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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Mayu
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秋山 アカリ

アカリは震える足を引きずって、教会までやって来た。

アカリはシベリウス教徒ではない。

しかし、漠然と自分の心……いや、アカリ自身は意識していなかったが、彼女の「魂」が教会へとアカリの足を運ばせたのだ。

アカリは教会の外にやって来たが、なかなかその中に入る勇気が出なかった。

アカリは長い茶色の髪に、アカツキ高校の制服だった。

アカツキ高校に制服は上はブレザー、下はスカートだった。

宗教……日本では宗教はいかがわしいものとされている。

それも無理はない。

日本の宗教団体が求めているのは「カネ」であって、「信仰」ではない。

あきれたことに、カネをどれだけ献金したかという献金額で人の評価をするくらいだ。

アカリもそのため、宗教には怖いという思いもあった。

しかし、その一方で宗教を求める自分がいるのもわかっていた。

アカリの魂は宗教を求めている。

自分のこの矛盾にアカリは悩まされた。

「……やっぱり、自信がもてないよ」

アカリはつぶやいた。

シベリウス教はどうなのであろう? 

シベリウス教は自分に真の救いをもたらすであろうか?

そんな事を考えながら、アカリは教会の扉を眺めていた。

「あら? あなた、どうしたの?」

「!? えーと……」

アカリはどぎまぎした。

心拍数が上がる。

やましいことをしているわけではなかったが、アカリにはどこか落ち着かないところがあった。

その場に現れたのは一人の女性。

女性は修道服をまとっていた。

この女性はマユだった。

マユはたたずんでいたアカリに声をかけたのだ。

アカリはそれに驚いて固まってしまった。

「もしかして、教会に興味があるの?」

笑顔でマユは尋ねる。

アカリはしどろもどろになる。

「ご、ごめんなさい! なんでもありません!」

「あ!」

アカリはその場から逃げ出してしまった。

アカリには勇気がなかった。

それはただの勇気ではない。

未知の物に触れる勇気だった。

だが、シベリウス教ではこう考える。

「まだ『その時』ではなかった」

何事にも「その時」というものがあり、「その時」にそれは達成される。

アカリにとってはまだ「その時」ではなかった。

そこにミリエルが現れる。

「あれ? どうしたの、マユちゃん?」

「ミリエルさん……」

ミリエルは心配そうにマユに尋ねる。

「ええと、今女子高生が教会をじっと見つめていて……」

「ふうん、そう……教会に入りたかったのかもしれないわね」

「そうですね」

マユの目はいなくなったアカリの背を見つめていた。

「きっと、まだ『その時』ではなかったのかもしれません」

今のマユは『その時』の意味を知っていた。

マユは一人のシベリウス教徒になった。

「あの子が本当にシベリウス教の門をたたくなら、その時門は開かれるでしょう。できればまたやってきてほしいですけど……」

マユは小さく笑った。

「マユちゃん、礼拝に行きましょう」

「はい、そうですね」


アカリは教会から逃げて、公園にやって来た。

この公園は梅園市に昔からあるもので、アカリもよく小さいころは遊んだのだった。

アカリは当然ながら、学校をさぼっている。

アカリはそれが悪いと思いながらも、自分の心の問題に向き合っていた。

アカリはベンチに座った。

アカリは自分の胸の中心に手を当てた。

アカリは自分が宗教的なものを求めていることに気づいていた。

ただ、まだ勇気がなかった。

さきほどはお姉さんに失礼なことをしてしまった。

だが、あの時はとっさのできごとで動揺し、うまく対応できなかったのだ。

宗教とは何であろうか。

なぜ自分は宗教など求めているのか。

親や兄弟姉妹、友人は宗教はいけないという。

アカリは宗教の本を読んで、日本の宗教の危険性を知っていた。

入ったら、おカネを求められることも……。

アカリはシベリウス教に興味を持った。

シベリウス教の思想では『愛』が重視されていた。

アカリは現代日本のすさんだ人間関係が『愛』の欠如によるものだと思っていた。

「はあ、どうしよう……このまま学校に行こうかな……」

アカリは別に学校が嫌いではない。

特別、トラブルを抱えているわけでもないし、いじめに遭っているわけでもない。

アカリには学校の優等生たちの在り方には疑問を持っていた。

あれは『良い子=グッドチャイルド』を演じているだけではないかと……。

アカリは日本の社会全体が良い子と不良で構成されていると思っていた。

この世界に『悪』は今だ現れていない。

この『悪』とは相対的な悪のことである。

新しい価値は『悪』から生まれる。

それは来るべき次の時代を先取りするものなのだ。

アカリは自分の心を自分で見つめた。

やはり、心に空虚感がある。

これはどうすればふさがるのだろう。

これは自分の心が何かを求めているからだ。

アカリは自分が求めているものを知っていた。

それこそが宗教だったのだ。

アカリとは宗教とは自分を救ってくれるものだった。

宗教とは何であろうか。

まず、『救い』である。

そして、もう一つは『治療』である。

『癒し』と言ってもいい。

宗教はほかに自我意識の確立を促し、人生に意味と価値をあたえるもの。

聖なるものの世界。

日本人には『聖なるもの』に対する感性がないように思われる。

これは日本人が宗教による支配を経験していないからだと思われる。

Hierokratia――聖なる支配。

アカリはまだ自分に合った本物の宗教と出会っていなかった。

「グハハハハ! おまえ、『覚醒者』だな?」

「な、何あなた……!?」

アカリの目が大きく見開かれる。

アカリの前に異形の存在が現れた。

それのこの存在は言った。

アカリは確かに聞いた。

「かっ、覚醒者って何?」

「ガハハハハハハ! それは宗教を真に求める者のことだ。おまえの魂、この我がもらってやろう! そしてブラッツォ様に捧げるのだ!」

「や、やめて!」

アカリはもがいた。

アカリはのどが締め付けられるように感じた。

(誰か、誰か助けて!)

