表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
7/60

ベルティエ

その日の昼も詩音は屋上に来た。

今日も一人で屋上のベンチに座り、昼ごはんにするつもりだった。

だが、今日は先客がいた。

「ディック」

「よお、今から昼飯か?」

「そうよ」

詩音はディックの隣に座った。

お弁当を取り出す。

「また、同じような事件があったんでしょ?」

「ああ、実はもう現場には行ってきた。同一犯に間違いはない」

「なら、こんなところにいていいの? 犯人を捜しているんでしょう?」

「犯人は意外と近くにいる可能性がある」

「意外と近くに? どういうこと?」

「これは俺の直観だが、犯人はこの学校にいる」

「ウソ!? そんな……この学校と事件は関係ないじゃない!」

「同じ匂いがするんだよ」

詩音は驚いた。

話しが飛躍している。

「匂いって……それってあてになるの?」

「俺は俺の直観ちょっかんを信じる」

「あなたが天使なのはわかっているけど、匂いだなんて……」

詩音は話についていけない顔をした。

「だから、俺がここにいるんだよ。ここで見張って、犯人のしっぽを捕まえてやる」

ディックはニヤリと笑った。


男は亜空間でヘルハウンドを召喚した。

気に入らない目をした男子生徒三人をヘルハウンドのエサにした。

男にはその目つきが侮辱と感じた。

「いい子たちだ。実に忠実に主人の命令を果たしてくれる」

その時亜空間にヒビが入った。

ガラスのように空間がパリンと割れて、穴ができた。

そして、ディックと詩音が入り込んだ。

「ちっ、少し遅かったか」

三人の男子高校生はすでにかみ殺されていた。

詩音は男を見て驚いた。

「高島先生!? 高島先生が犯人だったの!?」

「おやおや、ほかの生徒にも見られてしまったか。では君にも死んでもらうしかない」

高島は淡々と答えた。

「そうはいかないな。おまえの犯行もここで終わりだ!」

「いでよ、ヘルハウンド!」

高島がヘルハウンドをさらに召喚した。

なん十体ものヘルハウンドがディックを凝視する。

「殺せ」

ヘルハウンドが一斉にディックに襲いかかった。

ヘルハウンドの牙と爪が妖しく光る。

ディックは刀を出し、つるぎの舞を踊った。

ヘルハウンドたちを次々と斬り捨てる。

ディックはほんの数分でヘルハウンドを駆逐した。

ディックにとってヘルハウンドは敵ではなかった。

「軽いな」

高島が顔色を変える。

ディックは高島を見下した。

「くそっ! こんなバカな!」

「どうした? これで終わりか?」

「ぼくは悪魔と契約した! そして悪魔の力を手に入れた! その力をおまえに見せてやる!」

高島は手をかざした。

それによって闇の爆発が起きた。

耳をつんざく音が響き渡る。

「ディック!?」

深い煙が立ち込める。

刹那、煙の中から一本の刀が飛びぬけてきた。

のびた刃は高島が持っていた本を貫いた。

のびた刃が短く戻っていく。

「はん、効かねえな」

「しまった!? 本が!?」

「どうやらそいつがないと力が使えないようだな」

高島は落とした本を拾い、力を使おうとした。

しかし、本からはもう魔力が失われた。

「くそ! くそ! なんでだ!?」

「これまでだな」

高島の背後に、ベルティエが現れた。

「ベルティエ! ぼくはおまえと契約して悪魔の力を手に入れた! なのにどうして力が使えない!?」

「フン、もはやおまえには用はない」

「なっ!?」

ベルティエは高島の首をつかみ、高く持ち上げた。

「愚かな男だ。本当に悪魔が人間ごときに従うと思ったのか?」

「なんだと!? どういうことだ!? うぐっ!?」

「私はおまえが破滅する様を楽しく眺めていたのだ。ククク、人間ごときが悪魔の力を扱えるわがないだろう。おまえはただの道化だったのだ」

ベルティエは冷酷に言い放った。

「おまえの命、いただく」

ベルティエは高島から、生命エネルギーを吸い取った。

「ウソ、だ……」

高島はこと切れた。

「フン!」

ベルティエは高島の死体を放り投げた。

「おまえが裏にいた黒幕か?」

「ひどい……」

詩音が言葉を漏らす。

「その通り。私は悪魔ベルティエ。おまえは何者だ?」

ベルティエはディックを見下した。

「俺は大天使ザドキエル」

「なるほどな。天使であればあの道化のしっぽをつかめたわけだ。さて、おまえは私の手で殺してやろう! 真の悪魔の力を思い知らせてくれる!」

「なら、行くぜ!」

「む!?」

ディックは俊足でベルティエに斬りかかった。

ベルティエは剣でそれを防ぐ。

ディックの刀と、ベルティエの剣がぶつかり合う。

ディックは霊気の刀を自在に操り、伸縮させる。

ディックとベルティエが斬り合う。

斬撃の応酬はディックが優勢だった。

「くっ、この私が、押されているだと!?」

「どうした、この程度なのか?」

ディックはニヤリと笑い、刀を振るう。

ベルティエは剣で横に薙ぎ払った。

ディックはそれをかわし、ベルティエに一撃を入れた。

「ぐわっ!?」

ベルティエが叫んだ。

「おのれ!」

ベルティエが再度、ディックに攻撃を仕掛けてきた。

刀と剣が交差する。

ベルティエはディックの刀をはじいた。

そこに隙が生まれた。

ベルティエがディックを突き刺した。

「ククク、最後に笑うのは私だったようだな」

「ディック!?」

詩音が声を上げた。

その時、伸縮した霊気の刃がベルティエを背後から貫いた。

「何!? バカな!? 確かに貫いたはず!?」

「残影だ」

ディックが霊気の刃を伸ばして、貫いていた。

ディックは霊気の刃を縮めた。

「おのれえ!」

ベルティエがディックに斬りかかった。

ディックもベルティエにダッシュで斬りかかる。

双方の刃がぶつかった。

ベルティエの剣が折れた。

「ぐはっ!? この私が……この私が、死ぬだと……」

ベルティエは血を流して倒れた。

「詩音、無事か?」

ディックは振り向いて言った。

「戦いの途中でディックが本当にやられたと思ったわ」

「あれはフェイクだ。さてと、元の世界に帰るとするか」

ディックは刀を地面に突き刺して、亜空間を消滅させていく。

すると二人は学校の廊下にいた。

「高島先生……まるでミイラみたい……」

詩音は変わり果てた高島を見つめた。

「悪魔と契約を交わした者のなれの果てさ。この先生は契約する相手を間違えたのさ。じゃあ、俺は消えるぜ? この学校の教師にでも見つかったら厄介なんでな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