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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
6/60

犯人

高島良夫たかしまよしおは梅園高等学校に勤める教師である。

生徒たちからはメガネをかけたさわやかな先生という評判だった。

担当科目は社会科である。

高島は廊下を歩いていた。

もう午後の授業はすべて終わった。

生徒たちには放課後だった。

ふと、高島は十人以上集まっている女子生徒に目を止めた。

「君たちはもう下校かい?」

高島は声をかけた。

「はい、そうです」

「そうなんですけど……」

女子生徒たちはみんなで顔を見合わせた。

不安そうな顔をしていた。

「どうかしたのかい?」

「いえ、先生、テレビのニュースで、野獣にかみ殺されたっていう」

「ほら、二件あったじゃないですか?」

「ああ、それならぼくもニュースで知っているよ。野獣にかみ殺されるなんて、怖い事件だよね」

「ですから、私たちみんなで帰ることにしたんです」

「早くや獣が捕らえられるといいですけど」

「そうだね。危険だからみんなで集まって帰りなさい。なるべく、一人にならないように」

「はい、わかりました」

「じゃあ、さようなら」

高島は女子学生たちのそばを通り過ぎた。


詩音は放課後、ディックの洋館を訪れた。

詩音には学校が終わった後、もうここに来る習慣になっている。

「ディックは知ってる? 野獣にかみ殺された事件のこと」

詩音はディックに尋ねた。

「ああ、知っているぜ。実は俺もその事件を調べている」

「ディックが? どうして? 天使が働く仕事なの?」

ディックはイスにもたれかかった。

「現場に行ってきた。現場からは魔力を感じた。

俺は二つの事件両方の現場で同じ魔力を感じた。

同一の獣のしわざと思って間違いない」

「そうなの?」

詩音は家から持参した紅茶を飲んだ。

詩音にはこの洋館にコーヒーしかないことが不満だった。

「けどな、野獣がやったんじゃない」

「え?」

ディックは窓を開けた。

カラスが現れて、窓際に止まった。

「でも、多数のかみ傷があったって」

「魔獣を使役して犯人が襲わせたんだ。この事件には犯人がいる。それも悪魔とかかわりを持っている奴だ」

「犯人は魔獣使いだってこと?」

「そういうことだ。問題は犯人が誰で、どこにいるかだ」


ある夜、再び同一の事件が起きた。

殺されたのはアルバイトから帰宅中の男子高校生だった。

全身にできた無数のかみ傷によって高校生は命を落とした。

三体のヘルハウンドがある男子高校生をかみ殺したのだ。

「もういいぞ」

男はヘルハウンドに命じた。

三体のヘルハウンドは男のもとに戻ってきた。

「おまえたち、いい子だ」

男はヘルハウンドの頭をなでた。

「待て!」

男は呼び止められた。

一人の警察官がいた。

警察官はライトで男の顔を照らした。

「おまえが野獣事件の犯人だな! そこを動くな! 殺人罪で現行犯逮捕だ!」

警察官に顔を見られても男は動揺しなかった。

「おやおや、顔を見られてしまった。では生かしておくにはいかないな」

「待っていろ、今逮捕する!」

「殺せ!」

三体のヘルハウンドが一斉に警官に襲いかかった。

「うわああああああ!?」

ヘルハウンドは鋭い爪と牙で警察官を殺した。


「なんだって?」

「今後はより慎重に行動すべきかと」

悪魔ベルティエ(Bertie)が答えた。

「あなた様は軽率な行動を取っておられます」

「何が軽率なんだ?」

「契約によって手に入れた力を人間に試していることがです」

ベルティエは銀色の長い髪に、ハットをかぶり、黒いコートを着ていた。

「ぼくが力をどう使うかはぼくが決めることだ。警察官だって恐れることはない」

「警官を殺したのはうかつだったのではありませんか? より大きなニュースのなるでしょう」

「なら、警官も殺してしまえばいい。ぼくにはそれだけの力がある」

次の日の朝。

散歩途中の老人によって、男子学生と警官の遺体が見つかった。

老人はすぐさま、警察に通報した。

この事件はすぐにテレビで放送された。

警察官たちが現場を指揮っているさなかに、ディックも訪れた。

ディックは同一の魔力の痕跡を確かめた。

同時にディックは梅園高校で感じた同じ匂いをかぎ取った。

同じ匂いがする。

事件と梅園高校が線でつながった。

犯人は梅園学校にいる人物で間違いない、ディックはそう考えた。


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