アカリは心の中で叫んだ。

その叫びは報われた。

「そこまでだ!」

それはアカリにとって救いだった。

そこに黒い帽子、黒い子供用スーツを着た一人の男の子が現れた。

その男の子は黒い細身の剣を持っていた。

アカリは地面に座り込んだ。

「むうっ!? きさま……何者だ!?」

「俺か? 俺はディック・ディッキンソン。天使だ」

「え? て、天使?」

アカリはきょとんとした。

当然だ。

目の前の男の子が天使だとはアカリには思えなかった。

アカリの先入観には天使には翼があるという認識だった。

「ほう……ディック・ディッキンソン……ブラッツォ様の邪魔をする天使の名だ。クハハハハハハ! これはいい! この場でこの俺様がきさまを屠ってくれるわ! 俺様はジェフト! 悪魔ジェフト(Jcheft)だ!」

ジェフトは全身から魔力を放出した。

「あ、あああ……」

ジェフトが放つ魔力はアカリにプレッシャーを与えた。

アカリがすくんで動けなくなる。

これは戦いだった。

天使と悪魔の戦いだった。

ジェフトは頭上に一本の炎の槍を形成した。

ディックは光の槍を形成した。

二人の力によって槍の形状になっていった。

「死ぬがいい、火炎槍!」

「くらいな! 光明槍!」

属性は違えど同じ槍魔法を二人は使う。

投じられた槍が双方の中間で爆破、衝突した。

光明槍は光をまき散らし、火炎槍は高度な熱量を周辺に照射する。

アカリは恐怖で青ざめた。

ディックは地を蹴って瞬時にジェフトの前まで移動した。

それは一瞬のできごとだった。

ディックのレイピアが振るわれる。

ディックのレイピアはジェフトを正面からとらえた。

もはやジェフトに逃げ場はない。

しかし、ジェフトは。

「フン、そんな攻撃など!」

ジェフトは腕についた刃でディックのレイピアを受け止めた。

ジェフトはもう片方の手で固まったディックを殴りつける。

「ガッハッハッハ! くらえい!」

ジェフトの大きな拳がディックを襲った。

ディックはすかさず障壁を出した。

ジェフトのパンチは障壁ごとディックを吹き飛ばした。

ディックの小さな体は飛ぶように吹き飛ばされる。

くるりと一回転し、地面に着地するディック。

ザザザと砂を引きずる。

ジェフトの前に、あまたの火球が形成された。

「クハハハハハハ! これで焼け死ぬがよいわ!」

ジェフトはあまたの火球を弾丸として発射した。

それは「多弾・火炎弾」だった。

火炎の弾丸がディックの前に飛来する。

ディックは黒い光を剣から放出すると、火炎の弾丸を次々と滅多切りにした。

「へっ! そんなんじゃ、俺を殺すのは無理だな。おとなしく逃げ帰ったらどうだ?」

ディックの態度は不遜だった。

これはディックのペースだ。

ジェフトはいら立ち、ディックにペースを乱されていった。

ディックは左手を前に手のひらを上にして突き出した。

そして指を動かして、ジェフトを挑発する。

ディックの口はニヤリと笑っていた。

それはまるでバトルマニア。

「きっ、きさまあ! これで刺し殺してくれるわ! 多連・火炎槍!」

10本の炎の槍が形作られた。

それに対して、ディックは10本の光の槍を形作る。

どちらも同類の魔法を使う。

多連・~槍は多くて10本くらいの数を制御できる。

ジェフトはディックの挑発を真に受けた。

ジェフトは気が付かなかったが、徐々にディックのペースに引き込まれていった。

ジェフトは炎の槍を10本発射する。

光の槍を10本放つディック。

二つの属性の槍が見せ物のように飛び交った。

アカリにはそれが恐怖のショーのように感じられた。

炎の槍と光の槍は爆発して砕け散っていく。

しかし、威力は光の槍のほうが上だった。

「ぎいやあああああああ!?」

ジェフトは身をひねって光の槍の直撃だけは免れた。

「ぐっ、おのれ! 燃え尽きるがいい!」

ジェフトは息を吸い込んだ。

ディックは目では見えなかったが炎が大量に集められていることは看破した。

ディックがレイピアを構える。

それは突きの構え。

ジェフトは口から、炎の息、ファイアブレスをはいた。

もし公園の遊具が浴びたら溶解していただろう。

ディックはスピリチュアリティ―の力をレイピアに送る。

ディックのレイピアに霊気が宿った。

ディックは霊気を光にして、レイピアで突いた。

霊気によるレイピアの突きは伸びて、ジェフトのファイアブレスを貫通、霧散させていく。

ディックのレイピアは伸びて、ジェフトの腹を貫いた。

「ぐっはああああああ!? がはっ!? この、俺様が!?」

ディックは再びレイピアを構える。

そしてジェフトの頭にレイピアを突き刺した。

「!?」

ジェフトは倒れると、黒い粒子と化して消滅した。

「倒した、な」

ディックは一呼吸入れた。

それからおもむろにアカリに近づいた。

ディックはアカリに手を出した。

「立てるか?」

「う、うん……」

アカリは立ってスカートのほこりを払った。

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