希望の架け橋
「いよいよ明日ですね」
私と鬼島部長は、明日に備えて材料や機材の最終確認を行なっていました。
「大丈夫でしょうか?」
ふと心配になって思わず部長に聞いてしまった。
私は、浦島さんから貰ったドクダミの葉やドクダミ茶の効果を知っている。知っているけれど、今回の実験は所謂『昔ながらの知恵』ではなく現代医療。浦島さんの知識なんて到底及ばない現代の知識を、僅か半年教え込んだだけで実験が成功するか正直不安だった。
「信じましょう」
鬼島部長にとって浦島さんは、娘さんの命を救ってくれる救世主になるかも知れない存在、信じたくなるのも当然なんだろうけど……。
「源さんも言っていたでしょう。この実験は、浦島さんが絶対成功するという意識でいないとダメだって。少しでも疑問や失敗のイメージがあると成功しない。私たちも必ず成功すると思っていないとダメよ」
そう、今日までそう信じて浦島さんに教えて来たのだ。私達も信じていないでどうする。
「そうですね、浦島さんに不安な顔を見せるもアレなので、コレが終わったら飲みに行きませんか? 部長の奢りで!」
「何言ってるのよ貴方は?!」
部長は笑ってスルーしていたけれど、帰りに高めのアイスを奢ってくれました。
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「浦島さん達、明日は大丈夫でしょうかね?」
「金ちゃん?」
私たちは今週末の配信の為に打ち合わせをしている最中でしたが、急に金ちゃんが顔を上げて窓の外を見ながら呟きました。
私も金ちゃんと同じ窓の外を見て、ふと思い付いた歌を詠う。
「夏夕の 薄暮に立ち 思ほゆる 人の面影 胸に浮かぶる」(柿本one麻呂)
「桃ちゃん」
金ちゃんと目が合う。
「また、あの海鮮丼食べたいですよね」
海鮮丼……お正月に皆で初詣に行った帰り道。途中のスーパーで買った魚を浦島さんが切って作ってくれた海鮮丼。今まで食べたどんな料理よりも美味しくて、一口食べた後の記憶が無くなった位旨かった。
あれも、浦島さんの力の一つなんだよな……。
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浦島さんと源さんは、昨日まで富士山を見に山中湖へ旅行に行ってたので、今日はゆっくりするのかと思っていたら。帰ってきて早々、三階を貸してくれと言う。
何かと思ったら。浦島さんと源さんにお礼がしたいと言う事で、知り合った学生の女の子たちが集まってキッチンを使ってお菓子を作ってくれているそうです。
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「ふふふふふっ」
「きゃあ!」
「ちょっとマリちゃん! 粉が飛んだよー」
「ごめんごめん! それより心愛、ちゃんとボウル押さえててよ」
ここは、浦島さん達が住んでいるビル。その三階のリビング横のキッチンで、私たちはお菓子作りをしています。
リビングの方には浦島さんと源さんが座って待っている。今日は私たちがお菓子を作って二人を持て成すのだけれど、場所が無かったので浦島さんに相談したら「此処を使ったらどうじゃ」と提案してくれた。
一緒に住んでいると言うVtuberの柿本one麻呂さんにも了承を貰って、今日はいつもの友達で集まったの。
「混ぜるよー」
「ねるねるねるねー」
「こねこねこ、ねこ、ねこ、あはははネコになった」
「こっちにはチョコチップとそっちはドライフルーツね」
「「きゃー!!」」
騒がしい、「女三人寄れば姦しい」と言うけれど女の子が四人も揃うと騒がしいどころではないね。
浦島さんと源さんは、お茶を飲みながら楽しそうにおしゃべりしている。美男美女の二人なので、横から見ているだけでも絵になる。
「いいなぁー、二人は付き合っているのかなぁ」
心愛ちゃんがズルズルと二人の方へ近寄って行こうとするのを無理矢理引っ張り戻す。
「ほらほら! あとは焼くだけなんだから、もうちょっと頑張ってちょうだい!」
明日から浦島さん達は、お母さんの勤めてる会社で新薬の研究に入ると言う。それを知っているのは私だけ。だけど、友だちの皆はちょっと不安に思っている私の気持ちを感じ取って、ワザと明るく振る舞ってくれている。
本当に素敵な友人達だ。
「焼けたよー!」
出来上がった焼き菓子の甘い匂い。
早速リビングのテーブルへと持って行く。
お茶は浦島さんが淹れてくれた。源さん曰く、浦島さんがお茶を淹れると特別美味しくなるのだそう。だけど、それをすると浦島さんが疲れてしまうからあまりさせたくは無いのだけれど、今日はマリさん達が来てくれて私も浦島さんもとても喜んでいるから、そのお礼にだって。
もう! 今日は私たちがお礼のためにお菓子を作りにきたのに、そのお礼を返されたんじゃ意味ないよー。
そして、私たちが作ったおじさんへのお礼は。皆んなで食べた事であっという間に無くなっちゃいましたー。




