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浦島太郎のリスタート、のんびり浦島さんの現代暮らし。  作者: カジキカジキ


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成功へのステップ

 今日は大事な会議があると呼ばれて会社へ来たのじゃが(この半年は儂も会社勤めと言うのを経験させてもろうた。内容は、ALSと言う病気を治すための薬を作る準備じゃった)


 会議に集まっているのは。


 儂

 源織姫さん

 鬼島朱里さん

 海山みどりさん

 田螺法子さん

 

「出来るだけ早く本番に挑みたい」と言う鬼島朱里さん。理由を聞くと、娘さんのALSの症状が進行してきとるのだそうじゃ。


 詳しい事は精密検査をして本当にALSか調べる事にもなっとるそうじゃが、マリ殿に病名を明かすかどうかと悩まれている様子じゃ。


 皆も、じっと黙ったまま座っておる。実験を成功させる為の準備時間はもっと必要と思っておるのだろう、それとマリ殿の病気の具合がどの位早く進んでしまうのか心配もしておるのじゃ。


「儂は」


 儂が声を上げると、皆が一斉にこちらを向いた。


「儂は、もう実験をやっても良いと思うとるよ。今日まで十全に準備を重ねてきた。朱里さんも、みどりさんも儂に教えられる事は全て教えてきたつもりじゃろ?」


 二人ともしっかりとした目で儂を見て頷く。その目には自信が溢れておった。


「儂は、今凄く体調が良いんじゃ。こないに充実した気持ちになれたのは初めての事じゃ。今なら何をやっても成功する気にしかなれんわい」


 儂のこの言葉が決め手となって、実験は四日後に行われる事になった。それまでにマリ殿の病気を判明させて、親子で話し合ってくるそうじゃ。


◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆

 

「おじさんはかっこいいね」


 会社からの帰り道、私はおじさんをクルマで中華街まで送っていた。おじさんは『このクルマはスーッと動いて、前にワン麻呂殿のクルマに乗った時より座席の座り心地もとても良いのお』そんな風に乗り心地を楽しんでいたけれど、私の呟きに気がつくと。


「儂がか? 儂は単なるおじさんじゃぞ?」


 そう言って、私の顔を不思議そうに見る。


「何を言ってるの、おじさんは皆が不安に思っている時に、皆が安心できる言葉を掛ける事が出来る。とてもかっこいいよ」


 おじさんは少し照れたようにして頬を掻きながら。


「そうかのお……」


 私はそんなおじさんの顔を見て、とても良い事を思い付いた。


「ねえおじさん! 明日からは会社も行かなくていいし、時間もあるから一緒に何処か出掛けない? 近場か一泊二日位なら実験の日までも充分間に合うと思うし、どうかしら?」


 私は無理を承知で提案してみたのだけれど。


「そうじゃなあ……おお! 富士の山、そうじゃ! 万葉集でも富士の山を読んだ歌が幾つかあるので、見てみたいと思っておったのじゃ。どうじゃろう? 行けるのかじゃろうか? やっぱり此処からでは遠過ぎるかのお……」


 おじさんから思わぬ答えが返ってきた事で、私が慌ててスマホを出して調べようとすると。


「保土ヶ谷バイパスから東名高速に乗れば直ぐですよ。二時間もあれば到着できます」


(喋った!?)


 さらに思いがけない所から答えが返ってきた! 運転手さんの声、初めて聞いたかも!


「でわ、行けるのか?」


「そうね、その位で着くのでしたら、明日の昼に出ても充分に到着出来るし。朝から出ればゆっくり富士山観光も楽しめると思うわ」


 おじさんは、行けると分かって目がキラキラしている。

 

「何か見てみたい景色とか、富士の光景があるのかしら?」


「田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける」(巻3-318、山部宿禰赤人やまべのすくねあかひと


「と言う歌に惹かれての、その光景を見てみたいと思ったんじゃ」


 おじさんが読んだ歌を頭の中で解読する。

 

「えっと、確か有名な歌よね。ただ、雪が降り積もった富士を見るにはタイミングが悪かったかも」


 そう、季節はまもなく八月に入ろうとしていた。今年は六月から急に気温が上がり、かなり猛暑となっていたから、きっと八月も暑いのだろうな……。


「そうか、雪の富士は見れんのか……」


 おじさんはしょんぼりとしてしまった。


「天地の分れし時ゆ 神さびて 高く貴き駿河なる富士の 高嶺を天の原ふりさけ見れば 渡る日の影も隠らひ 照る月の光も見えず 白雲もい行きはばかり時じくそ 雪は降りける語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ富士の高嶺は」(巻3-317、山部宿禰赤人やまべのすくねあかひと


(また運転手さんが喋った!)


「そうじゃ。そうじゃな! 雪の富士は見れぬとも、神々しい富士の山は変わらぬ。夏に見ようが冬に見ようが同じ富士じゃ。織姫さんや、富士を見に行こうではないか」


(運転手さん、ナイスフォロー!)


「それでは、宿は私がお取りしても宜しいですか? なかなか取れないお勧めの宿が御座いますので」


(今日の運転手さんどうしたの?!)


「ええ、是非に。でしたら、朝は十時位に出発で良いかしら?」


「そうですね、それでは源様へは九時四十分にお迎えに上がり。浦島様を十時にお迎えするスケジュールで宜しいでしょうか?」


「大丈夫です。おじさんも、十時に迎えに行くから準備しておいてね、アレも忘れないようにね」


 アレって勿論玉手箱の事だったんだけど、もしかしたら運転手さんには勘違いさせてしまったかしら?!


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