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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
9/60

アシェラ

「警戒していて正解だったな」

ディックと詩音は福音女子高等学校を訪れていた。

「何これ……暗闇に学校が包み込まれている」

福音学校の全体がドーム状に闇で包み込まれていた。

外からは闇のドームしか見えない。

「こんなものが現れても、普通の人たちは気が付かないの?」

「まったく気づいちゃいないね。何も見えちゃいないさ。それどころか、何の関心も持ってはいない。認識が阻害されているからな」

ディックが詩音に説明した。

「これも、悪魔のしわざなの? 福音学校が襲われるなんて……」

詩音は闇のドームを見上げた。

「奴らが何をしたいのかは直接会ってみないとわからないさ。さてと、俺はこの中に侵入する。おまえは外で待っていろ」

ディックは詩音にドームの外で待つよう指示した。

「いえ、私も行くわ」

「危険だ。おまえは外にいたほうがいい」

「私は何が起こっているか、この目で見たいの」

ディックは沈黙した。

そして、詩音を連れて行くべきか迷った。

果たして詩音を守り切れるか。

困った。

「命がかかっているんだぞ? それでも行くか?」

「ええ」

「はあ、やれやれ……とりあえず、これを持っていろ」

ディックは大きくため息をついた後、ズボンのポケットからアメジストの首飾りを取り出し、詩音に投げた。

「何、これ?」

詩音は首飾りを受け取って答えた。

「お守りだ。闇の魔力を防ぐ効力を持っている。首からかけとけ」

「わかったわ」

詩音は首飾りを身につけた。

「よし、じゃあ、この中に侵入するぞ。気をつけろよ、俺たちは招かれざる客だからな」


ドームの内側、福音学校では闇の魔力が人々を支配した。

「ウフフフ、みんな闇の魔力に支配されたわね」

アシェラは学校の教師や生徒を闇の魔力で操り人形にした。

彼女たちの顔は無表情で、我を失っていた。

彼女たちはアシェラに操られた人形となった。

それも従順な。

「みなさ~ん、集まってくださーい!」

アシェラは彼女たちに命令した。

すると、彼女たちは従順に集まった。

「いい動きね。うれしいわあ。さてさて、みなさんにはこれから二組に分かれて殺し合いをしてもらいます! 皆さんにはナイフを渡しますから、それで殺してくださいねー」

アシェラは杖をかざして、彼女たちの前にナイフを出した。

彼女たちはそのナイフを手で取る。

「汝の隣人を殺しなさい! まずは二組に分かれてくださーい。そして敵の側には何の情けもいりません。殺してあげましょう!」

彼女たちが二組に分かれて動き出した、その時。

「そうはさせるか!」

パリンと空間が割れて、ディックと詩音が礼拝堂に現れた。

「どうしたの、みんなナイフなんか持って!? 何をするつもり!?」

「あら、変ねえ。ここは関係者以外は立ち入りできないはずなのに」

アシェラはふしぎそうな顔をした。

「これから彼女たちに殺し合いをさせるつもりだったのか!」

「そうよお。だあって、この学校の生徒たちって清らかで、正しくて、善良なんだもの。それに敬虔な信仰心を持っているじゃない? 私そういうのって気にくわないのよねえ。だから、それをめちゃくちゃにしてやりたいのよ」

アシェラは愉快そうに語った。

「それにしても、あなた人間じゃないわねえ。かといって同じ悪魔でもなさそうだし。何者?」

「俺はディック。天使だよ」

「天使? へえ……天使なんて私初めてみるわあ。ふーん、天使ね。それならこの空間に入ってこれたのもうなずけるわねえ。そちらのお嬢さんは人間みたいだけど」

アシェラは詩音を見て言った。

「彼女たちを解放しろ。そうすれば命は助けてやる」

ディックは刀を出して構えた。

「フフフ……いやよお。だってみんなこんなに従順なんですもの。それにこれからた・の・し・いお祭り騒ぎをするつもりだったんだから。私、それを邪魔されておもしろくないわ。あなたには死んでもらうわね。私はアシェラ。悪魔アシェラよ」

