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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Mayu
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悪魔公ブラッツォ

ディックはアカツキ高校の屋上にいた。

サリエルと同じく月を眺めているのだ。

ディックは缶コーヒーを飲みながら、美しく輝く半月を見ていた。

そこに一陣の風が迫る。

「こんな夜に刺客か。せっかくの月見がだいなしだな」

「おまえがザドキエルか?」

ディックは訪問者をあざ笑うように。

「そうだ。俺がザドキエルだ」

「我はアフォロン。ブラッツォ様の配下だ」

アフォロンは淡々と告げる。

アフォロンには感情が振り落ちているようなところがあった。

アフォロンは長い白髪に白い角、そして白い服を着ていた。

「へえ……またブラッツォの配下が性懲りもなくやって来たのか。やめておけ。俺のところの来ても倒されるだけだ。それとも、ブラッツォの配下は自殺志願者なのか?」

ディックが皮肉で返す。

「我はおまえを殺すために派遣された。ゆえにおまえを斬る」

アフォロンが獲物を抜いた。

それは一振りの刀。

それも白い刀だった。

「どうやら戦う意思はあるようだな」

ディックは黒ワシのレイピアを出した。

「いいぜ。売られた戦いは買ってやる」

アフォロンはすさまじい高スピードでディックの前に現れた。

速い!

ディックはすばやくレイピアでアフォロンの斬撃を防ぐ。

アフォロンはそのスピードのままディックの背後を取った。

背後を取られたディックは対応に迫られた。

アフォロンの斬りがディックに向けられた。

「フッ、この程度か」

アフォロンが言葉を漏らす。

アフォロンはディックが天使だろうと、悪魔たる自分は負けないと思っていた。

ディックの姿が消えた。

アフォロンは驚いた。

確かに斬ったはずだ。

なのにこれは……。

「残像だ」

そこにはレイピアで斬りかかってくるディックがいた。

ディックはアフォロンを斬りつける。

「くうっ!?」

アフォロンは顔を歪めた。

ディックの体は小さい。

このどこにこれだけの『パワー』があるのか……。

ディックはレイピアで一閃を放った。

アフォロンはそれを回避する。

アフォロンは確かにディックの斬りを回避した。

しかし、軽く斬れていた。

「くっ……これがザドキエル……」

「おや、かすっただけか。やはり速いな。それにそのスピード……その正体は風の魔術だろう?」

「!? なぜ、それを!?」

アフォロンが驚愕のまなざしをディックに向ける。

「へえ……風の魔術による超高速戦闘……それがおまえの戦い方か。残念だったな。俺はおまえより速い奴を知っている」

それはサリエルのことだ。

「フン! 余計なことを! この我がおまえを叩き斬ってくれるわ! 風速ふうそく!」

アフォロンはそのすばやいスピードでディックを翻弄するよう動いた。

ディックの周囲を駆け、ディックを円の中に閉じ込める。

それはまるで猛獣を翻弄しているかのようだった。

ディックは全周囲を警戒せざるをえない。

ディックの側からはいつ、どこで、どこから、どのように攻撃されるかわからないからだ。

「もらった!」

アフォロンが一瞬のスピードでディックを斬りつける。

アフォロンの会心の一撃。

アフォロンはディックをしとめたと思った。

アフォロンは背後からディックに斬りつけていた。

ところが……。

「おまえの攻撃はわかりやすい。おまえの攻撃にはフェイントがない。だから、見破るのは簡単だ」

ディックはレイピアを後ろに回してアフォロンの攻撃をガードしていた。

アフォロンの風速は人間であれば回避不能の斬撃になる。

しかし、アフォロンが相手をしているのは人間ではない。

天使なのだ。

ディックは振りむきざまに一撃をアフォロンに叩きつけた。

「かはあっ!?」

アフォロンが斬られる。

ディックはさらに黒い光をレイピアに収束して、黒い光の突きをアフォロンに繰り出す。

ディックの突きはアフォロンをあっさりと貫いた。

アフォロンは倒れると、白い粒子と化して消えた。


その日、マユは夜の祈りのため、礼拝堂にいた。

シベリウス教は一日に四回祈る。

朝、昼、夕、夜である。

夜の祈りは寝る前の祈りだ。

マユは今日も一日無事に過ごせたこと、そして毎日の食事や自身の健康に対して、神に感謝していた。

「フッ、よく祈っているな」

「!? あなたは!? いったい何者!?」

マユは驚きを隠せなかった。

聖ソフィア修道会の礼拝堂。

ソフィア礼拝堂に男が侵入してきたのだから。

「フッフッフ、私はブラッツォ。紅の悪魔公ブラッツォ。ザドキエルの敵対者だ」

男は黒い髪に、赤いマント、黒い服と言ったいでたちだった。

「悪魔公ブラッツォ……ディックの敵ね」

「フフフフ……娘よ、私はおまえを迎えに来た。私といっしょに来てもらうぞ」

マユは反射的に身構えた。

腕を交差させ、拒絶の意思を示す。

「ハハハハ! 無駄なことだ。おまえがいかに抵抗しようと、この私には無力よ。さあ、まどろむがいい」

ブラッツォはマユの前に手をかざした。

すると、マユに強烈な眠りが襲いかかった。

「あっ……ディック……」

マユは抵抗しようとしたが、それもむなしく睡魔に襲われ眠りに落ちた。

マユはその場に倒れた。

「さて、娘よ、来てもらうぞ……エキドナ様のためにね……フフフ……」


ディックは洋館に帰ってきた。

周囲は真っ暗だった。

星々の光が大地に振りかけられていた。

その時、ディックのスマホが鳴った。

ディックは画面を見つめる。

「はい、もしもし」

「ザドキエル様、大変です!」

声の主はカリナ牧師だった。

声に危機感がにじみ出ている。

「おいおい、カリナ。何が大変なんだ?」

「マユさんがさらわれました! さらったのは悪魔公ブラッツォだそうです!」

「ブラッツォが? そうか。俺のもとにアフォロンが来たのはマユをさらう邪魔をさせないためか」

「ザドキエル!」

「アニキ!」

そこにサリエルとミリエルがやって来た。

「どうした、二人とも? 何かあったのか?」

ディックは聞き返す。

「俺は雷の竜に襲われた」

「あたしは悪魔騎士に襲われたわ」

「!? そうか!」

ディックの中でパズルのピースが組み合わさった。

これもすべてはブラッツォがマユをさらうために仕組んだことなのだろう。

「二人とも、聞いてくれ。今回の襲撃は悪魔公ブラッツォの手のものによる。このブラッツォの目的は深淵の太母エキドナを復活させることらしい。このエキドナも闇の化身であり、かつて戦ったバールゼブル並みの力を持っている。ブラッツォはマユをエキドナ復活のために利用するつもりだ」

「ということは、二人はもう魔界に?」

サリエルが問いを発した。

「おそらく魔界のエキドナ神殿に連れて行かれたのだろう」

「……アニキ、行くんでしょう?」

ディックは揺るがぬ決意を秘めた瞳で。

「ああ、おまえたち。俺に力を貸してくれないか?」

「フン、おまえの頼みを断ると思ったのか? 俺もいっしょに行くぞ」

サリエルが断言した。

「あたしも行くわ。マユちゃんをこのままにしておけないもの。悪魔さんにひと思いさせてやりましょう!」

「おまえたち……感謝する!」

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