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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
30/60

社会見学

「おい、詩音、今度社会見学に行かないか?」

午後のひと時、ディックの部屋でのことである。

「何、それ?」

詩音は不審の目を向けた。

「だから、社会見学だよ、社会見学! 人間の社会を見に行くんだよ」

「なんだか、人間らしくない言いかたね」

「それはそうだろ? 俺は天使なんだから。それよりも、どうだ、いっしょに見学に行かないか?」

「別に行ってもいいけど……」

詩音は含みのある言いかたをした。

何やら不満があるらしい。

「あん? なんだ、何か不満があるのか?」

「別になんでもないわよ。行くわよ、行けばいいんでしょ?」

「なんだか投げやりな言いかただな。どうして素直に『はい』と言ってくれないものかね」

「いいでしょう、別に。ふん!」

「わけのわからん奴だ」

詩音はカバンから聖書を取り出すと、静かに読書モードに入った。

この状態の詩音は外から話しかけられることを非常に嫌う。

いわく「読書に専念したい」らしい。

ディックは詩音の不満の理由がわからず、困惑した。

「日時は明日の9時。集まるところはこの洋館前だ。いいな?」

「ええ、わかったわ」


翌日の9時10分前、ディックは洋館の門の前に立っていた。

いつものトレードマークの黒い帽子をかぶっていた。

「おはよう、待った?」

そこに詩音が現れた。

「いいや、たいして待っていない」

詩音はいつも通りの制服姿だった。

白いブラウスと青いスカートだった。

「なんだ、いつもと同じ格好なんだな?」

「だってこれは社会見学なんでしょう? デートじゃなくて?」

詩音はプイっと顔をそむけた。

「それで昨日からすねていたのか」

「デートじゃないなら服を変える必要がないもの」

「いつまですねているつもりだ?」

「別に。すねてなんかいないわよ」

「十分すねているじゃないか。まあいい。それじゃ、出発するぞ。まずは映画館だ」


ディックと詩音は映画館に入った。

二人は「シャーロッシュ」という映画を見た。

主人公はシャーロッシュという名の探偵で、もともと古かったものを、現代的にリメイクしたものだった。

シャーロッシュはクールな二枚目で、彼には知性のきらめきがあった。

この映画は全体が知的な雰囲気で満ちており、ディックの好みの出来栄えだった。

ディックは映画のあいだ詩音の様子をうかがった。

詩音は映画には不満はないようであった。

2時間半もの長さがこの映画にはあった。

映画を見終わった後。

「そろそろ昼食にしよう」


ディックと詩音はレストランに入った。

開いている席に案内される。

「それにしても楽しい映画だったわね。最後までドキドキしちゃった」

「だろ? 見る価値があっただろ? やはりウィットがある作品はいいな」

「シャーロッシュは知的な紳士で魅力的だったわ。でも、アクションもこなすなんて意外ね。肉体派探偵でもあったのね」

「そいつは俺も気に入った」

「それに謎と秘密が交錯するストーリー! すてきだったわ!」


「さてと、次は水族館に行くとしようか」

ディックと詩音は水族館に行った。

水族館ではシャチのショーを見ることができた。

シャチはボールを使ったアクションを見事にこなした。

ほかにはイルカとアザラシのショーもあった。

ディックは自動販売機で缶コーヒーを買った。

詩音はお手洗いに行っていた。

ディックは缶コーヒーを開けて、口をつけた。

「ふう……こんなもんかな、社会見学は」

「おまたせ。今戻ったわ」

「おう、おまえも何か飲むか?」

「いいえ、私は結構よ」

「そうか」

ディックは缶コーヒーを飲み終えた。

ディックは缶をごみ箱に入れた。

「シャチのパフォーマンスはすごかったな」

「ええ。この水族館で一番のウリなだけはあったわね。私、夢中になって見とれちゃった!」

詩音が笑顔を見せた。

二人は水族館の外に出た。

それからバスで駅まで向かった。

「くしゅん!」

「? 大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ」

詩音がくしゃみをした。

「まあ、今ごろは花粉症の時期だからな。くしゃみは無理もな……!?」

「どうしたの、ディック?」

「詩音、前に渡した『あれ』を持っているか?」

「え? あれって?」

「アメジストの首飾りだ!」

「ああ、それならいつも……」

「それをすぐにつけろ!」

「? え? どういうこと?」

「説明は後でする! 今すぐつけろ!」

「え、ええ、わかったわ」

