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ヘキダネ  作者: きつねやさん
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かわいそうはさいきょう

1.「例えばだが―」


彼の口調に芯が入り私の目を見つめる時理解や共感、それに近しい感情を求めるときだ。そして大体がどうでもいい事であり聞き流し程度には聞く姿勢をとる。


シュガーポットから角砂糖を2個摘み、口に放り込みながら彼はスマホで何かの画像を検索し始めた

口の中で砂糖を転がしながら、あーとかうーとか唸りながら画像をスワイプしていく。

椅子に座り、足で壁を蹴押しながら斜めにしてバランスとってスマホを弄る姿は少し子供のような画角である。

この歳になってしまえば悪いことしかないが彼は子供っぽい。ワガママというか自由気儘、喋りたいことを喋りやりたいことをやる。そして煽りカス。

人が嫌がる手を打ったり、敵を倒すより蹴落とすことに生を実感する業深き人間である。

地獄に落ちて欲しい。彼にキャラクターを与えるなら「道化」だろうか。


自分の手が届く範囲の探究と思考実験を絶やさず、それで得た結論を嬉しそうに話してくる。正直、不気味ではある。

彼も自覚してるのであろう、私以外には様子がおかしい部分は見せない私がいてもだ。その際は様子がおかしい部分が無く爽やか好青年(自称)であり営業課の成績優秀人気男子(超自称)見たいな、インスタント製よそ行き用雰囲気出している。


コーヒーカップをカチャりと置き「例」になるであろう資料は次から次へと集められていく。


「よし」


彼は顔を上げてスマホに開いた画像を見せて言った。


「敵にグチャーつって肉片とか肉塊にされてさ、

ソレに恋人が錯乱し喚き着いたり泣きじゃくりながら声掛けるシーンとか良いよな」


予想はしていたものの、あまりにも稚拙で幼稚ないつも通りの会話にため息が出る

「わかる、ついでにその肉片をかき集めて欲しい」


彼は悦びに驚き椅子ごとひっくり返り「癖だね〜」と呟いた。

彼とは癖が合う、と言うより嫌いなものが少ないだけで大体歩み寄る事が出来る

理解はしないがお前こういうの好きなんでしょ?を提供できる気質からか彼からは初めはソッチ(性的倒錯)側の住人だと思われてたが、ただの八方美人にガッカリされた。

だがそれ以来彼とつるむ様になったのはただ単に私の周りに刺激が無かっただけだったのか、あるいは「都合の良い捌け口」が出来た彼から寄ってきただけなのかよく分からない。ただ居心地がいい訳では無いが、理解と共感の空間があるから息が詰まることが無い。


「こういうのってメンタルリョナになるのかな」冷蔵庫から水だしアイスコーヒーを出して自分のコップに注いだ。

メンタルリョナ―精神攻撃メインとしたR18が伴う猟奇的描写の詳しくはggrks

リョナの中には精神攻撃も伴う描写も含まれるから定義的にはリョナと言ってもいいだろうが「だけどその画は観察対象がほぼ無傷であるからメンタルリョナにジャンル分けした方が丸くなりそうだな」


