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浦島太郎のリスタート、のんびり浦島さんの現代暮らし。  作者: カジキカジキ


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長い一日

 浦島さんが実験室に入る。


 道具や必要な材料は全て揃えてある、機材の使い方もこの半年間ずっと教え込まれて来ている。他人の手が入って効果に影響が出ると困るので、浦島さんだけで全てを行なって貰うのだ。


「それでは、行ってきます」


 皆に見送られる中、実験室へと入る浦島さん。皆はガラスを隔てた隣の部屋から見る事になっている。浦島さんの手には玉手箱が、どれだけ生命力を使うか分からないので一緒に持って入る事になった。


 皆が固唾を飲んで見守る中。


 教わった通りの手順で材料の並べ、機材の点検と始動、試薬の下準備等を済ませる。


 浦島さんが、ガラス越しの私達の方を向き一度だけ頷く。


 実験が始まる。


 ・

 ・

 ・


 どのくらい時間が過ぎたのだろうか……私達は浦島さんの動きをジッと見守るだけで、時計を見ることすら忘れていた。


◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆

 

 儂は、この病気になった人たちが、元の元気な姿になって欲しいと願いながら作業を続けた。


 海山さんや、鬼島さんが考えた、この病気を治すためのタンパク質という物を完成させるのじゃ。このタンパク質が、脳の中の体を動かす信号を出す部分に新しい脳細胞を生み出して、正しく信号を出せるようにする。


 一つ、完成させれば良いのではない。この病気は多くの人が発症する、今も日に日に衰える筋肉に怯えて生活している人がいる。


 マリ殿のように、まだ先のある若い子にも発症する事があるそうじゃ。


 万一儂がいなくなっても、このタンパク質を何度も繰り返して作れるように増やせる物を作りたい。出来ておくれと強く、強く願いながら材料を混ぜる。


 いつの間にか、儂の強い思いに反応したのか玉手箱から光の粒が現れて材料の方へと吸い込まれていく。そうじゃ、この力をもっともっと必要な人へと使っておくれ。


 儂の気持ちに反応する様に、初めは少なかった光の粒が次第に多くなっていったのじゃ。


◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆

 

 おじさんは、丁寧に丁寧に教わった通りの手順で作業を進めている。


 そうしている内に、ふとおじさんの手元が何だかキラキラしている事に気がついた。


 玉手箱!?


 そう、玉手箱からあの光の粒が出てきて、おじさんの作業している材料に混じり込んでいるのだ。


 私達は、おじさんの体力が足りなくなった時におじさんに光の粒が入ってゆくのかと思っていたのだけれど。光の粒は、おじさんではなく実験の材料に溶け込んで行っている。


 何が起こるのだろう?


 ・

 ・

 ・


 玉手箱からの光の粒が集まって、おじさんの手元は光で見えないくらいになっている。


 その光が一瞬で部屋を覆い隠す位に眩しく光ったかと思うと、次の瞬間には光が収まり何事も無かったように静かになった。


 もう一度、おじさんがこちらを向いて頷く。


 今度は完成したと言う合図だろう。おじさんは玉手箱を手に取って実験室から出てくるが、少しフラついていたので支えてあげる。


 他の皆は、実験室の方へと入って行った。


 試験管の中を見る鬼島さんと海山さん。


「うそ!?」


「まさか……」


 成功すると信じて教えて来ていたはずだけれど、やっぱり現実を見ないと信じられなかったのだろう。ソレを見た二人は信じられない物を見たと言う言葉が出ている事からも想像できる。


「海山さん、とにかくこれを成分検査にかけて!」


「はい!」


 鬼島さんの指示に素直に従って、機械を操作し始める海山さん。


 私は、おじさんを隣の部屋の椅子に誘導して座らせると労い(ねぎらい)の声を掛けた。


「お疲れ様でした」


「……」


「おじさん?」


 座って項垂れている姿のおじさんから反応がない、不思議に思っておじさんの顔を見ると。


「!?」


 私は、すぐに側に置いてあった玉手箱をおじさんに抱かせた。


 これで大丈夫なはず……。


 それなのに、いつまで経っても玉手箱から光の粒が出てこない。いや、出て来てはいるのだけれど凄く少ないのだ、さっきまでは手元が眩しい位に出ていたのに、今は玉手箱から出る光の粒も弱々しく感じる。


「おじさん……」


 私はおじさんの横に座って手を握る。


 お願い……お願い乙姫さん。おじさんを元に戻して、玉手箱の力をもう少しだけ使わせて下さい!


 そう願っていると、少しだけ玉手箱から出る光の粒が増えた気がした。おじさんの顔色も良くなって来ている。


「良かった……」


 鬼島さんと海山さんは、おじさんの作った実験の結果に集中しているので此方には一切気が付いていない。私は、着ていたカーディガンを脱ぐとおじさんの頭から掛けて隠すようにした。


「どうしたの?」


 田螺さんが近寄ってきた。


「疲れたようで、暗い方が良いと思って」


 田螺さんは何か言いたそうな目を向けてきたけれど、黙って実験室の方へと戻って行った。


「おじさん疲れちゃったよね、頑張ったもんね、玉手箱の光をあんなに使って、きっと実験は成功している。鬼島さんや海山さんの慌て具合でも分かる。おじさんは暫く休んで、また元気になったら遊びに行きましょう」


 聞こえているのか分からないけれど、きっと聞こえていると思っておじさんに語りかける。


 おじさんの顔は、かなり年を取ったように見える。真っ青だった顔色は少し良くなった。握っている手はシワが増えている。弱々しく曲がった背中。本当なら椅子よりもベッドで眠らせてあげたい。なんで準備しておかなかったんだろう。


 とにかく、おじさんの側で体調を見ながら。実験室の二人が結果を持ってくるまでジッと待ち続けるしかなかった……。


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