アゴスティーノ
「まったくバカな奴らだぜ、なあ、おい」
マフィアのアジトは黒い屋敷だった。
アジトの一室にミリエルとアゴスティーノはいた。
「あたしたちがバカだって言いたいの?」
ミリエルはむっとして答えた。
ミリエルの手は手錠で拘束されていた。
ミリエルは床に座っていた。
「だって、そうだろう? 正義感だか何だか知らないが、マフィアの取引に首を突っ込んだんだ。ビビッてうろたえないほうが、よっぽどバカだぜ。あんたはなかなか気が強いな」
アゴスティーノは机にもたれかかった。
「姉ちゃんよ、その気の強さはどっから出てくるんだい?」
「これがあたしの本性なのよ。ほっといて!」
「俺たちはな、ただのマフィアじゃないんだ」
「なにそれ。普通じゃないから特別だって言いたいの?」
「……」
アゴスティーノは銃を取り出すと、ミリエルに向けた。
「こいつが怖かねえか、姉ちゃんよ?」
「別に。ただ鉛弾を撃ちだすだけでしょ?」
「撃ってやろうか? 痛いぜ?」
「あたしは脅しには屈しないわよ?」
「あんたには人質として役に立ってもらうぜ。それまでは……」
ドカアアアアン!
突如、屋敷の中から音が響いた。
こんな音は今まで聞いたことがない。
「なんだあ!? 何が起こった!?」
アゴスティーノは狼狽した。
異音は続けざまに起きた。
ズカアアア!
バキイ!
ドオオオン!
それを聞いたミリエルはニヤリと笑った。
それはディックとよく似ていた。
正体不明の異音はしばらくすると止んだ。
静寂が支配する。
アゴスティーノは驚きの顔を浮かべた。
いったい何が起きたのか、全く測りかねたからだ。
アゴスティーノにはこの静けさは不気味に感じられた。
アゴスティーノは扉を見つめた。
体に震えが走る。
しばらくすると扉が開いた。
「初めまして。俺がディック・ディッキンソンだ」
「おまえ、どうしてここが分かった!? アジトの場所は教えてなかったはずだぞ!? それに俺の仲間がいたはずだ!? なんで普通に入ってきているんだよ!?」
「事後説明しなければけないな。おまえの手下どもは全滅させた、この俺がな」
ディックは手に黒ワシのレイピアを持っていた。
ディックはそれを軽く振ってみせた。
「ふざけんな! そんな武器で、俺の仲間たちがやられるわけないだろ!?」
「だが、事実は事実だ。何なら見てみるか、手下の様子を?」
ディックは部屋の中に足を踏み入れた。
「!? 来るな! 来るんじゃねえ!」
アゴスティーノは拳銃をディックに向けた。
「そんなもので、どうするつもりだ?」
ディックは余裕の表情を見せる。
「俺はてめえを撃つ! マジだ!」
ディックはニヤリと笑った。
ディックは警告を無視した。
パアアン!
一瞬何が起きたのか測りかねた。
銃弾は発射された。
しかし、ディックには当たらなかった。
「てめえ、いったい何をした!?」
「剣で弾をはじいた。簡単なことだ」
「そんなバカな!?」
「それができるから、今こうしてここに立っているんだが……」
「くそ!?」
アゴスティーノは銃弾をディックに向けて連発してきた。
ディックはあざやかに銃弾を打ち払った。
「あ、ああ、あああ……」
アゴスティーノは体から脱力していくのを感じた。
「さて、妹を返してもらいますかね、アゴスティーノ?」
アゴスティーノは拳銃をミリエルに向けた。
「来るんじゃねえ! 近寄るな! それ以上近づいたら、こいつを撃つ!」
「はい、それまで~」
「!? なっ!?」
ミリエルは白い投剣をアゴスティーノののど元に当てていた。
「てめえ!? なんで!? 手錠はどうしたあ!?」
「壊しちゃった、えへっ!」
「なんだとお!?」
ミリエルの手には壊れた手錠がぶら下がっていた。
「なんだ!? 何なんだ、おまえらは!? 悪魔かよ!?」
「悪魔あ?」
ディックは気を抜けたような返事をした。
ミリエルはウフフと笑っていた。
「まあ、いいか。ほら、これでチェックメイトだ」
「ぐはあ!?」
ディックはアゴスティーノに一撃を与えた。
もちろん殺してはいない。
「アニキ、意外と来るのが早かったわね」
「当たり前だ。俺は仕事は速く処理する男だからな」
「アゴスティーノがやられたようだな」
奥の部屋から白い服を着た紳士が現れた。
「おまえが黒幕か」
「あんた、何者?」
「フッ、もうすでに合っている」
男の姿はゼラキエルに変わった。
「ゼラキエル! おまえだったのか!」
紫の衣のゼラキエル。
「あなた、何が目的だったの?」
「フッ、愚問だ。私の目的はただ一つ。大悪魔バールゼブルを復活させることだ。そのためにこのマフィアどもを利用して、ダークフォースを集めていた」
「ここで決着をつけるか?」
ディックはレイピアを構えた。
「フフフ、理想的とは言えないがダークフォースの収集もこれで良しとしよう。さらばだ」
ゼラキエルの足元に魔法陣が生じた。
魔法陣はゼラキエルの姿を消し去った。
後にはディックとミリエルが残された。
「また、逃がしちまったな。やれやれだ」




