表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Das Testament  テスタメント  作者: Siberius
Das Testament Shion
18/60

シャフカ

それは突然だった。

夜の繁華街に怪物が出現した。

怪物の名はモルゴール(Morgool)。

大きな頭と、植物的な胴体を持つ怪物である。

モルゴールの体は黒緑の色をしていた。

モルゴールは口から、黒い息をはいた。

モルゴールの黒い息が繁華街に立ち込める。

人々はモルゴールの息を吸い込むと、頭を押さえて、悲鳴を上げた。

モルゴールの息は人々の頭を蝕んでいった。

人々は暴徒と化し、互いに攻撃を始めた。

繁華街は暴動に支配された。

突如、一人の影がモルゴールの頭を剣で貫いた。

「これ以上、好きにやらせると思うな!」

影はディックだった。

ディックは空中からモルゴールの頭めがけて降下し、剣でモルゴールの頭を貫いた。

ディックはモルゴールから跳び下りた。

ディックは武器を変えた。

以前は刀だったが、今のディックの武器は黒ワシのレイピアだ。

レイピアは細身の、両刃の剣だ。

モルゴールは倒れると、灰炎を上げて消滅していった。

モルゴールが死んだことで、人々は清浄さを取り戻した。

人々はみな地面に倒れた。

ディックは鋭い目で、モルゴールが消え去る様子を眺めた。

ディックは一撃でモルゴールを始末できた。

それは確かだ。

しかし、ディックは疑念を抱いた。

こいつは今までの敵とは違う……

何か「本質的な異質さ」をディックは感じた。

こいつの存在が何かはわからないが、ディックは本能的に危険な存在と思った。

「!? ちっ!? また侵入してきたらしいな!」

ディックは新たに敵の存在を感じ取った。

ディックは大きくジャンプし、それから夜の空を飛行して行った。


未知の怪物はスーパーマーケットに現れた。

出現したのは粘液質でゼリー状の体を持つ、怪物だった。

この怪物の名はドクラゲ(Dokurage)。

ドクラゲは五体、スーパーマーケットに出現した。

ドクラゲたちはスーパーに訪れていた客たちに猛毒の毒針を撃って毒死させていった。

スーパーの内部は恐慌状態に陥った。

人々は逃げ惑ったが、ドクラゲは無情に人々を毒針で殺害していった。

そこにドクラゲは背後から細身の剣で貫かれた。

剣から聖なる炎が起こり、ドクラゲに体を消滅させた。

剣でドクラゲを倒したのはミリエルだった。

「あと一体!」

ミリエルは剣を別のドクラゲに投擲した。

ドクラゲはミリエルの剣で貫かれた。

「燃え尽きなさい!」

ドクラゲに突き刺さった剣から、聖なる青白い炎が発生した。

ドクラゲは聖なる炎で焼却された。

「まったく、こいつら、どこから現れたの?」

ドクラゲは残り三体いた。

ミリエルが残りのドクラゲに目をつけ時、三体のドクラゲは剣による攻撃で斬られた。

三体のドクラゲは炎上し、消滅した。

剣でドクラゲを倒したのはディックであった。

「アニキ! これで怪物は始末できたわね!」

「ああ。だがこいつらはザコだ。こいつらを地上に持ち込んだ親玉がいるはずだ。そいつを倒さない限り、この戦いは終わらない」

「それにしても、ずいぶん凶悪な怪物だわ。ものすごく危険よ」

「そうだな。こいつらみたいな危険な怪物は初めてだ。いったい、誰がどこから持ち込んできた?」

ディックは冷静に現状を分析した。

「ミリエル、俺は怪物の親玉を探す! おまえは町を頼む!」

「わかったわ、アニキ!」


夜空の上にて。

夜の外から街の様子を眺めていた一人の男がいた。

男は道化だった。

白いメイクを顔につけ、目の周りを赤く染めていた。

「おんやあ? おかしいですねえ? あれだけ凶暴な怪物たちを地上に持ち込んだというのに、ずいぶんと死ぬ人たちがすくないですねえ。モルゴールにドクラゲ、いずれにしても第一級に危険な怪物を地上に持ち込んだはずなんですが。まったく、失望しました! まったく面白くありません! 人間たちが次々と殺されていく殺人ショーを期待していたんですがねえ!」

