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第16話 超大国の影、超大国たらんとする...

「ここはどこだ?」

俺は誰だっけ…俺は斎藤直人、そうだ、斎藤直人!

ってそんなことよここはどこだ?

なんというか。

なんというか…言語化しがたい、形容しがたい奇妙な空間。

あえて言うならば…混沌とした空間というか。

「やあ、直人君だったっけね」

「!?」

と、唐突に声がする。慌てて声の方を向くと、そこには一人の…少女。

「…誰だアンタ?てかここは一体?」

「私?私は…まあ開闢者…とでも名乗っておこうかな?」

開闢者…いや唐突にそんな中二な名乗りをされてもな。

「それにしても見事な咬ませっぷりだったね」

「…あ?」

かませ…?

…そうだ俺は突然現れたおかしな奴に…。

「あの後のことを教えてあげる。君の幼馴染、ナギちゃんが新たなスキルに覚醒して、あの世界最強クラスだったあの女を倒し倒したんだよ?」

「…そうかよ」

こいつが何者でここがどこで何故そんなことを知っているのか知らない、だがこいつの言ったことが事実であろうと何故か理解できる。

「はっ、それでアンダードックな、かませ犬ってわけか俺は」

「そうだね」

はぁ…まあそんな気がしていた。

…詳しくは話したくねぇ…だが昔からそうだった…ナギはどこかまるで物語の主人公のようで俺は脇役のようで…。

だからユニークスキルを手に入れた時、やっとナギの…あいつの横に並べると思っていた。

…だが結局この様か…ははっ。

「悔しくないの?」

少女がそんな風に問いかけてくる。

悔しくないか、ねぇ?

「はっ、心のどこかでわかっていたさ、俺はどうせこうなるってな…だから悔しくなんか…ない…分けねぇだろ」

ああ、悔しいさ!マリアナ海溝ぐらい深く悔しいさ!

馬鹿みたいなやられ方をして何にもできなかった!何が戦車だよクソがっ!

「…そう、なら安心した」

「はっ?安心?」

「だって悔しく感じるってことはまだ、その役回りを受け入れたわけではないのでしょ?」

「…ああ、そうだな」

そうだ、俺はあいつの横に…並びてぇ…友人として。

「じゃあこれをあげるよ」

と、そういうや否や少女はこちらに何かを投げてくる。それを慌ててキャッチする。

「…っ、これは…なんだ?銃」

それは…赤黒い汚れが付いた古めかしいリボルバー拳銃。

「時に君は合衆国という国家についてどんなイメージがある」

「ああ?イメージ、アメリカの?」

なんだ藪から棒に…イメージねえ。

なんとなしに受け取った拳銃を見る。

赤黒く汚れたそれは…なんとも不気味だ。

「まあ、治安は…あんまよくねぇと聞くが」

なんかニュースでよく銃撃事件のこととか聞くしな。

「…堅実なGDP成長率、理想的な人口推移、豊富な資源、世界にまたがる文化力、圧倒的な軍事力そんな一見理想的な国家に見える国…そうだね現実は…悪化する治安、差別によるヘイトグラム、国家の分断、薬物の萬栄、果ては陰謀論が生勢いづく…まさに悪夢のバーゲンセールだね」

「…それがなんだってんだ?」

「君の幼馴染、ナギちゃんはそれを認識しながらあえて合衆国の光の部分に焦点を当てた能力を行使している…でもかの国の影はずっと、ずぅーと、光の部分なんかより…深い」

「…」

「その赤黒いSAAシングルアクションアーミーは合衆国の影の部分を凝縮した概念」

「影の部分、か」

ナギがアメリカの光を掲げるなら…俺はその影を掲げる、ということか。

「国家の光の部分を見るより、国家の影を正確かつ冷静な視点で理解する方が何倍を難しくて、何百倍も辛い、でも君がそれを理解して真なるリアリストになれたら…それはこの…【言葉遊び能力バトル】において…絶対的な力になるよ?」

絶対的な力か…。

「はっ、自分の国の影の部分も大して知らねぇ世間知らずな高校生に、異国の影を理解しろとな?なんだ?地域研究の博士号でもとればいいのかよ?」

なんともまあばかげた話だな、全く。

「…だが、それであいつの横に並べるってんならやってやろうじゃねぇか」

ああ、アメリカの影だか何だか知らねぇが…全部、全部、俺の糧にしてやる!

「ふふ、期待しているよ斎藤直人君?」

そう言った少女の姿はだんだん薄れていき…

「…ああ、そういえば聞き忘れていたけど」

「あ?なんだ?」

「君にはもう一人、幼馴染がいたよね?」

…ああ、由美のことか

「彼女のことはどう思っているの?彼女もなかなかに才能が…」

「…恐怖だ」

「…はい?」

「由美はただの友人だ、だがそれ以上に…昔から怖い」

「…ふーむ、それはどう言う?」

「さあな?ただ薄々そう感じているだけだ」

「…うーん、由美ちゃんについてももうちょっと調べてみようかな?…じゃバイバーイ」

少女がそう言うと今度は俺の意識が薄れていき…闇に落ちた。





探索者用の病室、それも個室、一人の少女、北島由美はベットの上で、窓の外を眺める

「すごいね、ナギは…驚いたよ…その成長力、まさに覇権国家のシーパワーを冠するだけあるよね」

由美はそう独り言を呟く。

「…でもね例え覇権国家でも、かつて世界を支配した大英帝国の現状みたいにね…凋落する…現にパクスアメリカーナはほとんど終わりを迎えている」

由美は天井を仰ぎ見る。

「そして次は…祖国がその座に収まる…」

「そうして祖国は…世界の【中原ちゅうげん】になるんだよ?」

由美は…笑う。

「それが嫌だったら…私を止めて見せてね?」

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