆きを浩太は飲み込みながら考える。だが、しかし……。


団塊ジュニア、人口のボリュームゾーン、就職氷河期、三割越えの生涯未婚率。


東大生としての知識が導き出す。ワンチャンありか…。


浩太は音和さんの姿を上から下まで眺める。


相変わらず上下の赤いジャージ、首に本革のチョーカー。寝起きみたいな髪型に顔のソバカス。


田舎の中学生が迷い込んだようなコーデにため息が零れる。


対するステージ上のアイドル達は……。あれなら、今からドンキに走れば……。


「あんな、浩太、あんなチャラいやつ絶対に着いへんからな」


裏方スタッフが駆け回っている横で、音和さんは頬を膨らました。


そうこうしている内にアイドルグループの持ち時間は終わりへと近づき、太陽と共に熱量は上がっていく。


音和さんの持ち時間は三十分。次のアイドルグループが登場するまでのインターバルだ。


既に楽器類の調整も済み、ロックバンドはドラムセット以外に持ち込むものは比較的に少ない。


バックは備え付けの大型LEDディスプレイを拝借。日本最高学府の名は伊達じゃない。


それでも、裏方の仕事は尽きない。


「んじゃ、俺、行くわ」


浩太は音和さんのもとを離れてスタッフのもとへと走った。


ちなみに音和さんはノーメイクのままでステージに立つらしい。


音和はステージの観客を一人でじっくり眺める。


観客席の端っこの方で男の人と佇む一人の女性に目がとまる。


宮脇早苗みやわき さなえ、浩太の元カノである。


「ふーん。そういうことか。私もそろそろ行こっと」


ニヤリと笑みをこぼして音和は歩き出した。


----


音和さんのステージが始まる。


お目当てのアイドルを見終わった観客が立ち上がろうとした矢先、マイク前に立つ音和さんの叫び声。


「ほな、『スイカ』いくで!」


『ピテトロ』のメンバーが、それぞれの楽器を使った超絶テクの爆音で答える。


挨拶なし、メンバーも紹介なし。乱入ライブさながらのスタートだった。


何事かと足を止める観客。ざわめきが一瞬途絶える。


その隙をつきイントロが静かに流れ出し、音和さんの『スイカ』の語りのような歌い出しが会場に広がっていく。


徐々に感情が高まり、声量も上がっていく。『ピテトロ』のメンバーも、楽器でそれを後押しする。


押し寄せる感情の爆発。いきなりアクセル全開にしたような加速感。


「やばい」


浩太は観客そっちぬけで既に目頭を押さえていた。


「づき、『キミ依存症』やで!」


インターバルなし、おしゃべりもなし。『ピテトロ』と一緒になって弾丸をぶっ放す。


野獣だな。もう、誰も止められんな。浩太は観客の呆けた顔に熱がこもっていくのを感じる。


この勢いでは、足りないと思っていた三十分の時間を持て余す。それでも、あま、ありかもしれない。


音和さんの顔が輝いている。『ピテトロ』のメンバーの顔も輝いている。


無理を押して頼んだ裏方メンバーの顔まで輝いている。


「づき、『マンネリごっこ』や、みんな、ついてきてーや!」


音和さんの掛け声で会場が一体となって沸く。


『マンネリごっこ』の終盤、音和さんの魂の叫びが最高潮へ。


『大将』のベースが熱い。学生はもとより前に陣取ったおっさんたちの瞳に涙がにじむ。


こうして音和さんのステージは終わった。


十分も残して。


……のはずだった。


音和さんのパワーに飲まれ、誰一人帰ろうとしない中で、


「最後や、『安っぽいカーテン』覚悟せいやー」


浩太の方を振り向き、口角を上げてニヤリと笑う音和さん。浩太の方をチラ見する『ピテトロ』メンバー。


きっ、聞いてねーよ。四曲目の存在なんて。


浩太を置き去りにして、音和さんも『ピテトロ』のメンバーも歌の世界へ駆け上がっていく。


『新生活やし、って買った

君好みの安っぽい青のカーテン 』


「んがっ。音和さん……、これ」


浩太の頭の中に自分をふった元カノ、早苗さんの顔が浮かぶ。


『ほんまは花柄、ちょっと派手なん好きやけど

なんか言われそうで黙っといた』


『察してよ』の別れの言葉と共に。


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<次回予告>

3-5 【歌詞公開】『マンネリごっこ』

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浩太です。【歌詞公開】と合わせて、YouTubeで音和さんの生歌が聴けるらしいです。

次回、YouTubeアドレス公開!!動画に音和さんの秘蔵写真が!お楽しみに。

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