X投稿140字小説集2
(ヘラクレスの幸福)
不死の体を持つ戦士がいました。人間界の悪を滅した戦士は、天界に戻り長い眠りに就きます。戦士は眠りから覚めると自身の魂を分け、人間の夫婦の赤子として新生しました。平和な人間界で育った赤子は、民心に希望をもたらす強き英雄になったといいます。
(巡る報恩)
住処を追われた者達がいました。不憫に思った他者が金品と食事を持ち寄り、その者達を助けます。糊口を凌げた者達はその後、恩義を忘れず働きました。努力が実り故郷に帰れた者達は、価値のある特産品を制作し、それらを贈ることで他者からの恩に報いたといいます。
(秩序の大門)
町を守る頑丈な門がありました。ある時、凶悪な族が現れ町を襲撃しますが、頑丈な門を突破できず、防壁の上から炮烙と弓矢を受け、返り討ちに遭います。頑丈な門は町の発展と共に改良され、都市防衛の象徴となり、いつしか町を襲おうと目論む族もいなくなりました。
(農工補完)
東の農業国に広大な牧草地帯がありました。西の工業国から大商人が訪れ、便利な機械と畜産物の取引を持ちかけます。東の国の統領は取引に応じ、歳月の経過と共に、西の国との往来が盛んになっていきました。両国は相互に尊重し、共存共栄の長い歴史を創りました。
(科学による包摂的同盟)
高度な科学技術を持つ国がありました。統領は国の科学力をどう活かすか考えた後、自国民と友好国の善良な民に恩恵を与え、より広範な科学教育を行うことに決めます。倫理と道徳で正しく制御された科学は徐々に浸透していき、一衣帯水の国々に繁栄をもたらしました。