確かにと彼は頷く

「あと俺の定義だがメンタルリョナは観察対象より読者の方がダメージがデカくなるな」


「見る人によっては最愛の恋人を失い錯乱してしまうシチュエーションの方がよっぽど心痛めるだろうな」

たしかしたかし〜と彼は間の抜けた声を上げ手を打った。

「じゃあ君が1番ダメージ受けるメンリョナは給食のカレーをケツで踏んで一生擦られ続ける画像だね、探してこよう」


「それはリョナじゃなくて嫌がらせだよ馬鹿」

早速見つけて来て煽って来るバカガキを無視する。


「猟奇の中にエロを見出すの変態だよな、絶対こういう奴が人類で初めてなまこ食べるような奴だわ」多分方向性は違うと思われるが

だがエロとグロは紙一重なようなものだ、タナトスとエロスがあるように壁画の時代からエロを突き詰めた人間が辿り着くのは必然なのかもしれない。

リョナとはサディスティックとはまた違って加虐性癖ではなく、「これ以上行ったらどうなるんだろう」の可視化、好奇心や背徳にメタを感じる。


「お前はリョナの何が好きなんだ?」「なんだろう将来性」

思わぬ即答が来て目を丸くする「…投資の話か?投資が生まれる前からリョナコインは大暴落中ですよ」と思わぬ即答に長めのツッコミを入れてしまう。


「ツッコミおもんな」もういっそ殺してくれ。

突然のナチュラルボーンリョナに狼狽えてしまったが

ため息を着きながら平静を装う、だがぶっちゃ軽く膝が震えてる。


恥ずかしい。面白くないツッコミをしてしまった事に堪えない。


「だからよ〜」肘をテーブルに乗せて前屈みになって言う。

「つまり、その画像は四肢切断されるじゃん?でもその子に前日譚や後日談がある訳よ例えば…」「いや大丈夫」参考画像を探そうとする手を止め、彼は続ける。

「つまり絶望がこの画像の後にも続いてるのは確定だしこれになる前は幸せ絶頂だったんだよねって

想像力次第ではセルフ同人できるわけじゃん?」


思わずお前キショいなと笑ってしまったが、彼は続ける。


「妄想例として、四肢切断されたあと救助され一命を取り留めたが、四肢切断と暴力のショックで茫然自失はするじゃん?ここまでは想像できるね」


「で、こっからよお前はどうしたい?じゃあ設定は恋人として」


模範解答は恐らく彼女を幸せにするとかだろう、彼女を一生かけてみたいな。

ふと彼の方に目をやる普通の表情だが、どこかニヤけ嘲るような空気を感じる、どうせろくな事を考えていない証拠だ。


早く答えを言いたいのか「まぁ模範解答は幸せにするとかでしょうね〜」などと煽る

お前はそれじゃ面白くないんだろ

「正っ解っ!性悪ビンビンよ!!」


こいつと喋る時は逆方向にMAXベットで喋ってやると初代ゴッドかっていうくらい語彙吐き出すからな。なら―


「救出したあと一緒に居ることが苦痛とか言って別れる」少し良心が痛むがまずまずの回答だろう。もしくは自らの手でとも考えたが彼からしたらご褒美なんだろうと思い回答をこっちにした。

実際自分の想像力はこの程度だ

この絶望した日常に興奮出来るような癖は自分には無い。


「ふんふんふんなるほど〜〜」

腕を組み何かを考えるように相槌打つのが態とらしいな。


良い回答だったと思うんですけどね〜とウザったく呟きつつ天を仰ぎ背もたれにもたれかかり、思い出したかのように角砂糖1個を口に放る。


「正解はですね…てかこれリョナ問題なんですけどなぜそんな甘々なの?普通にクソ男思考が捲れただけじゃんガハハー」ゆびさして彼はケラケラと笑う。

確かに、これはリョナ問題だ中途半端なブレーキー掛けると逆にタイヤだけがすっ飛んで行って爆死する。


彼は得意げな顔の前で人差し指を左右に振る

「とにかくアクセルベタ踏みで飛んでいけ!だ!」だと思ってた。

じゃあお前の回答でも聞かせてくれよ、と促すと不敵な笑いをうかべた。


「まぁ僕の性癖はですけど〜普通通りの日常を過ごし毎日愛してるとか言ってベッタベタに甘やかして〜…」チラッと反応を窺うように自分の方へ見る、続けるように促す。

まぁぶっちゃけ彼がそんな甘い日常を過ごすとか訳が無いからな、地獄へのジェットコースターの登り坂と言ったところか。


「ふとした時に足があったら良かったのにねとか言って見る」

「私はリョナと言う物に初めて触れた気がしたわ」


彼の想像力に禪院家の者だったら雷が効かない時のエネルの顔して「人の心とかないんか?」と悲鳴を上げるのだろうか。

あまり聞きたくなかったが導入部の模範例として朝起きて天気が良かったら「どこか歩いてお散歩行けたのにね〜」

とか言う訳だ胸糞が悪い。だがこれがリョナ、今感じてるこの黒いものがリョナなんだ。


「しかしこれはモラハラとかパワハラの類では?

こういう精神的ダメージはどちらかと言うとサディストなイメージだけど」

彼はやれやれと言ったように首を振る。

「君はこの女の子に何かしたか?」あぁ、そうか―。

「私は観察者ってことか」


「正っ解っ!!つまりは君が今ここで聞いたことも無いような声で泣いて叫んでも警察は来ないし俺は罰せられない

君がこの後日常生活に不自由しても、その事で不憫な思いや残酷なことされてもノーダメモーマンタイって事」最近ハマってるからって五条ネタ引っ張るな

この単行本勢、最近のジャンプ貸したらどんな顔をするだろう。


絶望の胸中に言われる、自分を助けてくれて献身的だけどふとした時に言われる残酷な言葉程苦しいものは無いだろうな。

彼は恐らく

その激しさと、この胸の中でこびりついた灼熱の闇の様な焦燥に「嬉しくなっちゃうってこと」

続けて「誰にも頼ることが出来ない、不必要な社会のお荷物、そんな自己肯定感激ローメンタルザッコザッコの彼女にバチくそに甘々にして依存させた上でこんなこと言うの実にリョナいよな」と話を括った。


1回こいつ人権団体とかにボコられねぇかな、それか女性だけの町に貼り付けしたい。


「はぁ…なんか気分悪くなってきたな」「おっいいね」

何故か嬉しそう目を細めてニコニコする彼はてんこと呼ばれている、まるで太陽のように嗤うてんこ

ボクタイのおてんこ様からあだ名をつけられたそうだ、ボクタイ結構面白かった記憶もある


そしてはっと気づいた、あぁ…そうか―


「私が対象者ってことね今度は」


「正っ解っ!才能あるよ団三くーん」


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