情報収集2
その夜。深夜とまでは言わない遅い時間に、知らない番号からの着信があった。
キタッ!
「はい。もしもし、源です」
『……』
あら?
『……あの』
「大丈夫よ、昼間の学生さんよね?」
なるべく刺激しないように、落ち着いて対応する。
『もし、おじさんの事を探しているのでしたら。もしおじさんに会ったら。私たちにもおじさんの居場所を教えて貰えますか?』
この子たち……。
「まだ会えるか分からないけれど、私の探している人と、貴方が言うおじさんが同じ人だとしたら、必ず会えるようにするわ。約束する」
電話の向こうで、ホッとしたような雰囲気が伝わってくる。
「それと、もう一つ聞きたい事があるのだけれど。その人から何か貰った物は無かったかしら?」
『!!』
先ほどとは違う緊張が走る。
「ごめんなさい、それはまだ後でもいいわ。もし、他にも知っている子がいるのだったら、その子達も一緒に会って話せるかしら?」
『皆んなにも……話してみます。それで、会っても良いと言う子とだけでも構いませんか?』
「大丈夫よ、時間と場所はお任せするわ。それか、何処か入ったみたいお店があれば押さえるから。お茶とケーキぐらいはご馳走するわよ」
「ええ、ええ、それじゃ。おやすみなさい」
電話を切るとソファへと座り直し、タブレットに届いていたメールを確認する。
「へー」
〈ターゲット女子学生A、追跡調査報告、住所:神奈川県横浜市◯◯区、氏名:鬼島マリ、年齢:十七才、保護者氏名:鬼島朱里、年齢:四十六才、職業:葵薬華株式会社、美容部門部長ーー〉
「ビンゴ!」
二日後、あの子達が指定してきたのは。横浜ベイホテル東急、二階のラウンジ「ソーマハウス」。ケーキセットを食べたいと言っていたのだけれど、せっかくだからアフターヌーンティーを頼んでおいた。
「わぁー!」
「キャー!」
ラウンジ内に女の子達の黄色い声が響くが、周りからは優しい視線のみが届く。
今日、ここに来てくれたのは。本命の鬼島マリさん、寺島葵さん、山本心愛さん。あと、もう一人いるらしいけれど、今日は家の都合でどうしても来れなかったと言う事。
「りんりん、これ見たら怒るかなあ」
先ほどテーブルに並んだアフターヌーンティーのスイーツ写真を撮りまくっていた彼女たち。どうやら来れなかったもう一人に写真を送るか悩んでいる様子。
「ゆっくり食べて楽しんで頂戴。話は後からで大丈夫だから」
ちなみに私はケーキセットだ、流石に彼女たちに合わせてアフターヌーンティーを食べるだけのパワーはない。
「「「いただきます!」」」
・
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ゆっくりとアフターヌーンティーを楽しんだ彼女たち。あれだけのケーキを食べて、その笑顔は正直羨ましい。
「あっ、来たようね」
私は待っていた人物を見つけ、手を上げて場所を知らせる。
私の行動を不思議に思った彼女達が振り返って、やってきた人物を見て固まる。
「うそ……」「おじさん?」
そこに現れたのは、浦島さん。私の本来の目的は彼女たちの言うおじさんを探す事ではなく、ドクダミ茶を持っているかと言う事。なので、彼女たちの要望である「おじさんに合わせる」と言う目的を早々に達成させて、ドクダミの件を聞き出す、と言う作戦にしたのだ。
彼女たちは一斉に立ち上がって、浦島さんへと抱き付く。いや、ちょっと貴方たち? 少し控えなさいよ?
その後は私の方を向いて「何でおじさんが?」「源さんは、おじさんを探していたのでは?」と突っ込まれてしまった。
「ごめんなさい。貴方達の言うおじさんが彼の事かハッキリしなかったので、今まで黙ってました。それと、別の話しの方を聞きたかったので、本人がいた方が良いかと思ったの」
そう言って彼女達を着席させると、私の横に浦島さんも並んで座った。
「はぁー」「容姿端麗、眉目秀麗」「かっこいい」
今日の浦島さんの格好も、白のシャツに黒いスラックス。流石に寒いので外ではコートを着ているのでしょうが、クロークにでも預けてきたのだろう。
身嗜みが整い、顔の良さもあって、他のテーブルからの熱い視線が届く。彼女達のセリフもそのせいだ。
「久しぶりじゃの。マリ殿、あおい殿、ここあ殿」
名前を呼ばれ、彼女達の頬が染まる。
「おじさんだ……」
浦島さんをポーッと見つめる彼女たちだが、ここは話しを進めなければ。
「んん゙っ!」
「「「!!」」」
「ごめんなさい。けれど、貴方達にどうしても聞いておきたい大事な要件があるの。聞いて貰えるかしら?」
「「「はい!」」」
素直な良い子たち。
私は、浦島さんの方を見て頷く。浦島さんも軽く頷いてから。
「皆に聞きたいのは。儂が渡したドクダミ茶を如何したかと言う事なんじゃ」
「「?」」「!!」
やっぱり……二人は普通の反応だけれど、一人だけビクビクしている。
「僅かな量だったからの。全部、茶で飲んでしまっていたのなら構わないが。もし、他の誰かに取り上げられたりしておったら可哀想だと思ったのじゃ」
浦島さんがそう言うと、明らかに一人の反応が変わった気がした。
「私は、全部自分で飲んだ。家族はコーヒー党で、日本茶とか殆ど飲まないから」
「私はお母さんと一緒に飲んだよ。お母さんが凄く喜んで飲んでたかな」
「私は……」
マリさんは、詰まりながらもドクダミ茶を持って帰った後の状況を話してくれた。
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「そう、お母様が……」
「マリ殿、話してくれてありがとうな」
隣の二人も、マリさんを慰めるように声を掛けている。
「気分直しに、もう一つケーキ食べない? 好きなの選んで良いわよ」
「「「キャー」」」
んふふふふ。




