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浦島太郎のリスタート、のんびり浦島さんの現代暮らし。  作者: カジキカジキ


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契約

 弁護士を交えた契約は、こちらの事情を全て相手に呑ませる事で締結した。


 あの後自宅へと帰った鬼島朱里さんは、娘のマリさんに最近の行動を誤り。浦島さんについて知っている事を全て教えて貰った。次の日には会社の本部長会のトップの元にゆき、スポンサーを見つけてきたので研究を続けさせてくれと申し出た。


 名刺を見せても、トップの重役は笑ってゴミ箱へ入れようとしたが。慌てて飛び込んで来た秘書の一声でそれは防がれた。


「『NeuraNest』CEO、源織姫様よりお電話です」


 その後はトントン拍子に話が進み、新規事業の共同研究契約が先ほど終えたのだった。


◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆


「浦島さんが作ったアレで美容効果が現れるのは、作っている浦島さんの知識が関係しているのかも知れませんね」


 鬼島さんを帰らせた後、残った私たちはデリバリーの食事を取りながら今後について話し合っていた。そんな時、足柄さんがある推測を話し始めた。


「どう言う事?」


「つまり、浦島さんはドクダミ茶には美容効果があると知っていて、女性に渡すなら美容効果の高いお茶の方が良いだろう。と思いながら作ったから、アレだけの効果が現れたと言う……あくまで仮説ですが」


「他には何か思いついている?」


「先日話した、浦島さんから漏れ出る不思議な力のせいもあるかも知れませんが、それにしては効果が限定的過ぎると思ったのですよ」


「限定的?」


「あれ、男性には一切効果がありません」


「え!」


 私が驚いてワン麻呂さんの顔を見ると。

 

「言われてみれば、前に飲ませて貰った時も美味しいとは思ったけれど。源さんが言うような結果は無かったなあ」


 と、アッサリとした答えが帰ってきた。ますます玉手箱パワーが謎めいてきたわね。


「なので、浦島さんがそのクスリの効果がこうだ! と思い込んで作ったら、本当にその効果を発揮するのではないかと思うのですが」


 それが出来たらとても凄いことなのでは?


「ただし、浦島さんが化学的な説明で理解出来るのか、その知識の材料を混ぜるだけでも効果が出るのか等、検証が必要でしょうけれど……ただ」


「ただ?」


「一度失敗した材料で二度目をやっても、浦島さんの意識には失敗したと言う結果がインプットされてしまいます。なので、同じ材料では二度と成功しない可能性もあります」


 そうか! 浦島さんの中で出来ない【かも知れない】と言う不安が生じるだけでダメなのか!

 

「出来るだけALSと言う病気を理解して、どのような効果が求められ、この材料のどの部分が病気に対しての効果があり、どう働いて欲しいのか。それをしっかり理解してから実験を始めないと、浦島さんの中で『これは効果があるのか?』と疑問系で試したら、それは失敗作しか出来上がらない筈です。しかも、その材料を使った試験は今後何度やり直しても成功しないかも知れない。言ってみれば必ず成功すると確信を持って一回で成功させる下準備を完璧に終えてからのみ実験出来る、一発勝負になるのではないでしょうか?」


 足柄さんの推測は完璧過ぎた。後日、鬼島さんも海山さんにその仮説の話しをして「その可能性は多いにありえる」と言う事になり、万全には万全を期した体制で実験にあたる事となった。


 実験を開始する前には、ALSと言う病気がどんな物なのか詳しく説明、小さな子供でも分かる程度の紙芝居から始め、神経や細胞、脳細胞からシナプスの説明へとランクアップし。また実際のALS患者の元に出向き、浦島さんが直に話をする事で治したいという気持ちを高める効果も狙ってみた。

 

 治療薬にする材料についても、説明時に「可能性」や「だろう」「と思われる」と言う言葉は使わず。「効果があります」「治します」「〜です」と言って肯定的な言葉で全てを説明した。


 そんな下準備を行なって六ヶ月が過ぎた頃だった。その日は休みだったのだけれど、突然鬼島さんが私に電話を掛けてきたのだ。


「お願い! お願いだから、実験をすぐにでも開始して!」


 スマホの向こうで、とても慌てた様子で実験をすぐにでも始めて欲しいという彼女に、どんなに急いでも今日明日で始める事も出来ないと話して納得させ、取り敢えず理由を聞くために彼女の自宅へと向かった。


「それで? 何があったの?」


 横浜市内の閑静な住宅街にある戸建てが、彼女とマリさんが住んでいる家だった。テーブルに座り、お茶を出して貰うが、彼女の手は僅かに震えている。


「あの子の、マリの病状が進行しているの。この間までは、症状が落ち着いていると思っていたのだけれど、昨日の夜になって『左腕に力が入らない』と彼女が言い出したの」


 鬼島さんの顔色は真っ青になっている。マリさんは二階で休んでいるそうだ、最近は疲れやすいとも言っていたと言うので、やはり病気が進行しているのだろう。


 本来ならもう少し時間を掛けて、浦島さんの知識と完成に向けたイメージを高めたかったのだけれど。マリさんの病状が進むと、例え治ったとしても後遺症が残るかも知れないし、出来るだけ症状が軽いうちに治してあげたい。


 私は、関係者全員を集めて浦島さんに話しを聞く事にした。


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