男は夜空の中で独り言を言っていた。

「まったく、残念です! 人間たちが恐れおののき逃げ惑い次々と殺されていく光景が見たかったんです! やれやれ。とどのつまりはこの私が自ら手を下さねばならないというわけですねえ」

道化の男は右手に魔力を集めた。

それはしだいに形作かたづくられていった。

男の手には爆弾が現れた。

「まずはあの気にくわない建物からにしましょかねえ」

男は魔法爆弾を裁判所に投げつけた。

裁判所は爆破、炎上し、跡形もなく破壊された。

「次はあの建物にしましょうかねえ!」

男は病院に目を向けた。

「確か、病院には入院している病人たちがいるはずでしたねえ……」

男はニイッと笑った。

「今ここで死ぬのも、つまるところ運命というわけですかねえ! ウッヒャッヒャッヒャ! 笑いが止まりません! まったく人間の命など、ずいぶんもろいものですねえ! だってこんな簡単に消え去ってしまうんですから!」

男は再び魔法爆弾を作り出し、夜の病院に投げつけた。

すさまじい爆発が起きた。

病院は爆破、炎上し、火災が建物を襲った。

「ウッヒャハハハハ! まったく楽しい! 楽しい! 実に愉快です! なんて美しいんでしょう! さて、次は……!?」

男の首筋にレイピアが当てられた。

「何が楽しい?」

ディックは険しい表情を男に向けた。

「おんやあ? よく私の場所がわかりましたねえ?」

男は冷静に答えた。

「俺はおまえの狂気の狂行を止める!」

「狂気? 狂行? いったい何を基準にしてそれを決めるんです?」

そう言うと、男は前方に瞬間移動し、ディックと対峙した。

「まずは自己紹介といきますか。私の名はシャフカ(Schafka)!」

「俺はディック。ディック・ディッキンソンだ」

「私が持ち込んだ怪物たちはあなたが倒したのですか?」

「そうだ。よくもあんな凶悪な怪物たちを持ち込んでくれたな。ただで済むと思うな!」

「やれやれ、あなたのおかげでせっかくの殺人ショーがパーになってしまいました。私は人間たちが次々と殺されていくのを楽しみにしていたのですが、とんだ邪魔をしてくれましたねえ。それどころか、私の破壊活動すら妨害するとは許せません! あなたには消えてもらいますよ!」