詩音は困惑しつつも、ディックの指示に従った。

二人はバスから降りて駅に着いた。

「魔花ラフレシア(Rafflesia)の花粉が飛んでいる! ラフレシアの花粉は人を狂わせる! 何者かが魔界から召喚しやがった!」

「!? ディック、見て! あそこで人が!」

詩音はディックに男たちが乱闘している場所を指し示した。

「ラフレシアの花粉の濃度が上がっている……」

街の人々は狂ったように暴徒と化し、街中の至る所で乱闘が起きた。

「それをつけていなかったら、おまえも暴徒になっていたかもしれないぞ?」

「ええ、そうね」

「さて、冷静におしゃべりしている場合じゃないな。ラフレシアを見つけて始末する必要がある」


垂直方向に高くそびえたったビルの上――

その頂上に悪魔ゼラキエルがいた。

ゼラキエルは周囲を見わたした。

地上では人々が暴徒と化して乱闘していた。

それをゼラキエルは楽しそうに眺めていた。

「くっくっくっく。フハハハハ! 人間どもよ、暴れるがいい! 憎しみ合い、殺し合え! そうして闇の力が、ダークフォースが集まるのだ!」


「ワシの目――」

ディックは視点を変えた。

まるで高性能コンピューターが上空から見下ろすように自分の目で見た。

俯瞰的に上空から眺める。

それは極めて高度な情報処理能力だった。

「見つけた! あそこか! 詩音、行くぞ!」


ディックと詩音はラフレシアの地点に到着した。

ラフレシアは禍々しい赤い花だった。

この巨大な花は地に直接根付き、茎がなかった。

その代わり太い触手を持っていた。

「これがラフレシア……なんて禍々しいの……うっ!? 気持ち悪い!」

「無理もない。人を狂わせる毒性を持っているんだ。詩音、おまえは離れてろ!」

「わかったわ……」

「さてと、どうこいつを片づけたものかね。炎で焼き払うか」

ディックは炎を放射した。

ラフレシアは炎に包まれて、悲鳴のような奇声を発した。

すると、ラフレシアは活性化し始めた。

ラフレシアの触手がうねる。

ラフレシアは触手を滑り込ませてディックに迫った。

「おっと!?」

ディックは黒ワシのレイピアを取り出すと、後方に大きくジャンプし、触手をかわした。

ラフレシアの触手はなおもディックを追ってきた。

ディックはレイピアで触手を切断した。

次々と迫るラフレシアの触手を、ディックは斬り捨てた。

「こいつをくらえ!」

ディックは左手に魔力を集中させた。

ディックはラフレシアの真上に、爆炎弾を出現させた。

爆炎弾は大きく爆発し、ラフレシアを巻き込んだ。

ラフレシアは木っ端みじんに吹き飛んだ。

「ラフレシアを倒せたか。これで花粉も消えるな」

「ディック、ラフレシアを倒したのね」

「ああ、これで暴動も沈静化するだろう」

「また、おまえたちに邪魔されたな」

「おまえは……!? ゼラキエル! おまえのしわざだったのか!」

「その通り。人間どもを暴徒化し、暴動を起こさせていたのだ。闇の力を集めるためにな。今回は思ったほど闇の力を集めることができなかった。私にもがまんの限界はある」

紫の衣のゼラキエルは杖を構えた。

「珍しいな。今回はやる気か。いいぜ。相手になってやるよ」

ディックも剣を構えた。

ゼラキエルは杖の前に魔力を収束させた。

「死ぬがいい!」

ゼラキエルの杖から闇のレーザービームが発射された。

「くらうか!」

ディックはサイドステップでレーザービームをかわした。

ゼラキエルは小さな隕石弾を放ってきた。

ディックは剣でそれらを打ち砕いた。

「今度はこっちの番だぜ」

ディックはダッシュして、ゼラキエルに斬りこんだ。

ゼラキエルは杖でディックの剣を受け止めた。

ゼラキエルは杖の先端に魔力を形成し、槍のようにした。

ゼラキエルは連続突きを放った。

ディックはそれらを受け流すと、剣で反撃した。

ゼラキエルは後方に瞬間移動し、ディックの突きを回避した。

「我が魔力の力、受けるがいい!」

ゼラキエルは氷の塊を降り注がせた。

「おっと!」

ディックに氷の塊が次々と降り注いだ。

ディックは氷の塊を器用にかわした。

「終わりだ!」

ゼラキエルはディックを狙ってレーザービームを撃った。

「くっ!?」

ディックは光をまとい、剣でレーザービームを受け止めた。

「はあ、はあ……」

「フッ、今日はこのくらいにしておくとしよう。さらばだ」

そう言うと、ゼラキエルは魔法陣の中に消えた。

「ちっ! また逃がしちまったか」

「ディック、大丈夫?」

「ああ、詩音か。俺は大丈夫だ。おまえこそ大丈夫か?」

「ええ、大丈夫よ」

「まったく、とんだ社会見学になっちまったな」

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