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浦島太郎のリスタート、のんびり浦島さんの現代暮らし。  作者: カジキカジキ


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17/35

日常

「明けましておめでとう御座います」


 インターホンが鳴り、扉の向こうに現れたのは。数日前に会ったばかりの源織姫(みなもとのおりひめ)さんでした。


「……」


「あの、ワン麻呂さん?」


 出迎えた全員が固まり、声が出ない。


 織姫さんの格好は、お正月らしく晴れ着姿。その晴れ着がまた似合っており、とても(まばゆ)い。


「どうされました? 何か変だったかしら?」


 そう言って自分の格好を確かめる織姫さん。


「いえいえとんでもない! とても似合っています。とてもお綺麗なので、フリーズしてました」


「ありがとうございます。急にお邪魔してすみません、ですが、皆さんと初詣に行きたくて、こうして来てしまいました」


 そう言って、両手を広げて着物姿を見せてくれる織姫さんは、本当に物語のお姫様のようです。


 我々も着替える間、リビングで待って貰う。高価そうな着物に溢したら大変と、飲み物を出す時にも手が震えてしまいました。


 全員が着替え終わり、歩いて近所の神社へと向かう。織姫さんの格好もあるのであまり遠くではなく近くの神社。それでも、人が多く織姫さんを見る人々が注目する。中にはスマホで撮影している者もいる。


「キャッ」


「大丈夫か?」


 履き慣れない草履で足元がフラつき、浦島さんに支えられる織姫さん。


 ザワッ!

 

 いや、これは織姫さんだけでなく浦島さんも並んでいる事で余計に目立っているのでしょう。浦島さんの格好はコートを着た下に、白いシャツと黒のスラックス姿。と言うかいつもこの格好ですが、とても似合っており本人も気に入っている様子。


 間違いなく美男美女の組み合わせに、周囲の目が放っておかないのです。


 ・

 ・

 ・


「お疲れ様でした」


「ご迷惑をお掛けしました」


「いえいえいえいえ!」


 初詣は早々に切り上げて、我々は新しい事務所兼住居へと戻ってきていた。何せ、他の初詣客がお参りそっちのけで二人を撮影し始めたのだから仕方ない。と言うか、今時の人たちはプライバシーとか気にしなさ過ぎて困る。皆んな大丈夫か?! もしネットに上げられたりして特定班とか動いてたら、もう此処引っ越す事になったりするの? そうなったら、こっちも法的手段に出ますよ?


 そう思ってSNSをチェックして見ましたが。


「あれ?」

 

「どうしました?」

 

 スマホを見ていた私に、足柄氏が聞いてくる。

 

「先ほど、あれだけ撮影されていたのにSNSの何処にも写真が見当たらないのですよ。あの神社のタグや初詣とかで検索しても一件もヒットしないなんて」


 僕らが首を捻っていると、涼しげな笑顔を向ける織姫さんと目があった。


「不思議ですね」


 三人で、微妙な空気を感じていると。


「お待たせしたのじゃ」


 それまでキッキンにいて包丁を握っていた浦島さんが、トレーを持って現れ。


 コト、コト、コト、コト。


 座って待っていた我々の目の前に、見た目も鮮やかな海鮮丼が並べられました。


「おおおおー!」


「きれーい」


「こんなに新鮮でしたか?!」


 器の盛り付けを見た皆の感嘆が上がる。これは、初詣の帰り道。お昼を振る舞いたいと言われてスーパーで買って来た鮮魚を浦島さんが捌いてくれたもの。


「そうか? 久しぶりに包丁を持ったのでな、上手く出来たか心配じゃったが」


 箸とタレ、山葵などと一緒に、お刺身の盛り合わせも並ぶ。

 

「いやいや、凄いですよ! さすが漁師、魚の扱いに慣れていますね」


「ありがとう、さあさあ食べようか」


 皆が席に着いたところで。


「「「「いただきます」」」」


 ハムっ。


 一口食べると、浦島さんを除く三人の会話が途切れ、気がつくと全て完食した後でした。


 手にあるのは、空っぽになった器のみ。


「あれ? 僕は今、一口食べたとこだと思ったのに」


「私も……」


「私の、私の海鮮丼は何処に消えました?!」


 その後、もう一杯をお代わりして。皆幸せな時間を過ごしました。


◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆


「ありがとうございました。ご馳走様でした」


 先日と同じく、浦島さんに一階までエスコートして貰う。


「今日も顔を見せてくれてありがとう。それに、こんなに綺麗な着物姿まで見せてくれて。嬉しかったよ」


 全く! 何でそんなにストレートに恥ずかしい言葉が出てくるのかしら! 浦島太郎って天然ホストだったの?! その顔で言われたら普通の女だったら一発で堕ちてるわよ!


「ありがとう。おじさんも元気でね。女の人には気をつけるのよ」


 恥ずかしさに気付かれないよう返事をして、何気ない素振りで待たせていたハイヤーを呼ぶ。


「それじゃ、また」


 車の窓から手を振って別れる。おじさんは、その姿が見えなくなるまで見送ってくれていた。


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