「フン! それはこちらのセリフだ!」

ディックは左手で帽子をかぶりなおした。

シャフカはディックに向けて、魔法爆弾を投げつけてきた。

「死になさい!」

ディックは爆弾の規模を予測して、爆弾の爆風を回避した。

シャフカは次々と小型の魔法爆弾を放ってきた。

爆発の規模は小さいが、数は多い。

「数で攻めてきたようだな。だが、そんなものくらうか!」

ディックは爆発を器用によけ、シャフカに急接近した。

二人ともに、夜の空での空中戦だった。

シャフカに接近したディックはレイピアでシャフカを斬りつけた。

「ぐぬ!?」

シャフカはディックの攻撃をなんとかかわした。

「ちっ! かすっただけか」

「おのれ! よくもこの私に傷を! 許しませんよ!」

シャフカは小型の魔法爆弾を大量にばらまいてきた。

ディックはそれらを巧みにかわした。

ディックは上方からシャフカめがけて急降下し、シャフカに斬りつけた。

「ぐあっ!?」

ディックの斬撃がシャフカに当たった。

シャフカの体から血がこぼれた。

シャフカは後方に退き、ディックと距離を取った。

「よくもやってくれましたねえ! この私に二度も傷をつけた罪、その身で償ってもらいますよ!」

「フン、負け惜しみか?」

「この私の真の姿を見せて差し上げましょうか!」

「真の姿?」

突如、シャフカの体が輝いた。

シャフカの肉体が変化していく。

シャフカは変身した。

シャフカの肉体は紫色となり、コウモリのような翼があった。

「これが私の真の姿ですよ。この私の絶対的な力を思い知らせてあげましょう!」

シャフカの肉体は再生していた。

ディックが与えた傷は消えていた。

ディックはシャフカをいぶかしんだ。

「おまえ、もしかしてザクロの実を……」

「そうですよ。ウヒャハハハハ!」

ザクロとは冥界に生えているという木のことである。

その実を食べた者は冥界の住人になるのだ。

「それだけではありません!」

シャフカは右手で額に現れた赤い宝石を触れた。

「これはカーバンクルです。この宝石と一体化することで、この私は絶大な力を手にしたのです!」

「フン、よく言う。『元人間』だろうに」

「元人間? 違いますねえ。この私はもはや人間を超絶した存在です! ゆえに言いましょう! 我は『カミ』なり! 私は『カミ』! この世における絶対的存在! ゆえに私は破壊する! 人間を、人間の命を、そして人間が作ったものを! 破壊こそ我が存在理由! 破壊こそ我が使命! 私は破壊する! この世界のずべてを!」

こいつは危険だ、ディックはそう思った。

ディックは黒ワシのレイピアを解放した。

ディックは大天使ザドキエルの姿に変身した。

銀色の髪に、黒衣の服、そして天使の翼。

ザドキエルは大剣を手に取った。

ザドキエルの武器は黒曜石の大剣である。

「おれはおまえを殺す! この俺の剣でな!」

ザドキエルが言い放った。

黒いワシはザドキエルの象徴である。

黒いワシの紋章――それは「高貴さ」を意味する。

それはザドキエルが本質的に高貴な存在であることでもある。

「この世界のありとあらゆるものは私のおもちゃにすぎないのです! 私が私のおもちゃをどう扱うかは私によって決められること! そう、ただ壊す! ただ、破壊あるのみ!」

「そうはさせるか!」

「くらいなさい! 我が全力の魔力を!」

そう言うと、シャフカは右手を前に突き出し、ザドキエルに流星弾を放った。

ザドキエルは上下左右に器用によけ、流星弾をかわした。

「これならどうです?」

シャフカはザドキエルの全方位に流星弾を発生させた。

すべての流星弾がザドキエルに命中した。

「クックックック! この私の妨害をする者は死、あるのみ」

ザドキエルがいた位置には煙が立ち込めた。

煙は風によってしだいに消えていった。

煙が消えて、ザドキエルの姿が現れた。

ザドキエルは球状のバリアを張っていて、無事だった。

「おやあ? まだ生きていたのですか? ずいぶんしぶといですねえ」

「フン、あの程度の攻撃ではやられない」

ザドキエルはバリアを解除した。

「今度はこっちの番だ!」

ザドキエルは大剣を構えると、シャフカに急接近した。

ザドキエルはシャフカに斬りつけた。

「今度はそうくらいませんよ!」

シャフカはザドキエルの連続攻撃をかわした。

「フン、甘い!」

ザドキエルの鋭い斬撃がシャフカを襲った。

ザドキエルの一撃はシャフカの額のカーバンクルを打ち砕いた。

「俺の狙いは最初からそれだ」

「ぐあああああああああああ!? これは!? 力が!? 私の力が消えていく!?」

「これで最後だ! 偽のカミ様!」

ザドキエルはシャフカの体を大剣で貫いた。

「ぐはっ!? そんなバカな!? この私が!? 『カミ』が死ぬなどど……!?」

シャフカの体は灰となり消えていった。

夜空にはただ一人ザドキエルが残された。

ザドキエルの背後には美しい三日月が光っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