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Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
24/60

メロディアン

暖かい陽気の午後だった。

詩音はいつも通り、学校が終わった後、ディックの洋館に向かっていた。

足が自然に歩くような気がした。

詩音がディックの洋館に通うのは日課になっている。

今日もいつもと同じ道を歩いていた。

いつもと同じはずだった。

突如として、黒い車が詩音の後ろに急停車した。

ブレーキ音が鳴り響く。

車の中から黒スーツの男が出てきた。

男は睡眠剤付きの布を詩音の顔に当てがった。

「んん!?」

詩音は抵抗しようとしたが、視界は闇へと落ちていった。

詩音は男たちに誘拐された。


ある日の午後、ディックは洋館の執務室でゆったりと過ごしていた。

部屋には音楽が流れ、コーヒーの香りが漂っていた。

「いい日だねえ。陽気が気持ちいい」

ディックはイスに座りつつ、背伸びをした。

「こんなにいい天気だと眠くなって……」

刹那、ディックは体を横に向けて緊急回避した。

窓ガラスが割れて、ディックの机にボウガンの矢が突き刺さっていた。

ボウガンの矢には白い紙が巻き付けてあった。

「アニキ! いったい、何の音!?」

「ミリエルか。今調べているところだ」

「窓ガラスが割れてる。それに矢が……」

「いったい何ようだ?」

ディックは紙を広げて目を通した。

「娘は預かった。メロディアン」

そう書かれていた。

「メロディアン(Melodian)……悪魔メロディアンか」

「メロディアン? アニキ、知ってる奴?」

「マフィアのボスをしている悪魔だ」

「サリエル!?」

そこにサリエルが現れた。

現れたサリエルにミリエルは驚いた。

「サリエル、解説ありがとう」

「どうやら、おまえたちが叩いたマフィアの取引にはメロディアンの手下もいたらしいな」

「そのようだ。『娘』ってのは詩音の事だろ、おそらく。もう来ていい時間なのに詩音はまだ来ていない。ここに来る途中でさらわれたか……」

「あの取引を潰したのがここまで悪影響を与えるなんて……はあ、甘かったわね」

「どうするつもりだ、ザドキエル?」

「もちろん、詩音を返してもらいに行くさ」

そう言うと、ディックは黒い帽子をかぶった。


ディック、ミリエル、サリエルの三人はメロディアンの屋敷を訪れた。

メロディアンの屋敷は豪華でまるで宮殿のようであった。

外観はあふれる富と権力を見せびらかしていた。

「ここがメロディアンの屋敷か。富と権力を見せびらかしてやがる。悪趣味だ」

「ザドキエル、ここの来たのはいいが、中には入れそうもないぞ?」

「無理やり入るなんて言わないでよね、アニキ?」

「そうは言ってもな……普通に入れないんじゃ、強引に……ん?」

「この屋敷に用がおありなの?」

「あんたは?」

「私はペルセフォネ(Persephone)。メロディアンの妻よ」

そこに一人の妖艶な女性が現れた。

「あなたたちが何者かは興味はないわ。ねえ、あなたたち、この屋敷の中に入りたいの?」

「そうだ。俺たちの仲間を預かってもらっているんでね。それを返してもらいに来たんだよ」

「……いいわ。中に入れてあげる」

ペルセフォネは屋敷の門を開けてディックたちを招き入れた。

「……いいのか? 俺たちを入れて?」

「結果的にどうなるかは私の知ったことではないわ」

「なるほどね、よくわかったよ。ミリエル、サリエル、行くぞ」

「あんまりいい予感はしないけど……」

「中では戦いになる可能性があるな」

「まあ、気にするなよ。その時はその時さ。ペルセフォネさん、俺たちはメロディアンと話がしたいんだが?」

「夫と話がしたいのね? いいわ、案内してあげる」

ディックたちはペルセフォネの後に従って、屋敷の中に入っていった。


メロディアンとの会談は予想よりも早く実現した。

メロディアンは食堂で、妻とは別の女性を伴っていた。

「これは賓客ではないか。このような客が来るとわかっていたら、用意をしておいたものを。まあ、せっかくだ。座ってくれたまえ」

メロディアンはテーブルに備え付けられたイスを指した。

ペルセフォネは例の、別の女性を見ると、目を細くした。

それからメロディアンの隣の席に座った。

「せっかくだ。座らせてもらうぜ」

ディックがミリエルとサリエルに合図した。

「これぞザドキエルか。君の活躍は聞き及んでいる。下級悪魔がおびえるほどの勇名をな。君は私たち悪魔のあいだでも有名なのでね」

「いったい、どんな話なのやら……」

ディックにはメロディアンが伴っている別の女性が気になった。

「詩音を返してもらいに来た」

ディックは単刀直入に言った。

「詩音? ああ、緑川詩音か。確かに、『預かっている』とも。だが、問題は返すべき『理由』だ」

「詩音は俺たちの仲間だ」

「ああ、そうだろうな。私は君たちがどうしてここに来たのか知っている。知ることは私のビジネスの一つだ。私には彼女を返す『理由』などまったくない。そう、理由などない」

メロディアンは隣の女性といちゃつき始めた。

まるで三人に見せびらかすようだった。

ペルセフォネはそれを明らかに不快に感じているようであった。

彼女は大きくため息をついた。

「私は富も権力も持っている。君たちとする取引はない。そして女も……」

メロディアンは隣の女性の髪を軽やかになでた。

「君たちは緑川詩音を返してもらいにここに来た。しかし、私には彼女を返す、『理由』などまったくない」

メロディアンは右の指を左右に振った。

「私がその気になれば梅園市を支配領域に治めることも可能だ。おっと、こういう話は天使の前ではしないことにしよう。なにせ、天使には冗談が通じないからな」

「天使に冗談が通じないんじゃない。我々が峻厳なだけだ」

サリエルが反論した。

「さて、私は忙しい身でね。君たち暇人とは違って、私には『仕事』があるんだ」

メロディアンは隣の女性を伴って席を立った。

「どこに行くつもり、あなた?」

「おいおい、それ以上聞くなよ、無粋だろ?」

メロディアンは女性を伴って去っていった。

もはやディックたちのことは関心にないようだった。

「それでは諸君、失礼させていただく」

メロディアンは女性と共に食堂から去っていった。

「うまくいったとは言えないな」

とサリエル。

「どうするの、アニキ?」

「さて、どうしたものかね……」

ディックたちは行き詰った。

「彼女に会いたいのね? ならついてきて。会わせてあげる」

そこに一筋の光明が差し込んできた。


「あの人の女遊びにはもう、うんざり!」

ペルセフォネが言い放った。

ディックたちはペルセフォネの後についていった。

「昔はもっと違ってた。……紳士だった……」

「……」

ディックは公然と不倫するメロディアンにあきれるばかりだった。

この件には面倒なのでかかわるのをやめた。

「ここよ。ここに彼女がいるわ」

ペルセフォネは一つのドアの前で立ち止まった。

ディックはそのドアを開けた。

「詩音!」

「ディック!?」

部屋の中では詩音が立っていた。

「私一人で不安だったの……」

詩音がディックのもとに近づいてきた。

「もう大丈夫よ、詩音ちゃん。私たちがついているわ」

「おい、長々と話をしている暇はないぞ。メロディアンに気づかれる前にここを去る」

「ミリエルさんもサリエルさんも助けに来てくれたのね。ありがとう」

「よし、ここからおさらばしようか」

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