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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Mayu
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悪魔ドゥルシャ

「まさか、あのザイドリッツが倒されるとは……さすがはザドキエルと言ったところですか」

「!? あなたは川上先生!」

そこにスズの学校の教師川上 順子が現れた。

彼女は目を細めると、ザイドリッツが消えた場所を凝視した。

「あんたは……人間に化けているようだが、悪魔だな?」

ディックの言葉が突き刺さる。

「え? そんな……」

スズが力なくつぶやく。

ディックは鋭い視線を川上に向けた。

川上は口元を吊り上げる。

「ほほほ、その通り。私は悪魔ドゥルシャ(Durscha)。悪魔ブラッツォ様の配下の一人です」

川上、いやドゥルシャは邪悪な笑みを浮かべた。

スズは怖がって後退する。

スズは川上がドゥルシャという悪魔だと知って、ショックを受けていた。

「おまえもブラッツォの配下か。ということはその目的は……」

「そうです。宗教的人間の魂です」

ドゥルシャがスズを見た。

その視線に本能的恐怖をスズは感じる。

ドゥルシャが言葉を紡ぐ。

「そうか……スズは渡さない。俺たちは戦うしかないな」

「ほほほ、そのようですわね」

ドゥルシャが一本の長剣を構えた。

ドゥルシャ瞳に殺意が宿る。

「おほほほほほ! ザドキエル! この私の剣技を見せて差し上げましょう!」

ドゥルシャがディックに斬りかかった。

ディックはレイピアでガードする。

ドゥルシャの剣はディックをレイピアごと斬り裂いた。

ドゥルシャがにやりと笑う。

その直後、ドゥルシャにレイピアが振り下ろされる。

「なっ!?」

ドゥルシャは驚きを隠せない。

ドゥルシャは手ごたえを確信していたのだろう。

ディックを殺したと……。

「見誤るなよ、この俺を……」

「くっ!? いったいなぜ!?」

「さっきのは残像だ。おまえは俺の残像を斬っただけだ。それにおまえの攻撃をそのまま受けるほどバカじゃない。おまえの攻撃……あれは空間断裂だな?」

「なっ!? 先ほどの攻撃で私の攻撃を見切ったというの!? バカな!?」

ドゥルシャがディックの言葉に驚愕する。

「それが本当かどうか、確かめたらどうだ?」

ディックは余裕の笑みを浮かべる。

「ええい、これでもくらいなさい!」

「スズ! 離れていろ!」

「う、うん!」

ドゥルシャは直線状に斬撃を放った。

空間断裂の衝撃波だ。

ディックはそれを見てあっさりとドゥルシャの攻撃をかわした。

ドゥルシャが剣に魔力を注ぎ込む。

ドゥルシャは一帯に空間を斬り裂く刃を発生させた。

ディックは上昇することでこの攻撃をかわす。

今度はドゥルシャが口元を吊り上げる番だった。

ドゥルシャはディックの背後に突如出現した。

テレポートとは明らかにスピードが違う。

ドゥルシャはそのまま空に浮いてディックを斬りつける。

ディックはすぐさま反応した。

ディックは不意を突かれたわけではない。

この攻撃も特性を知っていた。

「空間跳躍か!」

ディックはドゥルシャの攻撃をレイピアで受け止める。

ドゥルシャは空間を移動して、ディックを斬りつけたのだ。

ディックは黒い光をレイピアにまとった。

黒突連牙剣こくとつれんがけん!」

ディックの技がドゥルシャを襲う。

ドゥルシャは宙に浮きつつ、ディックの攻撃をさばいた。

その顔には焦燥感がにじみ出ていた。

「くっ!? な、なぜ……!?」

ドゥルシャは未知の力でディックを翻弄するつもりだった。

だが、その未知の力はあっさりとディックに見破られた。

あまつさえ、自分のほうが押されるありさまだ。

ドゥルシャは焦った。ドゥルシャは地上に降りた。

ディックも地上に降りる。

「さて、次は何を見せてくれるんだ?」

ディックが不敵な笑みを浮かべる。

ディックはさわやかだった。

ドゥルシャは狙いをディックからスズへと移すことにした。

ドゥルシャはスズを狙って空間斬りを放つ。スズの表情が引きつった。

スズは目をとっさに閉じる。

「よお、大丈夫か?」

そこには不敵な笑みを浮かべたディックの姿が。

スズはディックがにやりと笑っていると思った。

そして実際そうだった。

ディックはスズに向けられた空間斬りを黒い光の剣「黒光剣」で受け止めていた。

スズはディックのそんな様子にどこか安心感を抱いた。

「空間を斬り裂く斬りを受け止めるなんて……この化け物め!」

「まあ、さすがの俺も技を出さないと防げないがな……さてもうこれ以上技は残っていないのか?」

「なっ、なめるなあ!」

ドゥルシャが激高した。

もはや冷静さを忘れ、ただただディックを斬り殺すことしか頭にない。

ドゥルシャは空間転移でディックの前に移動し、ディックを長剣で斬りつけた。

「無駄だ」

それはディックによる宣言。

ディックはドゥルシャの剣を軽く斬りで弾き飛ばす。

「なっ!?」

ドゥルシャは驚愕する。

さきほどの一撃はドゥルシャの全力だった。

それをこともあろうに、ディックはその小さな身と細身のレイピアではじき返したのだ。

いったいどこにそんな力があるのか。

ドゥルシャはもう何度目か驚きの視線をディックに向けた。

そこでがあいた。

ディックはその瞬間を逃さなかった。

ディックは黒光剣でドゥルシャの胸を貫いた。

「がはっ!? この私がかなわないなんて……これがザドキエル……」

ディックは剣を抜いた。

「フフフフフ……」

「? こういう時は聞くんだったな? わざと乗ってやるよ。何がおかしい?」

「フフフ、この私を倒したからと言っていい気にならないことね……ブラッツォ様がおまえを殺す。これは予言よ」

「フム……つまり俺はブラッツォにやられると言いたいわけだ」

「その通り」

ドゥルシャは嬉しそうに声を漏らす。

ドゥルシャはブラッツォの勝利を確信していた。

「ブラッツォ様! あなたの勝利を地獄から見ております! ザドキエルに死を! ははは! ほほほ! おーほほほほほほ!」

そう言うと、ドゥルシャは赤い粒子と化して消えた。


後日、スズは教会に通っていた。

もう頭痛は収まっていた。

スズはスピリチュアリティ―を知った。

スズが知ったのは宗教的な道であった。

もう心に穴はない。

スズは信仰を持った。

スズの心はさながら燃える炉だった。

スズは歌を歌うのは好きだった。

そのため讃美歌のCDを買った。

その歌を歌った。

サトコとは疎遠になった。

スズは今だ現れていない新しい方向性と共に在る。

それに対してサトコは一般の日本人の在り方から一歩もずれていない。

スズの道とサトコの道は交わらなかった。

それでもスズは前に進むだろうし、宗教的な道を歩むだろう。

スズの身に起こったことは他人事ではない。

宗教的な在り方が問われるようになったのだ。

既存の宗教ではそれに答えられない。

問題になっているのは思想と、個人性だった。

神道には思想がない。

仏教には魂の救済がない。

キリスト教は日本人の問題にかかわるつもりがない。

このような宗教的環境では宗教的な人間ほど既存の在り方から離脱し始める。

神道と仏教は共に現代人の信条から不信任されたということだ。

今の日本人は未知の新しい宗教性が求められている。

スズの病気はこうした背景を持っていた。

もちろんディックはそれに気づいていた。

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