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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
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詩音の来訪

詩音は学校が終わると、ディックの洋館に向かった。

足が自然に動くようだった。

昨日のことはまだ、困惑していた。

だから、その困惑を晴らすためにも、詩音はディックのもとを訪れてみようと思った。

詩音は洋館の門を開けて中に入った。

執務室の前でノックをする。

「開いてるぞ」

ディックが返事をした。

詩音は部屋の中に入った。

中ではディックがほおづえをついて待っていた。

「なんだ、まだ混乱しているって感じだな?」

「ええ、今だに信じられないわ」

詩音和ソファーに腰かけると、あくびをした。

「昨日は眠れなかったのか?」

「ええ、そうよ。眠れるわけがないじゃい」

「そうか。まだ信じられない、ね」

ディックは皿の上にあるコーヒーを口にした。

詩音の目はいかにも眠たそうだった。

今日は授業中に居眠りをしてしまったのだから。

「あなた、本当に天使なの?」

詩音は疑り深く尋ねた。

「そうだよ。何か変か?」

「どちらかと言うと悪魔に見えるわ」

「ははは、悪魔、ね。そうかもしれないな」

ディックは再びカップに口をつけた。

コーヒーを味わっていく。

そこにノックがあった。

「はあい、アニキー! ひさしぶりー!」

ドアを開けてシスターの服を着た女性が入ってきた。

身長は高めだった。

「ミリエル(Miriel)、何か用か?」

「何よ、かわいい妹が兄に会いに来たっていうのに。あら? 人間のお客さん? めずらしいわね。アニキのところにこんな子がいるなんて」

話を聞いている限り、ディックとミリエルは兄妹らしい。

「あたしはミリエル。あなたは?」

「はい、私は緑川詩音と申します」

詩音は頭を下げた。

それにしてもこの人は身長が高い。

一番興味深いのはこの二人が兄妹だということだ。

兄は子供、妹は大人。

身長のコントラストが詩音には非常に目についた。

「ということはあなたも天使なのですか?」

「あら、もしかしてアニキが天使だって知ってる? ねえ、アニキ、言ったの?」

「ああ、言ったよ。もっとも悪魔のほうに見えるって言われたけどな」

「あっはははは! 言えてるかも。そうよ。私も天使なの」

ミリエルは部屋の中に入ってディックの机の上に座った。

うちのアニキって不愛想でしょう? ごめんなさいね」

「いいえ、特には」

「ふん、愛想がなくて悪かったな」

「アニキ、ほんとにコーヒーが好きね。中毒者みたい。いったい何杯目?」

「さあな、数えたことないな。さてと、俺は外を散策してくる。おまえたちはどうするんだ?」

ディックがイスから立った。

「あたしも外に出るわ。あなたはどうするの、詩音さん?」

「私はここに残ってもよいでしょうか?」

「いいぜ。もし興味のあるような本を見つけたら、読んでもいいぞ」

そう言うとディックはミリエルと共に外に出て行った。

詩音は一人部屋に残された。

とりあえず、本棚のタイトルを詩音は見た。


ディックはミリエルと共に繁華街を歩いていた。

いろんな店が軒を重ねる。

ディックは買い物をしたくてここを歩いているわけではない。

ディックは見回りをしていた。

悪魔が人間に害悪を為す前に、発見するためだ。

「ねえ、アニキ?」

「なんだ?」

「あの子のこといじめてない?」

「そんなことするか」

「そお? アニキが詩音ちゃんに意地悪しているんじゃないかと思って」

「俺はガキじゃないんだぞ」

「でも姿は子供よね?」

「フン」

「あ、アニキ、あの子」

「ん?」

ミリエルは一人の女子生徒を指で指した。

ディックはその女に見覚えがあった。

たしか詩音にいっしょに帰ろうと言っていた女だ。

今日は一人らしい。

「あの女……」

「あの子には印がつけられているわね」

「探ってみるか」

ディックは彼女の横を通り過ぎると、反転して彼女を追った。

「誰だかわからないが、高位の悪魔に間違いないな。このあいだのザコとは違う」

「後を追ってみましょう」

ディックは彼女の名前を探った。

何かないか遠目で調べた。

すると、彼女のカバンに書いてあった。

木村由紀子きむらゆきこ、か」

ディックは彼女を見張ることにした。

いずれ悪魔が彼女に接触しようとするだろう。


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