「詩音、おまえは下がっていろ」

「わかったわ」

詩音はディックに言われた通り、後ろに下がった。

「これでもくらいなさーい!」

アシェラは杖を前に出し、大きな毒々しい球を放った。

「くらうか!」

ディックはその球を斬り裂いた。

「これは……」

ディックは手で鼻を押さえた。

「私が得意とする魔法はねえ、『毒』よ。さあ、毒気にやられなさい!」

アシェラは毒の球を数多く撃ちだした。

ディックはそれを刀で斬り裂いた。

「ディック!」

詩音が叫んだ。

「どこまで持つかしらねえ」

アシェラは大きな毒の球を杖から撃ち出した。

ディックは居合の構えを取り、毒の球を真っ二つに割った。

そして、ダッシュして、アシェラに斬りつけた。

ディックの刀をアシェラは杖で防いだ。

「危ないじゃない!」

刀と杖が交差した。

ディックは力をこめて、アシェラを押していく。

アシェラは瞬間移動で後方に逃げた。

「まだ、これからだぜ?」

ディックはアシェラに急接近して刀を振るった。

ディックの刀がアシェラを襲う。

「くう!?」

アシェラはディックの刃を防ぐだけで精いっぱいだった。

アシェラはディックに追いつめられていく。

再びアシェラは後方に逃げた。

「はあ、はあ、やるわねえ。でも、これならどうかしら?」

アシェラは杖を横にかざした。

すると、杖は鞭になった。

「このリーチはどうかしらあ?」

アシェラは鞭を振るってディックを打ちつけた。

ディックは鞭を横にそれてかわした。

しかし、アシェラは鞭を器用に操り、連続で叩き込んできた。

ディックは鞭の攻撃を刀で防いだり、斬り払ったりした。

「ウッフフフフ! この鞭の威力はどうかしらあ? なかなか強力でしょ?」

アシェラの言う通りだった。鞭には魔力がこもっており、それが打撃力を上げていた。

「さあて、どうかな」

ディックはアシェラの鞭を刀で両断した。

そして、油断しているアシェラを斬り払った。

「ぐうっ!?」

アシェラから余裕の笑みが消えた。

アシェラのほおから血が流れた。

ディックの刃がかすっていた。

ディックとアシェラのあいだに緊張が走る。

互いに相手を見る。

アシェラは険しい表情をした。

「フフフ、ウッフフフフ」

「何がおかしい?」

「負け、負けよ。私の負け。素直に降参するわあ」

「逃がすと思うか?」

ディックは刀を向けた。

「それはどうかしらあ?」

すると、アシェラの前に生徒たちが集まって列を組んだ。

生徒たちはアシェラの壁となった。

「私まだ、死にたくないの。悔しいけどここは逃げさせてもらうわ。私、真剣に戦うのっていやなのよ。だけど、このまま帰るのも面白くないじゃない? だから、私よりもっと強いかたに譲るとするわあ」

「なんだと? それはどういう……!? 何だ!?」

「いったい何が起こっているの!?」

「ウフフフフ……」

突然校庭に魔法陣が出現した。

ますで大地震でも起こったかのように圧倒的なプレッシャーがディックと詩音を襲った。

それは何か、巨大な、圧倒的な、存在感だった。

「何だ、この存在感は!? 校庭からか!?」

何か、圧倒的なものが来る前触れ。

「いったい何をした!?」

ディックは険しい顔をした。

「フフフ、召喚したのよ。大悪魔バールゼフォン(Baaldzephon)を」

「何だと!? バールゼフォン! 大悪魔バールゼフォンをか!?」

「そうよお。だから続きはバールゼフォンと楽しんで。それじゃあ、さようなら~」

アシェラの足元に魔法陣が現れた。

アシェラはその中に消えていった。

「ディック! バールゼフォンって何?」

「三つの顔を持つ大悪魔だ。普通の悪魔をはるかに上回る力を持っている」

アシェラが消えた後、生徒たちは魔法から解放された。

みな気を失って床に倒れた。

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