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浦島太郎のリスタート、のんびり浦島さんの現代暮らし。  作者: カジキカジキ


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はしゃぎ過ぎ注意

「たっ……玉手箱を、持って、きて……」


「浦島さん!」


 ・

 ・

 ・


 「いいから、行こうって!」


 あの日、ワン麻呂殿に強く誘われて連れ出された儂は、キレイな海が見られると言うのもあったが、あのクルマに乗れると言う誘惑に負けたのかも知れん。


 神奈川県の城ヶ島と言う所まで連れて行ってくれると言うのだが、そこで何をするのかは聞いておらん。またVtuberの配信とやらをやるのか?


「では、動きますよー」


 ワン麻呂殿のでぃれくたー氏に連れられて、駐車場まで来た儂の目の前には。大きな四角い箱のようなクルマに乗ったワン麻呂殿、でぃれくたー氏が慣れた手つきで戸惑う儂から荷物を受け取ると、サッサっとクルマに乗せ。儂を「景色が見えるから」と言って前の席へと乗せてくれた。


「お! おおっ!?」


 揺れもなくスーッと前へと動き出すクルマ。


「おおー、ぶつかるぞ!」


 目の前にはクルマが止まっており、ぶつかるのかと思ったが、ワン麻呂殿が目の前の輪っかをクルクル回すと、クルマもそれに合わせて右へと曲がった。


「おお! それで曲がるのか?!」


 これだけ大きな物なのに。止まる、曲がるの動きが自由に操作できるとは。儂が漁で使っていた船より簡単ではないか。


 そう思ったのは駐車場を出るまでだった……。


 駐車場を出ると、いつもの山下公園前の通りじゃ。クルマがどんどん通っておる、クルマだけを見ておると目の前に現れる歩く人。ワン麻呂殿は左へ行くと言うておるが、いつ出られるのじゃ?


 そう思っておったらクルマの流れがピタリと止まった。ワン麻呂殿が左右からの人を確認すると、スルスルと前に出て左へと曲がり、前を進むクルマと同じ道を進み始める。


 儂の散歩道である山下橋へと差し掛かると、ワン麻呂殿が何かを操作してクルマが止まった。儂が不思議そうに見ているのが分かったのか、面白そうにクルマの動かし方を説明してくれた。


 なるほど、手で操作しているのがはんどる、曲がる合図をするういんかー。足で操作しておるのが、あくせるとぶれーき。あくせるを踏むと動いて、ぶれーきを踏むと止まるのだそうだ。


 今、止まったのは。目の前の信号が赤になったから。この信号や、走る道、止まったり曲がったりの決まり事があるそうじゃ。それは国が決めた事で、皆が免許を持ち交通法規を守る事で事故を防いでおる。とワン麻呂殿が言っておった。


「おおおおおおー!」

 

 これが首都高速湾岸線! 頭の上でゴーゴー言うておったのはこんなにもクルマが走っておったのか!


 初めてのクルマと首都高速で興奮しておったが、すぐに何も見えない事に気が付いた。右を見ても左を見ても壁があるだけで前と空しか見えぬ。黙ってしまった儂を見て、ワン麻呂殿がこの後の道行を教えてくれた。


 この先ですぐに首都高速からは降り、国道十六号線を走り横須賀に向かう。市内を過ぎて百三十四号線を通って三浦海岸まで海沿いを走ると言う事じゃ。その後、暫く街中を走った後は。「お楽しみ」そう言って教えてくれなだんだ。


 ・

 ・

 ・

 

 北原白秋が過ごした町、三崎。


「おおおおおおおー!」


 儂は、窓ガラスに顔をベッタリと貼り付け外を見た。


「海の上を走っておる!」


 クルマは町を走っていたかと思うと、ある場所で止まり、また動き始めた。その直後だった、クルマが海の上を走っておったのだ! 儂の座っている側も、ワン麻呂殿が座っている向こう側も海じゃ!


 城ヶ島大橋と言うそうだ、渡った後に駐車場があるから少し止めて外に出ようと提案された。そう言えば橋からの景色に驚いて、腰が痛くなってきていたのを忘れておった。


 駐車場にクルマを止めて、外に出る。その時もでぃれくたー氏がドアを開けてくれて、ワン麻呂殿がしーとべるとを外してくれて何とか降りられたんじゃ。


「んー!」


 腰を伸ばし、首を回しながら、周りの景色を確かめる。


「この先に、北原白秋記念館と言うのがあるみたいなんですよ。行ってみませんか?」


 何と! 北原白秋と言えば。神奈川近代文学館でも何度も名を聞いた詩人ではないか! さあさあ! 何をのんびりしておるのだ、行くぞ!


 駐車場から少し歩いた先の海沿いにその記念館はあった。その前に歌碑を見てみたのだが、それよりも頭の上の橋にも驚いた! 先ほど通ってきた道だと言うが、海の中にまで柱が立っておるではないか!


「おおおおおおお! おおおおお! ハァハァ」


「浦島さん、そんなに興奮していたら疲れますよ」


 ワン麻呂殿から言われた通り。興奮して記念館に入る前から疲れてしまったが、記念館の中でも興奮せずにはおらなんだ。


 最近は、現代の日本語も勉強しておるのだが、まだまだ読むのは難しく、ワン麻呂殿に展示物の大半を読んで頂いた。また白秋殿の生涯も教えて貰ったのだが、なんとも詩情溢れる波乱の人生だったのだな。


 クルマに戻ったら「今度は、展望台を見に行きませんか? 灯台もあるらしいので景色が堪能出来そうですよ?」と言ってきたので一も二もなく行ってみたのじゃが。

 

 またまた景色に翻弄されて、端から端まで歩き回ってしもうた。


「おおおー! おおー! ゼイゼイ……」


 公園の端の灯台を見て、展望台からの景色を堪能したのだが、急に疲れが出たのか歩けなくなってしもうた。最後にはワン麻呂殿に肩まで貸してもろうて、何とかクルマまで戻ってきたのだが。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 イスに座り、水を飲まして貰っても一向に疲れが引かぬ。


「大丈夫ですか、浦島さん!?」


 ワン麻呂殿にも、でぃれくたー氏にも心配掛けてすまんのお。ふと、今日は玉手箱を抱えていなかった事に気が付いて。クルマの後ろに積んである筈の玉手箱を取って貰えるように頼む。


「たっ……玉手箱を、取って、くれ……」


「浦島さん!」


 儂は、そのまま気を失ってしまった。


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