表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Mayu
33/60

マユの家族

マユは家に帰った。

「ただいまー!」

「お帰り、マユ」

マユは体が重かった。

そこでマユは自分の部屋に行くことにした。

「お母さん、私疲れているから、しばらく寝るね」

「わかったよ」

このやり取りもいつものことだった。

特別なやり取りではなかった。

マユはベッドに入って横になった。

マユはしばらくすると、涙を流した。

これから自分はどうなってしまうのだろう? 

これからのことを考えるとマユは不安になった。

将来が不安だった。

このまま体が動かなかったら働くことができない。

働けないなら、生活できない。

生活できないなら、生きていけない。

そのことがマユを苦しめる。

「う、う、ううう……」

マユは声を出さないように抑えた。

母に心配をかけさせないためだ。

マユは声に出さないように泣いた。

この苦しみはいつ終わるのだろうか?

それともずっとこのままなのだろうか?


母ランコは家事をしていた。

今晩のおかずはホイコーローだ。

炊飯器ではご飯が炊かれていた。

今ランコはみそ汁を作っていた。

具材は豆腐ともやしだ。

しばらくするとご飯ができた。

「マユ―! ご飯ができたよ!」

「うん、わかったー!」

マユは部屋から出てきて母親と二人きりで食事を取った。

これもいつものことだった。

父親は残業していてめったに定時では帰ってこない。

もっともその「残業」も怪しいものだった。

どうやら父ヒロシは自宅にいるのが気まずいらしいのだ。

母ランコは残業は口実と見ている。

二人は食事を終えると、マユが流しに立った。

養ってもらっているのだから、これくらいはしてあげたかった。

そんな時に父ヒロシが帰ってきた。

「おー、ただいまー!」

「お帰り、お父さん」

「何だい、帰ってきたのかい? 今日は早いんだね?」

ランコが毒のあるセリフを言う。

「いいだろ別に、なんだ、俺が早く帰って来ちゃまずいのか?」

「バカ言うんじゃないよ。ほら、飯は用意してあるからね」

この二人は冷え切った夫婦関係を続けていた。

寝室は別々である。

この二人が破綻していることはマユにもわかった。

それでもこの二人が離婚しないのは結局相互に依存しているからである。

ヒロシは家事と育児を、ランコは収入をそれぞれ依存していた。

「で、どうだったんだよ?」

「どうだったって?」

「だから、病院だよ、病院! マユの病気はどうなったんだ?」

「ああ、それかい。今回の病院もダメだったよ。心因性の病気じゃないかって言っていたけどね」

「シンインセイ? なんだ、それは?」

「つまり、心に原因があるんじゃないかって言うんだよ」

「ほー……それにしても、ちゃんと調べてから病院に行っているのか? 今回は精神科だったんだろ? やれやれ、精神科なんて犯罪者予備軍が通うところだ。なんでそんなところにウチのマユが行かなきゃならないんだよ」

「あたしに聞かないでおくれよ。医者が勧めてきたんだからさ!」

「結局マユの病気は治るのか、治らないのか?」

「医者にも原因不明なんだってさ!」

「なんだそれは! こっちはカネを払って通っているんだぞ? 俺が稼いだカネをどぶに捨てるような使いかたをするなよな!」

「そんなことわかってるよ!」

「まあ、いい。飯と酒だ。まっ、結局はなるようにしかならないんだろ……」

「ちょっとなんだい、そのセリフは? あんたはマユの父親だろう? それが親のセリフかい? あんなマユがかわいそうだと思わないのかい!?」

「そんなわけないだろ! 結局、最悪病気が治らないなら、見合いでもして身を固めたらどうだ? 誰かに養ってもらったらいいんだよ」

「何だい、その言い草は! 結婚は女にとって夢なんだよ! そんな誰でもいいってもんじゃないんだよ! もっともあたしの場合、失敗だったようだけどね」

「あーん? なんだ? 俺になんか文句でもあるのか?」

「ないほうがおかしいね!」

「おい、こら! 誰がいったい養っていると思っているんだ! 俺の給料だろうが!」

「フン! 男が稼いでくるのは当り前さ! それより、あんたこそ家事の一つでもしたらどうなんだい? そのワイシャツにアイロンでもかけられるようになりなよ!」

「なんだと!?」

「なんだって!?」

二人はキレた。

「やめて!!」

そこにマユが割って入った。

「お父さんもお母さんもいい加減にしてよ! 私の病気でケンカしないで!」

マユは真剣だった。

「ごめんなさい、迷惑をかける娘で……自立できなくてごめんなさい」

マユは涙を流した。

二人はそれを見て冷静になった。

視線をさまよわせる。

「酒だ! ヤなことは酒で忘れるに限るぜ!」

「……おふろでも沸かしてくるかい」

この二人は古風だった。

父は実直なサラリーマン。

母はパート。

父は生活無能力者で、母は収入に依存していた。

結局、この二人は自立できないからいっしょに暮しているのである。

マユは自分の部屋に引きこもった。

家族のきずなの無い形だけの関係……。

世間体を気にする二人は離婚など論外だ。

昨今は離婚も珍しくなくなったが、この二人はひそひそと家庭生活を続けていた。

この二人がケンカするのは珍しくなかったが、マユは二人に迷惑をかけていることが気になっていた。

再び、マユは電気もつけない部屋で泣いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